【完結】婚約破棄された彼女は領地を離れて王都で生きていこうとしていたが、止める事にしました。

まりぃべる

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〈3. 挨拶もそこそこに、旅立たせていただきます〉

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 エステルは部屋へ戻ると、いつもの侍女サッラがいて、お茶を準備してくれていた。
サッラは、エステルが幼い頃よりついていてエステルより十五歳ほど年が上だ。
エステルが三歳の頃に母が亡くなっているので、それこそ母のようでもあり姉のようでもある存在だと思っていた。


「お早いお戻りですね。まずはどうぞ、こちらを。」

 今日出て行きなさいと言われたが、お茶を飲む位いいだろうと思いソファへと座り、少しだけ喉を潤した。


(そういえば、パルポラ子爵家でお茶をするはずだったのに一口も飲んでないし、帰ってきてすぐにお父様の部屋へ行ったもの。喉が渇いたのよね。)


「ねぇ、私、出て行きなさいと言われたの。」

 エステルは、煎れてもらった紅茶を飲みながらそう言うと、

「はい?どちらへお出かけですか。」

 と何の気なしにサッラに言われる。

「そうじゃなくて、屋敷から、ね。」

「いえ、ですから…え?屋敷からですか!?」

 怪訝そうにサッラは言った後、まさかと言うように少し驚いて言う。

「そう。だから、とりあえず動き易い服に着替えたいの。着替えも二着位欲しいわ。落ち着いたものをお願い。あまり持ち出してはが付かないと言われたけれど、それくらいはいいわよね。あとは…」

「え、エステル様!もう少し分かりやすくおっしゃっていただけますか?パルポラ子爵家から、早く帰って来られたのとご関係が?」

「ええ。私、トゥーレ様から婚約破棄されたの。それに、いわれもない汚名も着せられたのよ?お父様にご報告したら、真実はどうであれ世間的に婚約破棄された私がこの家にいるとアルヴィの結婚に響くといけないのですって。だから…そうね、ここを離れ王都にでも行くわ。」

「まぁ!そんな…!それはエステル様が悪いわけでは…。」

「本当にね。私、被害者だと思うのだけれど。でも、そんな面倒な所が貴族社会だものね。そういうわけで、サッラともお別れなの。淋しいけれど、元気でやってね。」

「エステル様…!」

 エステルは、サッラと離れるのがひどく寂しかったけれど努めて明るく、そのように言った。
 しかし、そのように自分に気遣った事を察してサッラは感極まり、幼い頃エステルがよく泣いていた頃にしたように、エステルの傍まで近づいて手を広げ、優しく包み込んだ。

「大きくなりましたね……。エステル様。私がついて行く事はかないませんか?」

「サッラ…ありがとう。私の為にいつも…。でも私についてきてはダメよ。サッラはサッラの事を、しっかりやってね。」

「あぁ…!エステル様は気丈になりましたがこんなに涙脆く、心が繊細であられますのに…!……いつか、エステル様にもその本当のお姿を理解して下さる方が現れますように祈っております。」

 サッラは、エステルが母親を亡くして、夜一人淋しくて枕を濡らしたり、不意に思い出が甦り涙する事を今までうんと見てきたのだ。
その度に胸が痛み、サッラが優しく手を握ったり、抱き締めて背中をさすり慰めていた。
 その為、エステルへの理不尽な現実に本当の母親のように胸を痛めている。

「ありがとう、サッラ。そう言ってくれるのはサッラだけよ…。さ、お願い。準備してくれる?お父様に急かされる前に。」

「…承知致しました。」

 エステルは抱き締めてくれたサッラに、温かいぬくもりを久々に感じて嬉しかったので本音を言えばいつまでも抱き締めていて欲しかった。
しかし、現実を見ればそれもかなわないだろうと、敢えてサッラから手を離してもらうように言った。


(弟のアルヴィにも挨拶がしたかったけれど、今は勉学の時間よね…。元気でね、アルヴィ。遠くからだけど心から応援しているわ。)

 エステルは、頭の中でそう思い、荷物の準備をし始めた。
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