39 / 52
マーニ大陸にて
”マリオネット” VS ”アイアン”
しおりを挟む
「あ、オネットよ。オネットー!」
元気な声が聞こえて振り向けば、マリアが走っていた。
探し人は見つかった。
しかし、その後ろには”アイアン”を発動中のイアンが殺気を顕にして走っていた。
「あなたに会えて良かったわ!」
マリアは再会を喜び、両目を輝かせながらオネットに抱きついた。
オネットは避けようと思えば避けられるはずだったが、頬を赤らめてマリアを受け止めていた。
その様子を見て、ミカエルの両目がぎらついた。
「ゆるさあぁああん!」
槍を構えて突進を仕掛ける。しかし、あっさりかわされ、勢い余って転ぶ。
スターは健康な歯を見せながらカッカッカッと笑っていた。
「元気があって良いのぅ」
「オネット愛しているぜえぇええ!」
今度はジャックがオネットに抱きつく。
オネットは頬を赤らめはしないが、懐かしんでいるようだ。
ミカエルが起き上がる。
「なぜ僕だけかわした!?」
「殺気の有無だ」
「じゃあ、あいつはどうする?」
ミカエルが指差す方向には、殺気まみれのイアンが走ってきている。
「オネットてめぇ裏切りものぶっ殺す!」
「本気で避ける。二人は逃げてほしい」
オネットはマリアとジャックからそっと離れる。
マリアは残念そうだったが、割り切った。グローリア四人組は、オネットの元に避難してきたレーベン王国の民を連れて建物の角に避難した。
「あとでお茶しましょうね」
「生きていればな」
マリアが声を掛けると、オネットは手短に答えて両腕を広げる。十本の指からは視認不可能な糸が伸びている。
”マリオネット”が発動された。
一方でイアンは両腕を振り上げて、斬撃を繰り出す。マリアたちの前で披露したものと同じだ。
「クソ人形が。切り刻んでやる!」
周囲の建物に、一瞬で巨大な切り傷ができていく。
しゃがんで避けられる規模ではない。
オネットは足元に弾力のある太い糸を伸ばし、その上に全体重を掛けて飛び乗る。
巨大な斬撃がオネットがもといた場所を切り刻む直前に、オネットは空高く跳んでいた。
「なにぃ!?」
イアンが見上げた先には、月夜を背景に浮かぶオネットがいた。
オネットの足元には藍色の糸が空気中に敷かれている。藍色の糸はいくつかの建物の屋上とつながっていた。ゆらゆらと不安定に揺れているが、オネットはうまくバランスを取っていた。
「話を聞け、イアン」
オネットは淡々とした口調で語る。マーニ大陸の公用語を用いる。マリアには理解できない言語だ。
「俺はマルドゥク様に忠誠を誓っている」
「じゃあ、なんでグローリア組と抱き合っていた!? マルドゥク様とも抱き合った事がないのに!」
イアンは地団駄を踏んでいた。イアンもマーニ大陸の公用語を用いている。
オネットは無表情のまま答える。
「マルドゥク様は男を抱くような御方か?」
「変な質問にすり替えるな! 変態人形!」
「心外だな。変態はマルドゥク様だろう」
「てめぇ……」
イアンはしばらく沈黙した。
冷たい風が二人の間を吹き抜ける。
「……服着ろよ、と思う事はあるけど」
「そうだな」
「だが、てめぇに言われる筋合いはねぇよカス人形!」
イアンは激高していた。
「ぶっ殺してやる!」
斬撃を空へ繰り出す。オネットは更に上空へ跳び、あっさりと難を逃れる。
「……まじでムカついたぜ」
イアンは殺気を膨らませたまま、両目を閉じて深呼吸をした。
次の瞬間、イアンはレンガの建物に突進した。
壁を蹴り、穴を開けながら恐るべき速さで屋上に向かう。
「覚えたての技を披露してやらぁ!」
変化はイアンの足元に表れた。
ギシギシと音をたてて螺旋状に形を変える。強靭なバネの形となっていた。
「”アイアン”の真骨頂を目にして死ね!」
イアンは登りきった勢いそのまま屋上を蹴る。
”アイアン”の刃をむき出しに、オネットと一気に距離を詰める。
大跳躍はオネットの想像以上のものだった。
オネットは咄嗟に大幅に右後ろに跳ぶ。
斬撃が走る。
月夜を背景に二人のシルエットが重なる。
オネットの左肩から血が吹き出していた。
マリアの顔が青ざめる。
「オネット!?」
ミカエルが止める暇なく、建物の角から出る。
オネットは糸を敷く事なく落下している。
マリアは落下すると予想される位置を目指して走っていた。
「無茶ですよ、マリア王女!」
ミカエルが追いかけるが、身軽なマリアに追いつけない。スターとジャックも同様に追いつけなかった。
「逃すかあぁぁああ!」
イアンも同じ地点を目指して刃を重くし、急激に高度を下げている。
三人の行き着く先は重なっている。
広場の真ん中あたりだ。
「オネットー!」
マリアが叫ぶ。
「死ねえぇぇえ!」
イアンが吠える。
イアンの斬撃が、マリアとオネットに重なりそうになった瞬間。
”マリオネット”の糸が大ぶりの振り子のような動きをしていた。
オネットはマリアを抱えながら糸の動きに身体を任せる。
落下時の反動を利用して、イアンの意図しない方向に揺り返していた。
息が苦しくなるほどの風圧を受けながら、目まぐるしく建物の間をすり抜ける。
「どこへ行くんだ!?」
ミカエルは走る。スターとジャックはへばっていた。
一方で、レーベン王国の国民たちは騒ぎを聞きつけて避難所から出てきていた。
「猟犬が悪魔と戦っているらしい」
「ああ、あの国を捨てた悪魔と」
悪魔とは、オネットの事だろう。
老齢の元騎士が口を開く。リヒトだ。
「本当に悪魔なのか? 儂らのために戦っているのではないのか? 何人もあの方に助けられているらしいぞ」
「悪魔の罪は重い。今回助けられた人間の何倍が殺されたと思っている?」
「これからもっと多くの人間を助けるだろう。儂らには、それを補佐する責務がある」
「あ……」
国民たちは言葉を失った。
元騎士団の言葉が重い。
リヒトがおもむろに月夜を見上げる。
「儂らの王子を守る時が来たぞ!」
歓声があがる。
国民たちは各自がランタンを手に、一直線に戦場へ向かった。彼らが自分たちの勘違いに気がつく事はないだろう。
「今度こそ隠れていろ」
オネットは建物の陰にマリアを降ろした。その表情は青い。
マリアは首を横に振る。
「いっちゃダメ。殺されるわ!」
「イアンは俺の居場所が分かっている。あいつの勘は鋭い。立ち向かうしかない。俺から離れていろ、その方が安全だ」
マリアはしょんぼりとした。
「何もできないのが悔しいわ……お茶の約束、絶対に守ってね」
「世の中に絶対はない」
オネットは陰から出る。
通りには、イアンが待ち構えていた。
「よぉ、別れの挨拶はすんだか!?」
斬撃は容赦なくオネットに迫る。
マリアがいない建物の陰に飛び込んでかわす。
致命傷は避けたが劣勢は明らかだ。
その時、朗々とした声が響く。
「王子を守れー!」
リヒトだった。
号令に応えるように、イアンに向けて四方八方からランタンが投げ込まれる。建物の窓から投げている人もいた。
「うっとうしい!」
イアンは次々とランタンを切り刻む。
しかし、火の粉とガラスが飛び散る。イアンの体力は徐々に削れていた。
足の動きは止まっていた。誰を標的にするか迷ったようだ。
マリアが叫ぶ。
「ミカエル、今よ!」
走ってきたグローリアの騎士団長は疲れ切った身体に鞭打って、重い槍を振り回す。
繰り出すのは、海上で怪魚ブッブーを追い払ったあの技だ。
「食らえ、ミカエルスペシャルゥゥウウウ!」
業火が生まれ、イアンを覆う。
イアンの悲鳴が聞こえた。明らかにひるんでいる。
「よっしトドメだ!」
ミカエルが槍を握り直して突進する。
しかし、イアンはそこにはいなかった。瞬時に逃げたようだ。
「……覚えてろよ」
怨念じみた言葉を残していた。
辺りは静寂に包まれる。通りにはガラスが散乱していたが、それ以上の異変はない。
「勝った?」
マリアが呟く。
レーベンの国民たちは歓声をあげた。
「万歳!」
「猟犬を追い払ったぞ!」
国民たちの言葉はマリアには分からない。
しかし、とても喜んでいるのが伝わった。
マリアは安堵と共に、オネットが逃げ込んだ方向を見る。
なぜかリヒトともみあっていた。
「いけませぬ、いけませぬぞ!」
「どけ! 離れろ!」
リヒトがオネットを抱きしめ、オネットが振り払おうとしているようだ。
マリアが割り込む。両目は潤んでいた。
「オネット、怪我を治さないと」
「どうでもいい。イアンを止めないと、取り返しのつかない事になる。マルドゥクが動くだろう」
オネットの顔には焦りが浮かんでいた。リヒトを背負投げして振りほどく。
「行かないで!」
マリアはオネットに抱きつく。
「気持ちは分かるわ。でも、一人でなんとかしようとしないで」
「俺の問題だ。巻き込むつもりはない」
「ううん、あなたの問題は私たちの問題よ。一緒に解決しましょう。まずは怪我を治して」
マリアはオネットの頬を、柔らかな両手で包み込んだ。
「お茶をしましょう。約束よ」
「……長居はできない。それでもいいなら」
オネットの両頬が赤い。
その様子を、ミカエルは指で壁をガリガリしながら見ていた。
「おのれえぇぇええ」
元気な声が聞こえて振り向けば、マリアが走っていた。
探し人は見つかった。
しかし、その後ろには”アイアン”を発動中のイアンが殺気を顕にして走っていた。
「あなたに会えて良かったわ!」
マリアは再会を喜び、両目を輝かせながらオネットに抱きついた。
オネットは避けようと思えば避けられるはずだったが、頬を赤らめてマリアを受け止めていた。
その様子を見て、ミカエルの両目がぎらついた。
「ゆるさあぁああん!」
槍を構えて突進を仕掛ける。しかし、あっさりかわされ、勢い余って転ぶ。
スターは健康な歯を見せながらカッカッカッと笑っていた。
「元気があって良いのぅ」
「オネット愛しているぜえぇええ!」
今度はジャックがオネットに抱きつく。
オネットは頬を赤らめはしないが、懐かしんでいるようだ。
ミカエルが起き上がる。
「なぜ僕だけかわした!?」
「殺気の有無だ」
「じゃあ、あいつはどうする?」
ミカエルが指差す方向には、殺気まみれのイアンが走ってきている。
「オネットてめぇ裏切りものぶっ殺す!」
「本気で避ける。二人は逃げてほしい」
オネットはマリアとジャックからそっと離れる。
マリアは残念そうだったが、割り切った。グローリア四人組は、オネットの元に避難してきたレーベン王国の民を連れて建物の角に避難した。
「あとでお茶しましょうね」
「生きていればな」
マリアが声を掛けると、オネットは手短に答えて両腕を広げる。十本の指からは視認不可能な糸が伸びている。
”マリオネット”が発動された。
一方でイアンは両腕を振り上げて、斬撃を繰り出す。マリアたちの前で披露したものと同じだ。
「クソ人形が。切り刻んでやる!」
周囲の建物に、一瞬で巨大な切り傷ができていく。
しゃがんで避けられる規模ではない。
オネットは足元に弾力のある太い糸を伸ばし、その上に全体重を掛けて飛び乗る。
巨大な斬撃がオネットがもといた場所を切り刻む直前に、オネットは空高く跳んでいた。
「なにぃ!?」
イアンが見上げた先には、月夜を背景に浮かぶオネットがいた。
オネットの足元には藍色の糸が空気中に敷かれている。藍色の糸はいくつかの建物の屋上とつながっていた。ゆらゆらと不安定に揺れているが、オネットはうまくバランスを取っていた。
「話を聞け、イアン」
オネットは淡々とした口調で語る。マーニ大陸の公用語を用いる。マリアには理解できない言語だ。
「俺はマルドゥク様に忠誠を誓っている」
「じゃあ、なんでグローリア組と抱き合っていた!? マルドゥク様とも抱き合った事がないのに!」
イアンは地団駄を踏んでいた。イアンもマーニ大陸の公用語を用いている。
オネットは無表情のまま答える。
「マルドゥク様は男を抱くような御方か?」
「変な質問にすり替えるな! 変態人形!」
「心外だな。変態はマルドゥク様だろう」
「てめぇ……」
イアンはしばらく沈黙した。
冷たい風が二人の間を吹き抜ける。
「……服着ろよ、と思う事はあるけど」
「そうだな」
「だが、てめぇに言われる筋合いはねぇよカス人形!」
イアンは激高していた。
「ぶっ殺してやる!」
斬撃を空へ繰り出す。オネットは更に上空へ跳び、あっさりと難を逃れる。
「……まじでムカついたぜ」
イアンは殺気を膨らませたまま、両目を閉じて深呼吸をした。
次の瞬間、イアンはレンガの建物に突進した。
壁を蹴り、穴を開けながら恐るべき速さで屋上に向かう。
「覚えたての技を披露してやらぁ!」
変化はイアンの足元に表れた。
ギシギシと音をたてて螺旋状に形を変える。強靭なバネの形となっていた。
「”アイアン”の真骨頂を目にして死ね!」
イアンは登りきった勢いそのまま屋上を蹴る。
”アイアン”の刃をむき出しに、オネットと一気に距離を詰める。
大跳躍はオネットの想像以上のものだった。
オネットは咄嗟に大幅に右後ろに跳ぶ。
斬撃が走る。
月夜を背景に二人のシルエットが重なる。
オネットの左肩から血が吹き出していた。
マリアの顔が青ざめる。
「オネット!?」
ミカエルが止める暇なく、建物の角から出る。
オネットは糸を敷く事なく落下している。
マリアは落下すると予想される位置を目指して走っていた。
「無茶ですよ、マリア王女!」
ミカエルが追いかけるが、身軽なマリアに追いつけない。スターとジャックも同様に追いつけなかった。
「逃すかあぁぁああ!」
イアンも同じ地点を目指して刃を重くし、急激に高度を下げている。
三人の行き着く先は重なっている。
広場の真ん中あたりだ。
「オネットー!」
マリアが叫ぶ。
「死ねえぇぇえ!」
イアンが吠える。
イアンの斬撃が、マリアとオネットに重なりそうになった瞬間。
”マリオネット”の糸が大ぶりの振り子のような動きをしていた。
オネットはマリアを抱えながら糸の動きに身体を任せる。
落下時の反動を利用して、イアンの意図しない方向に揺り返していた。
息が苦しくなるほどの風圧を受けながら、目まぐるしく建物の間をすり抜ける。
「どこへ行くんだ!?」
ミカエルは走る。スターとジャックはへばっていた。
一方で、レーベン王国の国民たちは騒ぎを聞きつけて避難所から出てきていた。
「猟犬が悪魔と戦っているらしい」
「ああ、あの国を捨てた悪魔と」
悪魔とは、オネットの事だろう。
老齢の元騎士が口を開く。リヒトだ。
「本当に悪魔なのか? 儂らのために戦っているのではないのか? 何人もあの方に助けられているらしいぞ」
「悪魔の罪は重い。今回助けられた人間の何倍が殺されたと思っている?」
「これからもっと多くの人間を助けるだろう。儂らには、それを補佐する責務がある」
「あ……」
国民たちは言葉を失った。
元騎士団の言葉が重い。
リヒトがおもむろに月夜を見上げる。
「儂らの王子を守る時が来たぞ!」
歓声があがる。
国民たちは各自がランタンを手に、一直線に戦場へ向かった。彼らが自分たちの勘違いに気がつく事はないだろう。
「今度こそ隠れていろ」
オネットは建物の陰にマリアを降ろした。その表情は青い。
マリアは首を横に振る。
「いっちゃダメ。殺されるわ!」
「イアンは俺の居場所が分かっている。あいつの勘は鋭い。立ち向かうしかない。俺から離れていろ、その方が安全だ」
マリアはしょんぼりとした。
「何もできないのが悔しいわ……お茶の約束、絶対に守ってね」
「世の中に絶対はない」
オネットは陰から出る。
通りには、イアンが待ち構えていた。
「よぉ、別れの挨拶はすんだか!?」
斬撃は容赦なくオネットに迫る。
マリアがいない建物の陰に飛び込んでかわす。
致命傷は避けたが劣勢は明らかだ。
その時、朗々とした声が響く。
「王子を守れー!」
リヒトだった。
号令に応えるように、イアンに向けて四方八方からランタンが投げ込まれる。建物の窓から投げている人もいた。
「うっとうしい!」
イアンは次々とランタンを切り刻む。
しかし、火の粉とガラスが飛び散る。イアンの体力は徐々に削れていた。
足の動きは止まっていた。誰を標的にするか迷ったようだ。
マリアが叫ぶ。
「ミカエル、今よ!」
走ってきたグローリアの騎士団長は疲れ切った身体に鞭打って、重い槍を振り回す。
繰り出すのは、海上で怪魚ブッブーを追い払ったあの技だ。
「食らえ、ミカエルスペシャルゥゥウウウ!」
業火が生まれ、イアンを覆う。
イアンの悲鳴が聞こえた。明らかにひるんでいる。
「よっしトドメだ!」
ミカエルが槍を握り直して突進する。
しかし、イアンはそこにはいなかった。瞬時に逃げたようだ。
「……覚えてろよ」
怨念じみた言葉を残していた。
辺りは静寂に包まれる。通りにはガラスが散乱していたが、それ以上の異変はない。
「勝った?」
マリアが呟く。
レーベンの国民たちは歓声をあげた。
「万歳!」
「猟犬を追い払ったぞ!」
国民たちの言葉はマリアには分からない。
しかし、とても喜んでいるのが伝わった。
マリアは安堵と共に、オネットが逃げ込んだ方向を見る。
なぜかリヒトともみあっていた。
「いけませぬ、いけませぬぞ!」
「どけ! 離れろ!」
リヒトがオネットを抱きしめ、オネットが振り払おうとしているようだ。
マリアが割り込む。両目は潤んでいた。
「オネット、怪我を治さないと」
「どうでもいい。イアンを止めないと、取り返しのつかない事になる。マルドゥクが動くだろう」
オネットの顔には焦りが浮かんでいた。リヒトを背負投げして振りほどく。
「行かないで!」
マリアはオネットに抱きつく。
「気持ちは分かるわ。でも、一人でなんとかしようとしないで」
「俺の問題だ。巻き込むつもりはない」
「ううん、あなたの問題は私たちの問題よ。一緒に解決しましょう。まずは怪我を治して」
マリアはオネットの頬を、柔らかな両手で包み込んだ。
「お茶をしましょう。約束よ」
「……長居はできない。それでもいいなら」
オネットの両頬が赤い。
その様子を、ミカエルは指で壁をガリガリしながら見ていた。
「おのれえぇぇええ」
0
あなたにおすすめの小説
冴えない建築家いずれ巨匠へと至る
木工槍鉋
ファンタジー
「建築とは、単なる箱を作ることではない。そこに流れる『時』を設計することだ――」
かつてそう語り、伝説の巨匠と呼ばれることになる男も、かつては己の名前に怯えるだけの冴えない二級建築士だった。
安藤研吾、40代。独立したものの仕事はなく、下請けとして「情緒のない真四角な箱」の図面を引き続ける日々。そんな彼が恩師に教えられた座標の先で迷い込んだのは、昭和初期を彷彿とさせる、魔法のない異世界だった。
現代の建築知識、そして一釘一釘を大切にする頑固大工との出会い。 「便利さ」ではなく「住む人の幸せ」を求めて、研吾は廃村に時計台を建て、水路を拓き、人々の暮らしを再生していく。
異世界で「百年の計」を学んだ研吾が現実世界に戻ったとき、その設計は現代の建築界をも揺るがし始める。 これは、一人の男が仕事への誇りを取り戻し、本物の「巨匠」へと駆け上がるまでの、ひたむきな再建の記録。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
王子様とずっと一緒にいる方法
秋月真鳥
恋愛
五歳のわたくし、フィーネは姉と共に王宮へ。
そこで出会ったのは、襲われていた六歳の王太子殿下。
「フィーネ・エルネスト、助太刀します! お覚悟ー!」
身長を超える大剣で暗殺者を一掃したら、王子様の学友になっちゃった!
「フィーネ嬢、わたしと過ごしませんか?」
「王子様と一緒にいられるの!?」
毎日お茶して、一緒にお勉強して。
姉の恋の応援もして。
王子様は優しくて賢くて、まるで絵本の王子様みたい。
でも、王子様はいつか誰かと結婚してしまう。
そうしたら、わたくしは王子様のそばにいられなくなっちゃうの……?
「ずっとわたしと一緒にいる方法があると言ったら、フィーネ嬢はどうしますか?」
え? ずっと一緒にいられる方法があるの!?
――これは、五歳で出会った二人が、時間をかけて育む初恋の物語。
彼女はまだ「恋」を知らない。けれど、彼はもう決めている――。
※貧乏子爵家の天真爛漫少女×策略王子の、ほのぼのラブコメです。
※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された最強令嬢は、新たな人生を自由に生きる
灯乃
ファンタジー
旧題:魔眼の守護者 ~用なし令嬢は踊らない~
幼い頃から、スウィングラー辺境伯家の後継者として厳しい教育を受けてきたアレクシア。だがある日、両親の離縁と再婚により、後継者の地位を腹違いの兄に奪われる。彼女は、たったひとりの従者とともに、追い出されるように家を出た。
「……っ、自由だーーーーーーっっ!!」
「そうですね、アレクシアさま。とりあえずあなたは、世間の一般常識を身につけるところからはじめましょうか」
最高の淑女教育と最強の兵士教育を施されたアレクシアと、そんな彼女の従者兼護衛として育てられたウィルフレッド。ふたりにとって、『学校』というのは思いもよらない刺激に満ちた場所のようで……?
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる