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〈2. 父親からの言葉も思いやりが無いなんて悲しい〉
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「馬鹿野郎!!!」
その言葉に、エステルは何故自分が罵声を浴びせられないといけないのか分からず困惑する。労いと慰めの言葉を掛けられるかと思っていたのに、父の普段と声や態度とは全く違う、威厳ある伯爵家の当主らしい冷たいその声に身を強張らせた。
エステルは、屋敷に帰ると早速父親のいる執務室へと向かい、出来事を報告したのだ。
伯爵の仕事である、ここカブソンルンドの特産品である、リボン状の織物を仕分けしていた彼は、エステルの突然の訪問に驚きつつも耳を傾け聞いていると徐々に拳を振るわせ、話し終わると机を叩いて立ち上がりながらそう言ったのだった。
「なんだそれは!?あぁ、終わりだ!全く!どうしてそんな事に…」
力無く倒れ込むようにまた椅子に座った父親に、エステルはここぞとばかりに反論する。
「お父様!まさかとは思いますが誤解なさっているのですか!?私は、子爵家のお金など横領なんてするはずありませんわ!」
「分かっておる!あぁ…事実なんてこの際どうでもいいのだ。そのような噂が出回るなんて、うちの信用が無くなるではないか…。」
「それは…!でも、トゥーレ様が勝手に言われたのです!」
「あぁ、そうだろうとも!きっとその女達への貢ぐ金欲しさに、大方トゥーレが盗んだのだろうよ!でもな、エステル…貴族社会とは、そんな真実はどうだっていいのだよ。ただ、レッテルが張られてしまったならその後、どうなるか分かるか?」
「…。」
「エステルの弟であるアルヴィの結婚に支障が出て、この伯爵家が次代に繋げなくなっては困るのだよ。分かるね?」
「……。」
「エステル。周りへの示しとして、エステルは…エステルは……うちを出て行きなさい。」
「はぁ!?」
エステルはますます眉間にしわを寄せ、淑女にあるまじき声を上げる。
「私だって辛いのだよ。だけどね、分かるだろう?」
「分からないわ!全く分からないですわよ?私、被害者のはずです!何も、悪い事はしておりません!清廉潔白ですわよ!」
「だから、分かっておくれよエステル。ほら、修道院へ行って奉公するよりは、噂が出回るよりも早く市井へ下りて生活する方が刺激があっていいだろう?パルポラ子爵家へ抗議はする。だがね、婚約者の手綱を掴んで操作出来なかったエステルにも少しは非がある、となってしまうんだよ。」
「どうして…。だって……。」
婚約者の手綱を掴んで操作、と言われ、エステルは自分のせいじゃない!と叫びたかったが、確かに非が全くないのかと言われれば、そうではないと言えてしまうと思った。
(婚約者に決まったからと、形ばかりの交流というお茶会に、それこそ当たり障りのない話ばかりをしていたわ。心を砕いて、腹を割って話していたかと問われたら、していなかったわね…。それがつまり、私の非…。)
「…分かりました。」
「おお、分かってくれるか?そうだな…悪いが、暫くはこちらへ帰って来られないだろうがエステルなら大丈夫だろう。」
(帰ってくると体裁が悪いという事ね…。全く。貴族ってば面倒だわ。それに、私なら大丈夫ってどの口が言うのよ?私、そんなに強くはないのに…。でも、私を理解してくれないお父様の元にいるよりも、一人になった方が気楽なのかもしれないわね…。)
「……。」
エステルは、その父親の言葉に腹立たしさを滲ませ言葉を発する事もなく睨みつける。が、父親はそれには見ない振りをし、言葉を続ける。
「あぁ、エステル。荷物は最小限で行きなさい。支度金は今回このような事となった為に大量に渡す事は出来ないが、僅かばかりの金でどうにかしてくれ。なに、エステルならどうにか増やす事も出来るだろう。さぁ、行きなさい。」
「い、今からですか?」
「そうだよ。こういうのは、早い方がいい。」
(そんな…!でも仕方ないわ。これ以上ここにいても、分かってもらえないのは辛いものね。)
エステルはそう思い、やっぱり口を開くと何を言ってしまうか自分でも分からない為、唇を噛みつつも敢えて深々とお辞儀をしてから部屋を辞した。
その言葉に、エステルは何故自分が罵声を浴びせられないといけないのか分からず困惑する。労いと慰めの言葉を掛けられるかと思っていたのに、父の普段と声や態度とは全く違う、威厳ある伯爵家の当主らしい冷たいその声に身を強張らせた。
エステルは、屋敷に帰ると早速父親のいる執務室へと向かい、出来事を報告したのだ。
伯爵の仕事である、ここカブソンルンドの特産品である、リボン状の織物を仕分けしていた彼は、エステルの突然の訪問に驚きつつも耳を傾け聞いていると徐々に拳を振るわせ、話し終わると机を叩いて立ち上がりながらそう言ったのだった。
「なんだそれは!?あぁ、終わりだ!全く!どうしてそんな事に…」
力無く倒れ込むようにまた椅子に座った父親に、エステルはここぞとばかりに反論する。
「お父様!まさかとは思いますが誤解なさっているのですか!?私は、子爵家のお金など横領なんてするはずありませんわ!」
「分かっておる!あぁ…事実なんてこの際どうでもいいのだ。そのような噂が出回るなんて、うちの信用が無くなるではないか…。」
「それは…!でも、トゥーレ様が勝手に言われたのです!」
「あぁ、そうだろうとも!きっとその女達への貢ぐ金欲しさに、大方トゥーレが盗んだのだろうよ!でもな、エステル…貴族社会とは、そんな真実はどうだっていいのだよ。ただ、レッテルが張られてしまったならその後、どうなるか分かるか?」
「…。」
「エステルの弟であるアルヴィの結婚に支障が出て、この伯爵家が次代に繋げなくなっては困るのだよ。分かるね?」
「……。」
「エステル。周りへの示しとして、エステルは…エステルは……うちを出て行きなさい。」
「はぁ!?」
エステルはますます眉間にしわを寄せ、淑女にあるまじき声を上げる。
「私だって辛いのだよ。だけどね、分かるだろう?」
「分からないわ!全く分からないですわよ?私、被害者のはずです!何も、悪い事はしておりません!清廉潔白ですわよ!」
「だから、分かっておくれよエステル。ほら、修道院へ行って奉公するよりは、噂が出回るよりも早く市井へ下りて生活する方が刺激があっていいだろう?パルポラ子爵家へ抗議はする。だがね、婚約者の手綱を掴んで操作出来なかったエステルにも少しは非がある、となってしまうんだよ。」
「どうして…。だって……。」
婚約者の手綱を掴んで操作、と言われ、エステルは自分のせいじゃない!と叫びたかったが、確かに非が全くないのかと言われれば、そうではないと言えてしまうと思った。
(婚約者に決まったからと、形ばかりの交流というお茶会に、それこそ当たり障りのない話ばかりをしていたわ。心を砕いて、腹を割って話していたかと問われたら、していなかったわね…。それがつまり、私の非…。)
「…分かりました。」
「おお、分かってくれるか?そうだな…悪いが、暫くはこちらへ帰って来られないだろうがエステルなら大丈夫だろう。」
(帰ってくると体裁が悪いという事ね…。全く。貴族ってば面倒だわ。それに、私なら大丈夫ってどの口が言うのよ?私、そんなに強くはないのに…。でも、私を理解してくれないお父様の元にいるよりも、一人になった方が気楽なのかもしれないわね…。)
「……。」
エステルは、その父親の言葉に腹立たしさを滲ませ言葉を発する事もなく睨みつける。が、父親はそれには見ない振りをし、言葉を続ける。
「あぁ、エステル。荷物は最小限で行きなさい。支度金は今回このような事となった為に大量に渡す事は出来ないが、僅かばかりの金でどうにかしてくれ。なに、エステルならどうにか増やす事も出来るだろう。さぁ、行きなさい。」
「い、今からですか?」
「そうだよ。こういうのは、早い方がいい。」
(そんな…!でも仕方ないわ。これ以上ここにいても、分かってもらえないのは辛いものね。)
エステルはそう思い、やっぱり口を開くと何を言ってしまうか自分でも分からない為、唇を噛みつつも敢えて深々とお辞儀をしてから部屋を辞した。
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