【完結】婚約破棄された彼女は領地を離れて王都で生きていこうとしていたが、止める事にしました。

まりぃべる

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〈23. 代替わりした故郷と、これからの住処〉

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「え?お父様が!?」

「そう。それに、トゥーレの子爵家がとり潰しになったって…」



 ベーネルスタード地区へ来て、一ヶ月。
 少しずつ建物も出来上がり、街の形を造り始めたこの街で、エステルとレーヴィは一緒に暮らしていた。まだまだ掘っ立て小屋で、本格的に住むものは頑丈なものにしようと、周りが設計から時間を掛けて建築している。

 ラッセを筆頭に元騎士団の面々、解雇された元重鎮の方々やその家族などもこちらへと移り住んできた。もちろん、王都の外れの孤児院の子供達もだ。
 あの時エステルに高値を吹っかけた御者も、流しの乗り合い馬車の御者だったので、ラッセが諭し今はこちらへと移り住み、真面目に生活している。

 皆住む場所が無いのでテントを張ったりしている。
 この地を、長い目で見てゆくゆくは国として残せるようにしたいと、じっくり時間を掛けて丁寧に作っているのだ。


 そんな掘っ立て小屋でエステルは、レーヴィと朝ご飯を食べようとしてその話を聞いたのだった。


「そう…。」

「エステル、大丈夫?その…会いに行く?」

「お父様に?いいえ、会いたくもないわ。」


 エステルは、重税を課せられた地方貴族達が次々と土地を離れ、隣国へ亡命しているとレーヴィから聞いた。
そして、例に漏れずエステルの父親も重税に耐えきれなくなり、息子のアルヴィへ譲ったのだとか。アルヴィが継いでどうにかなるのかとも不安に思ったが、レーヴィはアルヴィの素晴らしい戦略をエステルに伝えた。
 新婦が新郎の家族へリボン状の織り物を贈ると、一族皆幸せになれるというジンクスや、新郎が新婦へリボン状の織り物を贈ると、二人の仲は永遠に結ばれるというジンクスまで作り出し、まだ結婚をしない若者や、結婚して何年も経った熟年夫婦にまで流行らせている。その為、売り上げは爆上がりだそうで、若い領主だからこその政策だとレーヴィは笑っていた。

「すごいね!エステルの弟は。僕も負けないようにしないと!」

 と、意欲を燃やしていた。


 トゥーレの実家子爵家はというと、資金繰りがただでさえよくなかった上に、トゥーレの横領に加えて国からの重税に耐えきれなくなり、とうとう子爵家の名前を国へ返上したのだ。
そうなるとパルポラ子爵家の者達は当然、一般庶民と同等か、それ以下の生活水準となる。だが子爵家とはいっても貴族であったから、庶民の生活が出来るのかとレーヴィは嘲笑っていた。

「エステルを蔑ろにした罰だよ!って、エステルがそのまま、パルポラ家へ嫁いでいたらエステルとも会えなかったし、まぁこれで良かったんだろうね。」

 トゥーレにくっついていた二人はどうなったのだろうか、とエステルはふと思う。だが、もしかしたら貴族でなくなったトゥーレを見限り、離れていったのかもしれないなと思った。

「エステルのお父さん、エステルに悪い事したなぁって、嘆いていたよ。それに、アルヴィもいきなり姉が居なくなったって、淋しがっていたようだよ。」

「そう…。でもしばらくは許せそうにないもの。ま、お父様ので、レーヴィに会えたんだから、そのうちに許せるようになるかもしれないけれどね。」

「そっか。そうだね。会ったら、どうって事ないかもしれないよ。小さくなったな、とか思うかもしれない。何にせよ、エステルがもういいか、って思えるようになったら会いなよ。ほら、僕はもう父には会いたくても会えないから。」

「レーヴィ…」

「あぁ、ごめん。別に暗い話じゃないんだ。それに、母にはいつでも会える、わけじゃないけど、いつかそのうちふらっとこの街に来る、気がする。」

「えと、あ…レーヴィのお母様は…?」

 エステルは、そういえば何も誰も触れていなかったが、国王が半年前に亡くなったのは知れ渡っていたが、王妃の事は何も聞いていない。レーヴィと同じように王宮以外のところで生き延びて居るのだろうか。

「ピンピンしているよ。父が亡くなった時に、母も狂いそうになる心を抑えて、でも僕に言ったんだ。『あの人が私を置いて亡くなるなんて信じられない!でも、となってしまう。だったら、人生楽しむしかない!』と、僅かなお供を連れてフラリとどこかへ行ってしまったんだ。きっと今ごろ、この国の話題が聞こえないほど遠い国で生活しているかもしれない。おじさまが国王なんて許せないって言ってたし。』

 クリシャンスターメ国の話題が聞こえない所に行けば、ガブリエルが生きていると錯覚出来る。亡くなって会えないのではなく、遠い国に来たのだから会えない、と思い込みたいのだろうと。

「でも、僕が生きて小さくても父のような国を存続していれば、いつか母が戻って来てくれる気がする。その時は、僕達の子供を見せつけようよ!」

 そうレーヴィに言われると、途端にエステルの顔が真っ赤になった。

「あれ?エステルったら顔赤いよ?今日はどうする?ゆっくり休む?うーん、そうしよう!一緒に、ここでゆっくりしてようか!」

「もう!レーヴィったら!」



 今日もエステルとレーヴィは他愛のない話をしながら新しい場所で、仲良く過ごしている。


 エステルは、家を追い出され、王都というか職場でも馴染めなかったけれど、心許せる人が出来、新たな場所で新しい生活を送っていくーーー。



☆★

これで終わりです。

最後までお読み下さいましてありがとうございました!
栞を挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、感想をくださった方、本当にありがとうございました!
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みんなの感想(2件)

dragon.9
2022.08.08 dragon.9
ネタバレ含む
2022.08.10 まりぃべる

dragon.9様、今回もありがとうございます!

感想ありがとうございます!
はい、典型的な箱入り娘ですね(^^;)世間の相場を知らないので…ヤバかったです(^_^;)

続きも読んで下さって、良かったです〜ありがとうございますo(*´︶`*)o

解除
dragon.9
2022.08.07 dragon.9
ネタバレ含む
2022.08.07 まりぃべる

dragon.9様、今回も感想ありがとうございます!

うーん、そうですね(^_^;)現実世界の常識でいえばそうですね…。
大きく見て、まりぃべるの緩い世界観だと思っていただけたら幸いです(^^;)<m(__)m>


解説&補足としましては、子爵家のトゥーレは一応、『金を横領された』と言っておりますので(事実はどうあれ)、有責事案という事となっている上に、エステルの父は、子爵家からの『お互いの子供達を結婚させようという誘い』に乗ってしまったわけですので、まぁ…昔からのご近所(同じ領地内の貴族)という事でそれなりの仲なので、子爵家からの婚約破棄云々も言い出す事はあるわけでしたm(_ _)m
確かに、エステルの父は領主なのだから抑え付けたり、子爵家へ強く出ればいいのに!と思うのですが、それよりも風評被害(あらぬ噂)によって今までの顧客が取り引きしてくれなくなる事を恐れたのです(´д`)

すみません、そこの所もっと掘り下げて表現すればよかったのですけれど、違和感を持たせてしまって申し訳なかったです。゚・(>﹏<)・゚。

それでも、読んで下さいましてありがとうございます!!

まだまだ勉強不足の身なのでこれからも違和感があるかもしれませんが、まりぃべるの世界観として、現実世界とは多少異なると思って暇つぶしにでも読んでいただけると幸いです。

ご指摘ありがとうございました。

解除

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