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10. 酔っぱらい

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「ん………。」

「アリーシャ様!良かった…!もう、心臓に悪い事はしないで下さいまし!」

 目を覚ますと、ロッテが涙を浮かべて目にハンカチを押さえていた。
私はいつの間にか、簡易テントの中で、敷物の上に寝かされていた。
まだ、テントの中は暗いから、そんなに時間は経ってないようだった。

(あれ?なんで?)

「私…あたたたた………。」

 体を起き上がらせようとすると、頭が殴られているようにズキズキと痛む。

「アリーシャ様、無理をなさいますから…。そのまま寝て下さい。お水、飲みますか?………あれは、ブドウ酒だったようですよ。しかも、かなり強めの。彼らは彼らなりに、おもてなしをしようとしたらしいです。」


 聞けば、彼らは大国が好きというブドウ酒を飲ませ、酔っぱらった所に、世の中を平和にしてくださいと話すつもりだったらしい。

 家族を殺されて、憎んではいるが、だからこそ二度とそんな目に遭いたくないと伝えたかったのだと。

 ブドウ酒は、この国で作られたもの。
こんなに美味しいもの、もっと飲みたいでしょう?だから私達を蔑ろにしないで、と。

 それに、王族が嫁いでいくから最後に一目見たかったと。嫁ぎ先の、お世話になるしかも大国の騎士達に悪事を働く訳がないと言っていたと。

 本来ならお姉様がここに居るはずだったのに、私がいて、皆は驚いたのだとか。

 そして、私に飲めない、と言ったのは、私がまだ子どもだから。弱いお酒であれば、少しは挨拶で口にした事はあっても、強い酒なんて飲んだ事ないもの。


 …案の定、盛大に酔っぱらってしまった。


「でも、本当に酔っただけでようございました。アリーシャ様が倒れてしまいましたから、一時は本当に、一触即発の雰囲気になりましたからね。」

「………。」

 それもそうよね。全くの的外れで、本当に恥ずかしいわ…。皆に謝りたくても、少し動くだけで、頭が割れるように痛いのよね。だから、ここから動けないわ。

「ロッテ。悪いけれど、皆に謝ってきてくれる?もう、集落の人達は帰ったかしら。」

「いいえ。アリーシャ様が目覚めるまでここにいると、皆、外におりますよ。伝えてきましょうか。」

「お願い…。あと、騎士の皆さんにも、食事の時間を台無しにしてすみませんと謝っておいてくれる?」

「畏まりました。さぁ、お水、飲みますか?もう少しお眠り下さい。」

「そうするわ。頭が割れそうなの。お父様が言っていた、飲み過ぎで頭が痛いってこういう気持ちなのね。」

「そうでございますね。今度お会いになりましたら、お伝えして下さい。」

「もう…会えないでしょ…。」

「そんな事はありませんよ。………アリーシャ様?もう寝ましたか。おやすみなさいませ。」
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