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決戦!
凍る海辺
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イアンが走り込み、ミカエルの馬の足を切り裂いた。
馬は悲鳴をあげてその場から立てなくなる。
「次はてめぇだ!」
”アイアン”の刃がミカエルの頭上に襲いかかる。無駄のない動作だった。
その刃を、ミカエルは槍で受け止めた。鍛えられた肉体が可能とさせる反応だった。
イアンが苛立たしげに奇声を発する。
「クソが、ぶっ殺してやる!」
再びミカエルに切りかかる。
ミカエルは間合いを取った。リーチは槍の方がある。距離を詰められすぎないように細心の注意を払う。
激しく金属がぶつかりあう。二人とも、常人には信じられないような速さで武器を振るっていた。
マルドゥクが高らかに笑う。
「実に見事! ルド、ここは俺たちに任せてグローリアの娘を仕留めろ。オネットを揺さぶれるだろう。楽しい宴はこれからだ!」
「承りました」
ルドは深々と一礼して、氷の道を再び歩き始める。
彼の標的はグローリア王国。そして、それを守ろうとするマリアだ。
ルドはグローリア王国の海岸にたどり着く。氷の道を歩き終えて人心地が付いた。”コールド”を慣れない方法で使うのは緊張を要していた。
「まったく、海は不便ですね」
ルドは悪態を吐いた。
海岸の砂場は歩きづらく、むせ返るような潮の香りが嫌でも鼻に入る。泳げないルドにとって、海辺は不快な場所でしかない。
「手早く任務を完了しましょうか」
ルドは右手を天に掲げる。暗い空に、無数の氷の矢が召喚される。急速に冷気が押し寄せ、海辺が少しずつ凍っていく。
グローリア王城にどの程度の人間が潜んでいるかは分からないが、全壊させれば関係がない。
マリアはペンダントを握って、ルドと対峙していた。
「あなたたちの好きにさせないわ」
「なんとでもおっしゃいなさない。オネットの泣き顔も見たいものです」
「俺の泣き顔はそんなに貴重か?」
声は後ろから聞こえた。
ルドは心臓が飛び出そうな感覚だったが、悲鳴をあげるのはなんとか堪える。動揺を悟られるのは百害あって一利なし。
平静を装って振り向くと、オネットがいた。暗くて表情は分からないが、星明かりを頼りにすれば辛うじてシルエットが分かる。明らかに礼装ではない。半袖と短パンのようだ。
「……僕に無断で着替えましたね。例の約束はもう守らなくて良いのですね?」
「そうだな。おまえはマルドゥクに、俺がわざと負けるように命令させればいい。おまえのプライドが許せばの話だが」
マリアには意味が分からない会話だ。
しかし、二人の間で約束が交わされた事は理解した。
「もしかして、私が知らない所でまた無茶をしたの?」
「安心してほしい、ルドに負けるつもりはない」
オネットは当然の如く言っていた。
ルドは目を凝らして、オネットの様子を確認する。デカデカとイチゴが描かれている半袖を着ているのが分かる。
「罰ゲームをやらされているのですか?」
「何の事だ?」
罰ゲームという言葉に、オネットは全くピンと来ていない。
ルドはため息を吐いた。
「あなたにはしつけの他に、服装センスを叩き込まないといけませんね」
「余計なお世話だ。それより、俺と世間話に来たのか?」
「少し調子を狂わされたのですよ。”マリオネット”の使い手は安全な位置から敵を仕留めるのが定石のはず。わざわざ姿を現すメリットはないはずですのに」
「必要ない事はやらない。それだけだ」
オネットの言葉に、ルドは眉をひそめた。
「僕は定石を使うほどの相手ではないと言いたいのですか?」
「そう言ったつもりだ。俺を倒すならマルドゥクを連れてくるべきじゃないのか?」
ルドは露骨に顔を歪めた。
「不愉快ですね。残念ながらマルドゥク様はフレイとの遊びを楽しんでいますよ」
ルドは氷の矢の向きを変えた。グローリア王国から、目の前の少年へと。
「先程から随分と生意気な態度を取るのですね。そのように育てた覚えはありませんよ」
「なんだ? 俺が従順な態度を取れば戦わずにすますつもりか?」
言葉とは裏腹に、挑発的な口調だった。
ルドは両肩をワナワナと震わせた。隠す事ができないほどに、怒りに満ちていた。
「力づくで黙らせます。猛省しなさい!」
無数の氷の矢がオネットに襲いかかる。氷の矢を向かわせるだけでは”マリオネット”の糸で絡め取られて、霧散させられるのは目に見えていた。
だから、ルドは冷気を強めた。すべての糸が凍りつくほどに。
ルドの策が実ったのか、氷の矢が霧散させられる事はなかった。すべての矢がオネットに向かう。
しかし、オネットは全く動じない。心底愉快そうに笑っていた。
「効くと思うのか?」
氷の矢は、オネットの身体を貫いているはずだ。しかし、怪我一つしていない。
ルドは一つの可能性に気づいた。
「……人形を使ったのですか」
「惜しいが違う。俺は俺だ」
声は、矢を貫かれたオネットから聞こえている。幻を見ているわけではなさそうだ。
しかし、ルドは自分が幻術にはまっている可能性を否定できなかった。
”マリオネット”に幻を作る力はない。そのはずなのに、さいなまれていた。
「出てきなさい、オネット!」
「俺は出てきている。疑うなら、俺に触れてみるといい」
オネットは無防備に両手を広げた。
ルドは全身を震わせた。言い知れぬ恐怖が精神を蝕む。
ルドはその場を動く事ができなかった。
馬は悲鳴をあげてその場から立てなくなる。
「次はてめぇだ!」
”アイアン”の刃がミカエルの頭上に襲いかかる。無駄のない動作だった。
その刃を、ミカエルは槍で受け止めた。鍛えられた肉体が可能とさせる反応だった。
イアンが苛立たしげに奇声を発する。
「クソが、ぶっ殺してやる!」
再びミカエルに切りかかる。
ミカエルは間合いを取った。リーチは槍の方がある。距離を詰められすぎないように細心の注意を払う。
激しく金属がぶつかりあう。二人とも、常人には信じられないような速さで武器を振るっていた。
マルドゥクが高らかに笑う。
「実に見事! ルド、ここは俺たちに任せてグローリアの娘を仕留めろ。オネットを揺さぶれるだろう。楽しい宴はこれからだ!」
「承りました」
ルドは深々と一礼して、氷の道を再び歩き始める。
彼の標的はグローリア王国。そして、それを守ろうとするマリアだ。
ルドはグローリア王国の海岸にたどり着く。氷の道を歩き終えて人心地が付いた。”コールド”を慣れない方法で使うのは緊張を要していた。
「まったく、海は不便ですね」
ルドは悪態を吐いた。
海岸の砂場は歩きづらく、むせ返るような潮の香りが嫌でも鼻に入る。泳げないルドにとって、海辺は不快な場所でしかない。
「手早く任務を完了しましょうか」
ルドは右手を天に掲げる。暗い空に、無数の氷の矢が召喚される。急速に冷気が押し寄せ、海辺が少しずつ凍っていく。
グローリア王城にどの程度の人間が潜んでいるかは分からないが、全壊させれば関係がない。
マリアはペンダントを握って、ルドと対峙していた。
「あなたたちの好きにさせないわ」
「なんとでもおっしゃいなさない。オネットの泣き顔も見たいものです」
「俺の泣き顔はそんなに貴重か?」
声は後ろから聞こえた。
ルドは心臓が飛び出そうな感覚だったが、悲鳴をあげるのはなんとか堪える。動揺を悟られるのは百害あって一利なし。
平静を装って振り向くと、オネットがいた。暗くて表情は分からないが、星明かりを頼りにすれば辛うじてシルエットが分かる。明らかに礼装ではない。半袖と短パンのようだ。
「……僕に無断で着替えましたね。例の約束はもう守らなくて良いのですね?」
「そうだな。おまえはマルドゥクに、俺がわざと負けるように命令させればいい。おまえのプライドが許せばの話だが」
マリアには意味が分からない会話だ。
しかし、二人の間で約束が交わされた事は理解した。
「もしかして、私が知らない所でまた無茶をしたの?」
「安心してほしい、ルドに負けるつもりはない」
オネットは当然の如く言っていた。
ルドは目を凝らして、オネットの様子を確認する。デカデカとイチゴが描かれている半袖を着ているのが分かる。
「罰ゲームをやらされているのですか?」
「何の事だ?」
罰ゲームという言葉に、オネットは全くピンと来ていない。
ルドはため息を吐いた。
「あなたにはしつけの他に、服装センスを叩き込まないといけませんね」
「余計なお世話だ。それより、俺と世間話に来たのか?」
「少し調子を狂わされたのですよ。”マリオネット”の使い手は安全な位置から敵を仕留めるのが定石のはず。わざわざ姿を現すメリットはないはずですのに」
「必要ない事はやらない。それだけだ」
オネットの言葉に、ルドは眉をひそめた。
「僕は定石を使うほどの相手ではないと言いたいのですか?」
「そう言ったつもりだ。俺を倒すならマルドゥクを連れてくるべきじゃないのか?」
ルドは露骨に顔を歪めた。
「不愉快ですね。残念ながらマルドゥク様はフレイとの遊びを楽しんでいますよ」
ルドは氷の矢の向きを変えた。グローリア王国から、目の前の少年へと。
「先程から随分と生意気な態度を取るのですね。そのように育てた覚えはありませんよ」
「なんだ? 俺が従順な態度を取れば戦わずにすますつもりか?」
言葉とは裏腹に、挑発的な口調だった。
ルドは両肩をワナワナと震わせた。隠す事ができないほどに、怒りに満ちていた。
「力づくで黙らせます。猛省しなさい!」
無数の氷の矢がオネットに襲いかかる。氷の矢を向かわせるだけでは”マリオネット”の糸で絡め取られて、霧散させられるのは目に見えていた。
だから、ルドは冷気を強めた。すべての糸が凍りつくほどに。
ルドの策が実ったのか、氷の矢が霧散させられる事はなかった。すべての矢がオネットに向かう。
しかし、オネットは全く動じない。心底愉快そうに笑っていた。
「効くと思うのか?」
氷の矢は、オネットの身体を貫いているはずだ。しかし、怪我一つしていない。
ルドは一つの可能性に気づいた。
「……人形を使ったのですか」
「惜しいが違う。俺は俺だ」
声は、矢を貫かれたオネットから聞こえている。幻を見ているわけではなさそうだ。
しかし、ルドは自分が幻術にはまっている可能性を否定できなかった。
”マリオネット”に幻を作る力はない。そのはずなのに、さいなまれていた。
「出てきなさい、オネット!」
「俺は出てきている。疑うなら、俺に触れてみるといい」
オネットは無防備に両手を広げた。
ルドは全身を震わせた。言い知れぬ恐怖が精神を蝕む。
ルドはその場を動く事ができなかった。
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