【完結】私の地元の猫って…。

まりぃべる

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4. 実家

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「さ、降りて。」



 母の車に乗った私は、実家まで帰ってくるとそう言われた。

 助手席から降りると、道路のわきに、黒い猫が座っていた。

「あ、猫ちゃん。」

 そう声をかけると、私の方をジッと見、ほどなくして道路の隅を歩き出した。

 その後ろ姿を見て、

(そういえば、昔から家の周りにも猫、いたよね…。あの今の猫ちゃんみたいな体がでっぷりとした黒猫…。)

と思っていると、

「ほら楓、早く!」

と、母に呼ばれた。





 昨日電話で話した時より、少し声のトーンが上がっている気がする。
夕食も作っていてくれたみたいで、食べながら話しを聞くと、父さんはどうやら倒れたけれど、すぐに救急車を呼び、処置をしてもらい今は集中治療室で入院中なのだとか。


「その病気だと、たいてい前兆があるのですが、なかったですかと言われたけれど、特に目立った前兆もなくてね。いきなり朝、意識を無くしてベッドの下に倒れていたから、私の呼吸が止まるほど驚いたわ。」

 と言っていた。


「でもね、病院の先生や看護師さん達がよくして下さってね。容態は昨日の夕方にやっと落ち着いたのよ。もう、本当に良かったわー。」

 と、涙を目に浮かべながら話してくれた。

「今日はまだ、私が面会に行った時は寝てて、父さんに声かけれなかったんだけどね。明日行ったら、起きているといいわね。」


 母さんはそう言って、お風呂を沸かしに行ってくれた。



(良かった…本当に。)




 その日は、母さんも疲れたからと早めにお風呂に入り寝る事にした。


「今日は楓が居てよかったわ。昨日はとても、この家が広く、とても静かに感じたのよ。」

 母さんはそんな寂しい事を言いながら、

「じゃあね、おやすみ。」

 と言って、両親がいつも使う部屋へ行った。


 私も寝ようと、二階の自分の部屋だったところへ向かった。
襖をがらりと開けると、私が出て行く前の昔のままの部屋だった。


 勉強机が、正面の窓より左にあり、右にはローベット。押し入れは左側にある。
壁と、天井には中学生や高校生の頃好きだったアイドルのポスター。

 時間が巻き戻ったかのようだった。



(わぁ…懐かしい。)


 ここの窓からは主要道路が見える。その奥には川も流れていた。窓際へ行くと、先ほど家の外にいた猫がこちらを覗いていた。


(猫ちゃん!どうしたの?)


 そう思って窓を開けると、その音に驚いたのだろう、走って行ってしまった。


(あー、驚かせてごめんね。)


 そう呟いて、私も、ベッドに入った。
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