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〈19. レーヴィが私に話があるのだそうです〉
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(え!?レーヴィ様?仰せのままに!?)
エステルは、ラッセが言ったその言葉に目を見張った。
「ちょっと、ラッセ!エステルが驚いてるよ。少し、エステルへ説明してから行くから。ヘルミと、あと他の奴らも来れる奴は連れてきて。」
「承知致しました。では、果実ジュースでも飲まれますか。」
「ありがとう。よろしく。」
レーヴィに対して今までとは明らかに違う態度のラッセに、エステルは戸惑いを覚える。
ラッセはレーヴィに、胸に手を充てて頭を深々と下げて準備をし出す。その挨拶は、この国では忠誠を誓う儀礼だ。
(え!?どういう事…?)
「エステルさん、ごめんね。ちょっと狭いけど。ここに座って。少し、話していい?」
「う、うん…。」
エステルは反射的にそう返事をしたが、すぐに思い直す。
(あ、私も、偉い人に対する言葉遣いにした方が良かったの!?)
「ふー…。ちょっと緊張する。」
と、顔を少し引き攣らせながらレーヴィは笑い、すぐに顔を両手で挟むようにペチンと叩き気合いを入れた。
そこへ、ラッセが果実ジュースと空のグラスを二つ差し出す。
「ラッセ、ありがとう。あとは僕がやる。ごめんだけど、行ってきて。」
「は。ではすぐに。」
そう言ったラッセは、エステルにも視線を向けて頭を下げ、すぐに建物の外へと出て行った。
「時間が無いから、手短に話すね。まず、なぜ王都の街を散策したか。それはね、今見てきた所はほんの一部なんだけど、前の国王の時代では、貴族のタウンハウスや、商家、町民が暮らす場所だったんだ。エステルさんが住んでいるアパートメントも、貴族のタウンハウスだったんだよ。だけどそれが改装されて使われているんだ。」
「え!」
エステルはそれを聞き、驚いた。言葉遣いを改めようかとも考えていたのに、驚いた事で、今までと同じような反応をしてしまっている。
前の国王と言っても、半年前という事であるはずだ。なぜそれが、出稼ぎに来た人の無料で住めるアパートメントになったのか。そう考えて、一つ思い当たり口に出す。
「今の国王に反発した人達の…?」
「そう!よく思い付いたね。ヘルミに聞いた?」
(!そうだわ。レーヴィは、ヘルミの事を知っている…?)
「レーヴィ。ヘルミって…」
「あぁ。ヘルミとは知り合いなんだ。というか、いとこなんだ。口うるさいけどね。エステルさんが心配で、僕の知り合いがいるアパートメントがいいと思ってね。」
「そうだったの…。」
エステルは、心配で、と言われ少し心が温かくなった。父親にも心配なんてされなかった。お前ならやっていける、そう言われたのだ。しかし、レーヴィはエステルの事を心配してくれた。その事がなんだか嬉しくなった。
(心配してくれたのは、サッラだけよ。実の父親にも心配なんてされなかったもの。でも…嬉しいかも……!)
「エステルさん、大丈夫?顔が赤い気がするけど。」
「!そ、そんな事ないわ!」
「そう?歩き疲れさせてない?じゃあ、続きを話すね。でね、エステルさんは今、とある事情で王都へ出てきて、仕事に就こうとしてた。けど、今の仕事に悩んでるんだよね?」
「ええ…。」
「だったらさ、僕と一緒に来ない?まだ、先の事は全く分からなくて、苦労をさせるかもしれないんだ。でも、」
「ち、ちょっと待って!」
「ん?」
エステルは、更に顔を赤らめ、それを隠すように両手で覆った。
(止めて…なんだか、まるで求婚されているみたいよ!でも…レーヴィは違う意味で言っているのよね?きっと、カブソンルンドの近くの村で言ったみたいに、『王都まで一緒に行こう!』みたいな感じなのよね?きっと。)
そう思ってエステルは、呼吸を整え、両手を外して再度顔を上げる。
「ごめんなさい。…どこへ?」
「うん。ここは、僕らには住みにくいんだ。だから、国境近くであり辺境の地でもあるんだけど、北のベーネルスタードに。」
「ベーネルスタード?」
そこは、以前は栄えていた、今は何もない荒れ果てた土地が広がる地区であった。
エステルは、ラッセが言ったその言葉に目を見張った。
「ちょっと、ラッセ!エステルが驚いてるよ。少し、エステルへ説明してから行くから。ヘルミと、あと他の奴らも来れる奴は連れてきて。」
「承知致しました。では、果実ジュースでも飲まれますか。」
「ありがとう。よろしく。」
レーヴィに対して今までとは明らかに違う態度のラッセに、エステルは戸惑いを覚える。
ラッセはレーヴィに、胸に手を充てて頭を深々と下げて準備をし出す。その挨拶は、この国では忠誠を誓う儀礼だ。
(え!?どういう事…?)
「エステルさん、ごめんね。ちょっと狭いけど。ここに座って。少し、話していい?」
「う、うん…。」
エステルは反射的にそう返事をしたが、すぐに思い直す。
(あ、私も、偉い人に対する言葉遣いにした方が良かったの!?)
「ふー…。ちょっと緊張する。」
と、顔を少し引き攣らせながらレーヴィは笑い、すぐに顔を両手で挟むようにペチンと叩き気合いを入れた。
そこへ、ラッセが果実ジュースと空のグラスを二つ差し出す。
「ラッセ、ありがとう。あとは僕がやる。ごめんだけど、行ってきて。」
「は。ではすぐに。」
そう言ったラッセは、エステルにも視線を向けて頭を下げ、すぐに建物の外へと出て行った。
「時間が無いから、手短に話すね。まず、なぜ王都の街を散策したか。それはね、今見てきた所はほんの一部なんだけど、前の国王の時代では、貴族のタウンハウスや、商家、町民が暮らす場所だったんだ。エステルさんが住んでいるアパートメントも、貴族のタウンハウスだったんだよ。だけどそれが改装されて使われているんだ。」
「え!」
エステルはそれを聞き、驚いた。言葉遣いを改めようかとも考えていたのに、驚いた事で、今までと同じような反応をしてしまっている。
前の国王と言っても、半年前という事であるはずだ。なぜそれが、出稼ぎに来た人の無料で住めるアパートメントになったのか。そう考えて、一つ思い当たり口に出す。
「今の国王に反発した人達の…?」
「そう!よく思い付いたね。ヘルミに聞いた?」
(!そうだわ。レーヴィは、ヘルミの事を知っている…?)
「レーヴィ。ヘルミって…」
「あぁ。ヘルミとは知り合いなんだ。というか、いとこなんだ。口うるさいけどね。エステルさんが心配で、僕の知り合いがいるアパートメントがいいと思ってね。」
「そうだったの…。」
エステルは、心配で、と言われ少し心が温かくなった。父親にも心配なんてされなかった。お前ならやっていける、そう言われたのだ。しかし、レーヴィはエステルの事を心配してくれた。その事がなんだか嬉しくなった。
(心配してくれたのは、サッラだけよ。実の父親にも心配なんてされなかったもの。でも…嬉しいかも……!)
「エステルさん、大丈夫?顔が赤い気がするけど。」
「!そ、そんな事ないわ!」
「そう?歩き疲れさせてない?じゃあ、続きを話すね。でね、エステルさんは今、とある事情で王都へ出てきて、仕事に就こうとしてた。けど、今の仕事に悩んでるんだよね?」
「ええ…。」
「だったらさ、僕と一緒に来ない?まだ、先の事は全く分からなくて、苦労をさせるかもしれないんだ。でも、」
「ち、ちょっと待って!」
「ん?」
エステルは、更に顔を赤らめ、それを隠すように両手で覆った。
(止めて…なんだか、まるで求婚されているみたいよ!でも…レーヴィは違う意味で言っているのよね?きっと、カブソンルンドの近くの村で言ったみたいに、『王都まで一緒に行こう!』みたいな感じなのよね?きっと。)
そう思ってエステルは、呼吸を整え、両手を外して再度顔を上げる。
「ごめんなさい。…どこへ?」
「うん。ここは、僕らには住みにくいんだ。だから、国境近くであり辺境の地でもあるんだけど、北のベーネルスタードに。」
「ベーネルスタード?」
そこは、以前は栄えていた、今は何もない荒れ果てた土地が広がる地区であった。
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