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10. 初めての任務 ピオトル視点

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 オレはピオトル=フォルヒデン。いや、貴族はいろいろと礼儀作法やなんかがあって面倒だし、やっと貴族って事を意識しなくて済むな。ナタリアにはああ言ったが、相手との壁を作る感じがして礼儀作法とかって嫌なんだよなー。
だから、今は、〝イノリコのピオトル〟だぜ!

 イノリコって言えば、この国じゃぁ誰もが羨む、チヤホヤしてくれる存在なんだ。だから、選ばれて本当に良かった!
四歳の時は、上手い具合に力を発揮する事が出来なかったが、今年の儀式ではどうにか上手く祈りが通じたぜ。

 オレの力は、絶大だがなかなか気分屋で、オレが祈ってもすぐに発揮してくれない時がままあるんだ。その辺りが少し面倒だが、でもフォルヒデンの領地で獲れる小麦やじゃがいもが、オレが三歳になった位から豊作らしいからやっぱりオレの力は素晴らしいんだ!




 王立神殿で、オレがイノリコって認定されて、本当はもっと父上と兄上のオレへの対応が変わると思ったんだけどなぁ。
父上も、驚いていたのかあまり喜んだようには見えなかった。いや!きっと、驚き過ぎて言葉が出てこなかったんだな!きっと!
兄上も、今までのオレへの態度を改めてもっと敬ってくれると思ったんだけど、兄上は変わらず口煩く言ってきたなぁ。ちゃんと、解っているのか?んー、あれか?オレが屋敷から居なくなってからようやく実感するってやつ?だったら、次に会った時はきっと目に見えて敬ってくれるだろうな!きっと!
ナタリアは変わらずオレを敬ってくれたな。ホント可愛い妹だぜ。もっともっと、兄ちゃんを敬えばいいんだぞ!






 イノリバでは、結構大変だけどやりがいもあるぜ!衣食住は全てにおいて完璧で一級品!今までとは違って侍従がいないから自分でやらないといけないのがまぁ面倒だけど、新鮮だな。
イノリの勉強の時間があるからこれも少し…いやかなり面倒なんだけどな。勉強なんてしなくても、ちょちょいと祈るだけでいいじゃないか。

 まぁでも、先輩イノリコと混じって仕事をするのは楽しいな。なんてったって自分の力を認められてるって肌で感じられるんだからな。



 そんなオレの、初めての任務!


 このザルーツ国のアリツィア王女を護衛して、国境近くまで行って帰ってくる事だとさ。護衛って言っても、王立騎士団も一緒らしいから、無事を祈りながら往復するだけの簡単な任務らしい。

 もっと大きめのやつを任せてくれてよかったんだぜ!…まぁ、オレの力は気まぐれで、たまにしか発揮しないんだけどな。


 オレ達イノリコは、選抜五人で、馬車に乗って行く。
アリツィア王女の後ろの馬車に五人全員乗る。かなり狭いと思うんだが、王立騎士団は歩いている人も結構いるから文句は言えないんだと。オレ達にも一人ずつ馬車を出してくれたら寛げるのになー。


 馬車に乗る前に、アリツィア王女を改めて見た。神殿にもいたけれど、あの時は遠かったもんな。
王族だけあって結構カワイイな。金髪の髪をくるくると弧を描いていて胸の辺りまで垂らして。

「あなたたち、今日はよろしくね。あら、その焦げ茶色の髪の人。そういえば、この前の儀式で認定された人ね。よろしくね。」

「ああ。よろしく。」

「…!?」

 よろしくって言われたから、オレも返事を返したら周りがざわめきだした。なんだよ?イノリバでなんだかんだ注意されるが、オレだってやるときゃやるんだぜ?ちゃんと挨拶くらい出来るさ。

「あなた…何様のつもり!?言葉遣いもきちんと出来ないわけ!!!?他の人達はちゃんと言葉遣い出来るわよ!?」

 途端に、アリツィア王女がオレに向かって言ってきた。なんだ?ちゃんと返事したじゃねぇか。相手して欲しいのか?

「アリツィア王女、どうした?言葉遣い?そんな心の狭い事言うなよ。王女だろ?それにさ、〝他の人達は言葉遣い出来る〟って、それじゃあ皆他人行儀なわけ?それって淋しいくないか?オレみたいな奴居た方が、心が淋しくならないぜ。」

 貴族もそうだけど、なんで言葉遣いって言ってくるんだろ。話した方がいいと思うんだよなー。
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