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決戦!
死の世界
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「そっちから来ないなら、こっちから行く」
声は後ろから聞こえた。視線だけ向ければ、オネットが耳元で囁いていた。
「おまえは以前、俺が泣きそうで涙が出ない表情が好きだと言っていたな。今はお望みどおりの顔になっている」
「黙りなさい!」
ルドが振り払おうとする前に、オネットは飛び退いていた。
ルドが無数の矢を放った位置には、氷の塊ができていた。そこにオネットが写し込まれ、目の錯覚により、矢に貫かれるオネットが出来上がっていたのだ。
「飛び退いたという事は、あなたは本物ですね! 偽物なら避ける必要はありませんからね!」
「ご明答。少し移動しただけだがな」
「あなたは殺します! 友達である必要も、所有物である必要もありません。処刑します!」
ルドは殺気を隠す事なく増幅させる。
空にはひとりでに雪雲が集まり、苛烈な吹雪を呼び込む。辺りはまたたく間に白く冷たくなり、波の動きさえも止めていく。死の世界と化していく。
『永久凍土の堕天使』と呼ばれるにふさわしい業だ。
ルドは荒い息をして、恐る恐るオネットの様子を確認した。
「どこにもいませんね」
ルドは胸をなでおろした。
しかし、次の瞬間に大量の雪が舞い散った。
広大な白い結晶が、花咲くように辺りにばらまかれる。
その中心にはオネットと、オネットに抱き寄せられたマリアがいた。
「予め”マリオネット”で周囲を固めて正解だった」
静かな口調であった。
暗闇に目が慣れた今ならハッキリと分かる。
憐れみを込めた視線をルドに送っている。
「おやめなさい、お願いです、もう死んでください!」
「頼まれて死ぬほどお人好しじゃないのは分かっているだろう。俺に憐れみを掛けられるのはそんなに嫌か?」
「あなたは僕にご両親を殺され、僕の奴隷となるはずだったのです。どうして僕を憐れむなんてできるのですか!?」
「分からないのか?」
オネットはまき散らされた雪の上を歩き、ルドに近づく。
ルドは後ずさろうとした。しかし、できなかった。
ルド自身が”マリオネット”の糸に絡め取られていた。
オネットはルドの両肩を掴む。その両手は温かかった。
「おまえが俺を暗殺者として育てたからだろう」
「う、ううう……」
ルドは言葉が出なかった。
レーベン王国からオネットをさらった時には、絶対的な優越があった。物覚えのいいオネットはいい駒として働いた。
しかし、いつしか優越は崩されていった。
オネット自身の才能もある。しかし、オネットはこう答えたのだ。
おまえのおかげだ、と。
「ああ、あああああああ!」
ルドは咆哮とも悲鳴とも区別がつかない声をあげた。
恐怖、嫉妬、絶望、様々な感情が入り混じって言葉にならない。目の前の相手を殴れればどんなに楽か。
「ルド……」
少年の目がまっすぐに、自分を見つめている。両手は血で汚れ、心から暗殺者となったはずなのに、純粋さが失われていない。
「俺を人間として対等に扱ってくれないか? そうすれば、友達のフリくらいやってやる」
「ああ、うう……」
ルドは答えられなかった。足掻く気力もない。ただ、泣きたかった。
オネットは小さくため息を吐いた。
「しばらく寝ろ。言いたい事があれば後で聞いてやる」
ルドは糸で首を締め付けられ、あっけなく失神した。
辺りの雪や氷は、朝の光に照らされながら、ゆっくり溶けていった。
悲しいまでに美しい光を浴びながら、儚く散っていった。
声は後ろから聞こえた。視線だけ向ければ、オネットが耳元で囁いていた。
「おまえは以前、俺が泣きそうで涙が出ない表情が好きだと言っていたな。今はお望みどおりの顔になっている」
「黙りなさい!」
ルドが振り払おうとする前に、オネットは飛び退いていた。
ルドが無数の矢を放った位置には、氷の塊ができていた。そこにオネットが写し込まれ、目の錯覚により、矢に貫かれるオネットが出来上がっていたのだ。
「飛び退いたという事は、あなたは本物ですね! 偽物なら避ける必要はありませんからね!」
「ご明答。少し移動しただけだがな」
「あなたは殺します! 友達である必要も、所有物である必要もありません。処刑します!」
ルドは殺気を隠す事なく増幅させる。
空にはひとりでに雪雲が集まり、苛烈な吹雪を呼び込む。辺りはまたたく間に白く冷たくなり、波の動きさえも止めていく。死の世界と化していく。
『永久凍土の堕天使』と呼ばれるにふさわしい業だ。
ルドは荒い息をして、恐る恐るオネットの様子を確認した。
「どこにもいませんね」
ルドは胸をなでおろした。
しかし、次の瞬間に大量の雪が舞い散った。
広大な白い結晶が、花咲くように辺りにばらまかれる。
その中心にはオネットと、オネットに抱き寄せられたマリアがいた。
「予め”マリオネット”で周囲を固めて正解だった」
静かな口調であった。
暗闇に目が慣れた今ならハッキリと分かる。
憐れみを込めた視線をルドに送っている。
「おやめなさい、お願いです、もう死んでください!」
「頼まれて死ぬほどお人好しじゃないのは分かっているだろう。俺に憐れみを掛けられるのはそんなに嫌か?」
「あなたは僕にご両親を殺され、僕の奴隷となるはずだったのです。どうして僕を憐れむなんてできるのですか!?」
「分からないのか?」
オネットはまき散らされた雪の上を歩き、ルドに近づく。
ルドは後ずさろうとした。しかし、できなかった。
ルド自身が”マリオネット”の糸に絡め取られていた。
オネットはルドの両肩を掴む。その両手は温かかった。
「おまえが俺を暗殺者として育てたからだろう」
「う、ううう……」
ルドは言葉が出なかった。
レーベン王国からオネットをさらった時には、絶対的な優越があった。物覚えのいいオネットはいい駒として働いた。
しかし、いつしか優越は崩されていった。
オネット自身の才能もある。しかし、オネットはこう答えたのだ。
おまえのおかげだ、と。
「ああ、あああああああ!」
ルドは咆哮とも悲鳴とも区別がつかない声をあげた。
恐怖、嫉妬、絶望、様々な感情が入り混じって言葉にならない。目の前の相手を殴れればどんなに楽か。
「ルド……」
少年の目がまっすぐに、自分を見つめている。両手は血で汚れ、心から暗殺者となったはずなのに、純粋さが失われていない。
「俺を人間として対等に扱ってくれないか? そうすれば、友達のフリくらいやってやる」
「ああ、うう……」
ルドは答えられなかった。足掻く気力もない。ただ、泣きたかった。
オネットは小さくため息を吐いた。
「しばらく寝ろ。言いたい事があれば後で聞いてやる」
ルドは糸で首を締め付けられ、あっけなく失神した。
辺りの雪や氷は、朝の光に照らされながら、ゆっくり溶けていった。
悲しいまでに美しい光を浴びながら、儚く散っていった。
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