【完結】婚約破棄された彼女は領地を離れて王都で生きていこうとしていたが、止める事にしました。

まりぃべる

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〈1. 婚約者からの身に覚えのない仕打ち、酷くないですか〉

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「エステルよ、済まないが君とは結婚出来ない。もうすぐこの我が子爵家へ輿入れの予定ではあったが、婚約破棄させてもらう!まさか、あんなことをする女だったとはな!」


 エステル=シストネンは、婚約者であるトゥーレ=パルポラにそう言葉を浴びせられ驚いた。


 今日は、パルポラ子爵家の屋敷で婚約者同士の月に一度の親睦会と称したお茶会の日であった。その為、エステルはパルポラ子爵家へ訪れたのだ。
 応接室に通されたエステルは、ソファに座ってくつろいでいるとノックもせずにガチャリと扉を開けて入ってきたトゥーレに、目が合うとすぐに言われたのだ。…腕には、見知らぬ女性を携えて。


「え?えと…。」


 エステルは、考える。


 エステルの家シストネン伯爵家と、トゥーレの家パルポラ子爵家との結婚は政略結婚だ。

 この、クリシャンスターメ国では、親同士が勝手に決める政略結婚が主流だ。なので、年頃になり昨年の十七の誕生日の夜にエステルは自分の父親から言われたのだ。

「パルポラ子爵家の息子、トゥーレの元へ嫁ぐのだ。」

 と。

 シストネン伯爵家はエステルの下に十六歳のアルヴィがいるから、その弟が伯爵家を継ぐ。
 この国の貴族は男が爵位を継ぐのがほとんどであるから、女が生まれると基本的な教養を教え込み、少しでも家の為になる嫁ぎ先が見つかるようにと育てるのだ。
 エステルも例に漏れず、基本的ではあるが様々な事を教え込まれ、なんのうま味も無い格下の子爵家に嫁ぐには勿体ないとも周りからは囁かれていた。


 シストネン伯爵家であれば、このクリシャンスターメ国の数ある伯爵家や侯爵家、公爵家、また王家にまで嫁げる地位ではある。
だが、現シストネン伯爵は、クリシャンスターメ国の南西にあるここカブリンルンドの領地からあまり出る事を好まず、同じ街に住むパルポラ子爵に声を掛けられ手っ取り早いと二つ返事で了承したのだ。


(婚約解消ではなく、破棄…。しかも、あんなことをする女、とは…?)


「しらばっくれても、調べは付いているぞ!この子爵家の財産をくすねただろう!」

「!?」

(何を言っているの…?うちはそんなに落ちぶれてはいないわよ。お父様は真面目過ぎるほど堅実なのだから。)

「だから、婚約破棄なのだ!そして、子爵家には彼女に嫁いでもらう!」

 トゥーレの両隣にいる女性は二人共にエステルを見つめニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
 彼の右腕には、赤い髪を胸元まで下ろしクルクルと巻いて、目はぱっちりとしている女性を。
 左腕には、青みがかった黒色の髪を顔の辺りで短く切り揃えた、目が切れ長の女性を携えて。


「男爵家の出と、商家の出ではあるが、二人共見目も性根も美しいだろう!頭も良いし、パルポラ子爵家の更なる発展にはもってこいの二人さ!本妻と妾にするのだ!」


(今初めて見たから知らないわよ!見た目はまぁお二人とも可愛いかもしれないけれど、性根が美しかったらこんな場所に腕を組んで来ないでしょうよ!しかも、二人って…トゥーレ様はずば抜けて素晴らしいお顔の造形では無かったはずだけれど、そんなにおモテになっていたの?それとも私の感性がおかしいのかしら?)


 エステルは心の中でそう毒づきながら、その女性達を見ると、トゥーレの腕をお互いに引っ張っていた。
そしてトゥーレが視線を左右に向けると途端に女性達は笑顔になり、それを見たトゥーレもデレデレと鼻を伸ばし始め、いきなり三人でイチャイチャとしだした。


(見てられないわ…。こんな人と添い遂げるなんて無理ね。婚約破棄はいただけないけれど、結婚しなくて良かったわ!でも一言言わせてもらうわよ。)


 エステルは、深く息を吸うとトゥーレに向かって言葉を放った。

「トゥーレ様?私がそんな事するわけありませんわ。そのように身に覚えのない事を仰るのでしたら私、抗議をさせて頂きますわよ?」

「あぁ、まだいたのか。エステル。抗議をしたいのはこちら側だからな、良く覚えてからその発言をするんだな!さっさと出て行けよ!」

 トゥーレは、自分の腕にくっついている女性らと三人の世界を作っていた為、エステルの言葉にそちらを嫌そうに向くと、さっさと出ていけと言わんばかりにそう言葉を投げつける。

 エステルは怒りを抑えて立ち上がり、父親に相談しようと子爵家の屋敷を出て、待たせていた馬車で伯爵家の屋敷へと戻った。

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