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グローリア王国内にて
襲撃!?
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スターは深々と頷く。
「オネットにはマリア王女がいるからのぅ」
「何を言っているのか分からない」
「いつまでもそう言ってごまかせるとは思わぬ事じゃ」
「いや、本当に何を言っているのか分からない」
スターとオネットの押し問答を聞きながら、ミカエルは状況を整理した。
マルドュクの手下であるために退治しようとしたところ、どうにも倒せないでいる。
オネットがマリアやスターを味方につけている事も要因だろうが、オネットのペースに呑まれてしまうように感じる。
信頼できるかは不明であるのに。
クゥガを一撃で倒した事を考えると、危険人物である可能性は高い。
マルドゥクの情報を惜しみなく教えているように見えるが、真偽は不明だ。彼の情報は裏の取りようがない。
倒すべき相手のはずなのに、倒す行動に踏み切れない。
ミカエルは頭を抱えた。
「どうした? 頭痛か?」
オネットが声を掛ける。
ミカエルはこめかみを押さえてハハハと不適に笑った。
「まあ、なるようになるか」
「なんじゃ、オネットがマリア王女を慕っているのが心配なのか?」
「僕はオネットがどんな感情を抱いていても関係がない。だが、マリア王女に手を出すのなら容赦しない」
頷いて聞いていたのは、他ならぬオネットだった。
「素直に殺すと言っていい。おまえはそういう立場だ。一国を守るのは過酷な業務だ。特に、あのような能天気な娘がトップではな。苦労しているだろう」
「……なんで僕は労われている」
ミカエルのもっともな疑問をオネットは流す。
「マルドゥクのように恨みを買う男がトップにいる時も大変だ。情熱と冷静さを程よく兼ね備えたリーダーが理想だと思うが、そんな人物はマルドゥクの元では生き残れない」
「愚痴か?」
「聞いてくれてありがとう」
「あ、ああ」
ミカエルはオネットのペースがつかめないでいた。
なにげなく辺りを見渡す。
市場は活気があり、喜ばしい。
しかし、どことなく違和感がある。
「胸騒ぎがする……」
ミカエルがポツリと呟くと、スターが続きを引き継ぐ。
「嫌な予感がするのぅ」
「そんなに嫌か? 俺には当たり前の気配だと思うが」
オネットの言葉に、ミカエルはこめかみを押さえた。
「当たり前とか言うな。グローリア王国はそこまで物騒な場所じゃない」
「頭痛の種が増えたのなら悪かった」
ミカエルは槍を構える。
「言いたい事はいろいろあるが、今は集中する。敵のあぶり出しにな」
戦いの火蓋はすぐに切って落とされた。
王国の外と城下町の間の門が爆音と共に壊され、大量の男たちが突進してくる。男たちはおのおの武器を持っていた。剣、斧、など接近戦に向く武器ばかりだ。
「野盗にしてはいいものを持っているな」
ミカエルは舌打ちをした。がむしゃらに全力疾走をする男たちの一人ひとりの戦力は大した事はないだろう。
しかし、数が多すぎる。
雄叫びをあげた数十名の男たちが突進しているのだ。通りは悲鳴の嵐となった。
多くの人が避難をする。オレンジを売っていた女性も含まれていた。
ミカエルが号令を掛ける。
「動け騎士団! その力を見せてやれ!」
王城の警鐘が鳴らされると同時に、城門から騎士団が駆けてくる。
先頭の集団は馬にまたがり、颯爽と走り抜ける。
白銀の鎧は輝き、誇り高き騎士の証たる長槍がきらめく。
ミカエルは朗々とした声で指示を飛ばす。
「槍を突け! 弓は援護を!」
前方の騎士たちは一斉に槍を突き出す。
侵入者たちの先頭にいる男たちは二の足を踏むが、後ろから押されて転ぶ。
戦力差は明らかだった。
「この程度でグローリア王国に挑むとは。儂の出る幕はなさそうじゃのぅ」
スターは顎髭を優雅にいじっていた。
ミカエルは得意げにふんぞった。
「野盗に遅れを取る騎士などいない!」
「相手が弱いのぅ」
「弱いものいじめだと言いたいのか!?」
ミカエルが憤慨するそばで、オネットが口を挟む。
「俺もそう思う」
「おまえまで言うのか!」
「武器は立派だが、防具が貧弱だ。足並みもそろっていないし、本当に戦うための部隊か?」
とうとうと言われて、ミカエルは口ごもった。
「そこまでは考えていなかったが……グローリア王国を攻め込んだのは間違いない。すぐに退治するべきだ!」
「やめて、ミカエル! 彼らをいじめないで!」
城門からマリアが走ってきた。
「彼らはきっと農民よ。悪い人たちじゃないわ!」
「しかしながらマリア王女、彼らを放っておくわけにはいきません」
「戦う力が無いのにあれほどの人数が襲ってくるなんて、きっと何か事情があるのよ。聞いてあげて!」
「今ですか!?」
ミカエルは困惑した。
マリアは叫ぶ。
「すぐに降伏して! 命を奪うつもりはないわ」
「嘘をつくな!」
「王女の企みは知っている!」
男たちは騎士たちと戦って立っていられず、息も絶え絶えだった。
しかし、全員の目が死んでいない。恐ろしいまでの気迫を感じる。
「俺たちから作物を奪った魔女が。善良ヅラして済むと思うな!」
「どういう事?」
マリアは首を傾げた。本気で身に覚えがない。
しかし、男たちの糾弾は続く。
「とぼけるな! 邪悪な者たちと手を組んで、ソール大陸を支配するつもりだろう。ガルーダ様が言っていた!」
「ガルーダが!?」
マリアは両目を見開いた。
「あの人は前々からグローリア王国をよく思っていないわ。デタラメを吹き込んだのね」
「あの方は食べ物のない俺達にパンを分けてくれた。慈悲深い方だ。その方がマリア王女が魔女となったと教えてくれたんだ。デタラメのはずがない!」
マリアは男たちの妄言を聞き捨てる事ができない。
「食べ物が無かったのね」
「ああ、おまえのせいだ!」
「食べ物を分けたら、私の話も聞いてくれるかしら?」
「へ?」
マリアが提案すると、男たちは間抜けな声を発して互いに顔を見合わせた。
「オネットにはマリア王女がいるからのぅ」
「何を言っているのか分からない」
「いつまでもそう言ってごまかせるとは思わぬ事じゃ」
「いや、本当に何を言っているのか分からない」
スターとオネットの押し問答を聞きながら、ミカエルは状況を整理した。
マルドュクの手下であるために退治しようとしたところ、どうにも倒せないでいる。
オネットがマリアやスターを味方につけている事も要因だろうが、オネットのペースに呑まれてしまうように感じる。
信頼できるかは不明であるのに。
クゥガを一撃で倒した事を考えると、危険人物である可能性は高い。
マルドゥクの情報を惜しみなく教えているように見えるが、真偽は不明だ。彼の情報は裏の取りようがない。
倒すべき相手のはずなのに、倒す行動に踏み切れない。
ミカエルは頭を抱えた。
「どうした? 頭痛か?」
オネットが声を掛ける。
ミカエルはこめかみを押さえてハハハと不適に笑った。
「まあ、なるようになるか」
「なんじゃ、オネットがマリア王女を慕っているのが心配なのか?」
「僕はオネットがどんな感情を抱いていても関係がない。だが、マリア王女に手を出すのなら容赦しない」
頷いて聞いていたのは、他ならぬオネットだった。
「素直に殺すと言っていい。おまえはそういう立場だ。一国を守るのは過酷な業務だ。特に、あのような能天気な娘がトップではな。苦労しているだろう」
「……なんで僕は労われている」
ミカエルのもっともな疑問をオネットは流す。
「マルドゥクのように恨みを買う男がトップにいる時も大変だ。情熱と冷静さを程よく兼ね備えたリーダーが理想だと思うが、そんな人物はマルドゥクの元では生き残れない」
「愚痴か?」
「聞いてくれてありがとう」
「あ、ああ」
ミカエルはオネットのペースがつかめないでいた。
なにげなく辺りを見渡す。
市場は活気があり、喜ばしい。
しかし、どことなく違和感がある。
「胸騒ぎがする……」
ミカエルがポツリと呟くと、スターが続きを引き継ぐ。
「嫌な予感がするのぅ」
「そんなに嫌か? 俺には当たり前の気配だと思うが」
オネットの言葉に、ミカエルはこめかみを押さえた。
「当たり前とか言うな。グローリア王国はそこまで物騒な場所じゃない」
「頭痛の種が増えたのなら悪かった」
ミカエルは槍を構える。
「言いたい事はいろいろあるが、今は集中する。敵のあぶり出しにな」
戦いの火蓋はすぐに切って落とされた。
王国の外と城下町の間の門が爆音と共に壊され、大量の男たちが突進してくる。男たちはおのおの武器を持っていた。剣、斧、など接近戦に向く武器ばかりだ。
「野盗にしてはいいものを持っているな」
ミカエルは舌打ちをした。がむしゃらに全力疾走をする男たちの一人ひとりの戦力は大した事はないだろう。
しかし、数が多すぎる。
雄叫びをあげた数十名の男たちが突進しているのだ。通りは悲鳴の嵐となった。
多くの人が避難をする。オレンジを売っていた女性も含まれていた。
ミカエルが号令を掛ける。
「動け騎士団! その力を見せてやれ!」
王城の警鐘が鳴らされると同時に、城門から騎士団が駆けてくる。
先頭の集団は馬にまたがり、颯爽と走り抜ける。
白銀の鎧は輝き、誇り高き騎士の証たる長槍がきらめく。
ミカエルは朗々とした声で指示を飛ばす。
「槍を突け! 弓は援護を!」
前方の騎士たちは一斉に槍を突き出す。
侵入者たちの先頭にいる男たちは二の足を踏むが、後ろから押されて転ぶ。
戦力差は明らかだった。
「この程度でグローリア王国に挑むとは。儂の出る幕はなさそうじゃのぅ」
スターは顎髭を優雅にいじっていた。
ミカエルは得意げにふんぞった。
「野盗に遅れを取る騎士などいない!」
「相手が弱いのぅ」
「弱いものいじめだと言いたいのか!?」
ミカエルが憤慨するそばで、オネットが口を挟む。
「俺もそう思う」
「おまえまで言うのか!」
「武器は立派だが、防具が貧弱だ。足並みもそろっていないし、本当に戦うための部隊か?」
とうとうと言われて、ミカエルは口ごもった。
「そこまでは考えていなかったが……グローリア王国を攻め込んだのは間違いない。すぐに退治するべきだ!」
「やめて、ミカエル! 彼らをいじめないで!」
城門からマリアが走ってきた。
「彼らはきっと農民よ。悪い人たちじゃないわ!」
「しかしながらマリア王女、彼らを放っておくわけにはいきません」
「戦う力が無いのにあれほどの人数が襲ってくるなんて、きっと何か事情があるのよ。聞いてあげて!」
「今ですか!?」
ミカエルは困惑した。
マリアは叫ぶ。
「すぐに降伏して! 命を奪うつもりはないわ」
「嘘をつくな!」
「王女の企みは知っている!」
男たちは騎士たちと戦って立っていられず、息も絶え絶えだった。
しかし、全員の目が死んでいない。恐ろしいまでの気迫を感じる。
「俺たちから作物を奪った魔女が。善良ヅラして済むと思うな!」
「どういう事?」
マリアは首を傾げた。本気で身に覚えがない。
しかし、男たちの糾弾は続く。
「とぼけるな! 邪悪な者たちと手を組んで、ソール大陸を支配するつもりだろう。ガルーダ様が言っていた!」
「ガルーダが!?」
マリアは両目を見開いた。
「あの人は前々からグローリア王国をよく思っていないわ。デタラメを吹き込んだのね」
「あの方は食べ物のない俺達にパンを分けてくれた。慈悲深い方だ。その方がマリア王女が魔女となったと教えてくれたんだ。デタラメのはずがない!」
マリアは男たちの妄言を聞き捨てる事ができない。
「食べ物が無かったのね」
「ああ、おまえのせいだ!」
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