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9. 西湖での出来事
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五才の私の足だし、対岸までぐるりと湖を回らないといけないから結構時間がかかってしまう。
走りながら見ると、馬から落下してしまった事に気がついた一緒に乗っていた人が馬から降りて乗せようとしているけれど、一人じゃ難しいみたい。どうやら落ちた衝撃か、落馬した人は横になったまま起き上がらないみたいだから。
その間にも、一行とはどんどん差が開いていく。男性が『止まって!!』などと叫んでいたけれど、馬の足音などで聞こえないみたい。
「大丈夫ですか!?」
私は、やっと対岸まで来ると、目の前にいるその落馬した人をどうにかしようとしている人に声を掛けた。
「あ…はい。」
後ろから、お父様とお兄様も来てくれ、落馬した人を一目見て言った。
「あぁ…これはまずい。」
「動かしたらいけないですよね。かと言って…」
落馬した人は、落ちる際にはもう意識がなかったのかもしれない。膝から下の足があり得ない方向へと曲がっているし、目を瞑っているが、額には汗をかなりかいていた。
「お…お助け下さい!お願いします!!」
その方はダミアン兄さまと同じ位の焦げ茶色の髪を短く切りそろえた男の子だった。
そして、落馬した人も同じくダミアン兄さまと同じ位の金髪の男の子だった。
お父様とダミアン兄様は、さじを投げているように見えたけれど、私は諦めきれずにその倒れている人の傍に寄って、痛そうな足をさすってから、額に汗が光っていたからそれも、持っていたハンカチをポケットから取り出して拭いた。
(痛そう…。どうか、痛みが和らぎますように。足、歩けるようになりますように。熱があるのかしら。熱が引いて、元気になって馬に乗れますように。)
そう思いながら。
すると、少し、その男の子が淡い光を放ったかと思うと、少しして目を開けた。
「ん…?」
「あ!」
「やるな…」
「ウカーシュ様!?」
近くで、お父様、ダミアン兄様、一人の男の子の声がしたけれど、それよりも目を開けた子に話しかけた。
「大丈夫?」
(まぁ…!きれいな瞳の色ね。濃い青色で、まるで吸い込まれそうだわ。)
「あ?あ、あぁ…。あれ?俺…」
「あなた、馬から落ちたのよ。頭、痛くない?足は?」
「そういえば…なんか、さっきまではすごく重たかったんだけど、じんわりと温かくなって、それから一気にすっきりとしたよ。足?足がどうかした?」
そう言って彼はゆっくりと立ち上がった。
「おお…!」
一人の男の子が声を上げたので見ると、涙を流しているわ。どうしたのかしら。
「足?良く分からないけれど普段通りだ。」
「そう、それはよかったわ。見た目大丈夫かのかしらと思ったけれど、大事なくてよかったわね!じゃあ大丈夫そうなら早く戻られないと間に合わないわよね?」
そう言って、一行が向かった先を指さすともう、歩いている人達は豆粒の大きさ位になっていた。
「ん?なんだ?あれはまさか我々の部隊か?大変だ!!リシャルド、俺らは置いて行かれたのか?やばいぞ、早く戻ろう!」
そう言って、彼は馬に素早く乗ってリシャルドと呼ばれた人に早く乗れと促していた。
「す、すみません…。急ぎます。もしやあなた様が治して下さったのですよね?ありがとうございます!!本当に、助かりました!このご恩は…」
「早くしろ!リシャルド!」
「わかってますって!…本当にありがとうございます!」
と、リシャルドと呼ばれた人は何度も私達にお礼を言ってペコペコとお辞儀をしてウカーシュ様と呼ばれた人が乗った馬に、乗った。
誤解しているようだから、私も一応伝える事にした。私が治せるなんて、全く違うもの。畏れ多いわ。
「違いますよ、私は何の力もありませんから。きっとピオトル兄様のご加護のおかげですわ。では、お気を付けて。さようならー!」
「良く分からないが、ありがとう!急がないと迷って帰れなくなってしまうから、これで失礼する!」
ウカーシュ様と呼ばれた人が私達へ向かって言うと、すぐに馬は駆け出しあっという間に見えなくなった。
(どうか、彼らが一行に間に合って安全に国へ帰れますように…。)
「ごめんなさい、お父様、ダミアン兄様勝手してしまいまして。」
「ははは。驚いたがね。…あの子達が大事に至らなくて良かったね。さぁ、馬車のある方へ戻ろうか。」
「そうですね。さぁ戻ろう。」
「はい!」
「大丈夫ですかね…。」
「うむ…まぁなるようにしかならん。だが我らはナタリアを守るだけだ。そうであろう?」
そんな二人の呟きは、少し先を行った私には届かなかった。
走りながら見ると、馬から落下してしまった事に気がついた一緒に乗っていた人が馬から降りて乗せようとしているけれど、一人じゃ難しいみたい。どうやら落ちた衝撃か、落馬した人は横になったまま起き上がらないみたいだから。
その間にも、一行とはどんどん差が開いていく。男性が『止まって!!』などと叫んでいたけれど、馬の足音などで聞こえないみたい。
「大丈夫ですか!?」
私は、やっと対岸まで来ると、目の前にいるその落馬した人をどうにかしようとしている人に声を掛けた。
「あ…はい。」
後ろから、お父様とお兄様も来てくれ、落馬した人を一目見て言った。
「あぁ…これはまずい。」
「動かしたらいけないですよね。かと言って…」
落馬した人は、落ちる際にはもう意識がなかったのかもしれない。膝から下の足があり得ない方向へと曲がっているし、目を瞑っているが、額には汗をかなりかいていた。
「お…お助け下さい!お願いします!!」
その方はダミアン兄さまと同じ位の焦げ茶色の髪を短く切りそろえた男の子だった。
そして、落馬した人も同じくダミアン兄さまと同じ位の金髪の男の子だった。
お父様とダミアン兄様は、さじを投げているように見えたけれど、私は諦めきれずにその倒れている人の傍に寄って、痛そうな足をさすってから、額に汗が光っていたからそれも、持っていたハンカチをポケットから取り出して拭いた。
(痛そう…。どうか、痛みが和らぎますように。足、歩けるようになりますように。熱があるのかしら。熱が引いて、元気になって馬に乗れますように。)
そう思いながら。
すると、少し、その男の子が淡い光を放ったかと思うと、少しして目を開けた。
「ん…?」
「あ!」
「やるな…」
「ウカーシュ様!?」
近くで、お父様、ダミアン兄様、一人の男の子の声がしたけれど、それよりも目を開けた子に話しかけた。
「大丈夫?」
(まぁ…!きれいな瞳の色ね。濃い青色で、まるで吸い込まれそうだわ。)
「あ?あ、あぁ…。あれ?俺…」
「あなた、馬から落ちたのよ。頭、痛くない?足は?」
「そういえば…なんか、さっきまではすごく重たかったんだけど、じんわりと温かくなって、それから一気にすっきりとしたよ。足?足がどうかした?」
そう言って彼はゆっくりと立ち上がった。
「おお…!」
一人の男の子が声を上げたので見ると、涙を流しているわ。どうしたのかしら。
「足?良く分からないけれど普段通りだ。」
「そう、それはよかったわ。見た目大丈夫かのかしらと思ったけれど、大事なくてよかったわね!じゃあ大丈夫そうなら早く戻られないと間に合わないわよね?」
そう言って、一行が向かった先を指さすともう、歩いている人達は豆粒の大きさ位になっていた。
「ん?なんだ?あれはまさか我々の部隊か?大変だ!!リシャルド、俺らは置いて行かれたのか?やばいぞ、早く戻ろう!」
そう言って、彼は馬に素早く乗ってリシャルドと呼ばれた人に早く乗れと促していた。
「す、すみません…。急ぎます。もしやあなた様が治して下さったのですよね?ありがとうございます!!本当に、助かりました!このご恩は…」
「早くしろ!リシャルド!」
「わかってますって!…本当にありがとうございます!」
と、リシャルドと呼ばれた人は何度も私達にお礼を言ってペコペコとお辞儀をしてウカーシュ様と呼ばれた人が乗った馬に、乗った。
誤解しているようだから、私も一応伝える事にした。私が治せるなんて、全く違うもの。畏れ多いわ。
「違いますよ、私は何の力もありませんから。きっとピオトル兄様のご加護のおかげですわ。では、お気を付けて。さようならー!」
「良く分からないが、ありがとう!急がないと迷って帰れなくなってしまうから、これで失礼する!」
ウカーシュ様と呼ばれた人が私達へ向かって言うと、すぐに馬は駆け出しあっという間に見えなくなった。
(どうか、彼らが一行に間に合って安全に国へ帰れますように…。)
「ごめんなさい、お父様、ダミアン兄様勝手してしまいまして。」
「ははは。驚いたがね。…あの子達が大事に至らなくて良かったね。さぁ、馬車のある方へ戻ろうか。」
「そうですね。さぁ戻ろう。」
「はい!」
「大丈夫ですかね…。」
「うむ…まぁなるようにしかならん。だが我らはナタリアを守るだけだ。そうであろう?」
そんな二人の呟きは、少し先を行った私には届かなかった。
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