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第25話 謎の男

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走り続けていたらもう夕暮れになってしまった。

 「もう夜になるな…」

 僕は暗闇が大の嫌いなのでかなり焦っていた。

 そう。実は僕は暗闇が怖いのだ。

 逆に怖くない人なんているの?

 なぜ怖いかって?

 それは何も見えないからだ。

 当たり前だけど暗闇は何も見えない。

 だから怖いのだ。

 何がいるのかも、あるのかもわからない。

 もしかしたら僕の命を狙っている者がすぐ側にいるかもしれない。

 考えただけで恐ろしい。

 それにお化け…

 いるはずないよね?

 ああ、もう日が暮れてしまう。

 ここら辺は夜になると明かりなんてないし、真っ暗になってまう。

 あと野宿なんてしたくない。

 こんな外で寝るとかありえない。

 硬い地面で寝られるはずないし、どうせ魔物に襲われる。

 何より問題は虫だ。

 外には虫がわんさかいる。

 その虫の中でも嫌いなのは蚊だ。

 外なんかで寝たてたらその蚊に刺されてしまう。

 嫌だ。

 野宿なんて死んでも嫌だ。

 どうしようと思っていたのが僕は運に恵まれているのだろう。

 なんと村を発見したのだった。

 今夜は泊めてもらおう。

 そう思い、村にお邪魔した。

 僕は間違いなく馬鹿だった。

 「あ…あの…」

 僕は農作業をしていたおじさんに話しかけた。

 「な!人間だ!人間がいるぞ!」

 農作業していたおじさんは叫んだ。

 しまった…人間の姿のまま話しかけちゃった。

 普通は気づくはずだが、野宿をしたくないという必死な思いからか、すっかり忘れてしまっていた。

 「人間だ!」

 「なんで人間がいるんだ?」

 「女と子供は避難するんだ!」

 「人間の兵隊か?こと村を襲いに来たのか?」

 ぞろぞろと魔人の皆さんが物騒なものを持って集まってきた。

 農作業で使いそうな鍬、鉄のスコップ、ピッチフォークを警戒するように僕に向けた。

 「あの皆さん…落ち着いてください…僕は危害を加える気はありません」

 僕は精一杯の無害な様を表す為に俗にいう降参のポーズをした。

 手を挙げてアピールする。

 僕は危害を加えるつもりなど微塵も思っていない。

 「騙されるな!こいつは村を襲う気だ!」

 「殺せ!それが1番いい!」

 「見たところ弱そうだし全員でかかればいける!」

 おっと。
 
 やばいな。

 いきなりピンチだ。

 どうやら村の皆さんは僕を殺る気満々らしい。

 「信じてくださいよ……」

 僕の言葉など信じてもらえるはずもなく魔人の人達は僕に武器化した農具を向ける。

 「やれやれ一体どうしたんだい?」

 村の人達の後ろから現れた男。

 中年ぐらいだろうか?

 ボサボサの髪、剃り残しの髭。

 そして何より気怠そうな表情。

 ん?

 まて。

 もしかして。

 姿を見る限り人間ではないか?

 魔人と人間の見分け方。

 たしか、フカシギに教えてもらったことがある。

 1番簡単なのは耳。

 尖っていたら魔人だ。

 だがその男は人間の耳をしていた。

 「え?あなたは人間ですか?」

 僕はその人に問う。

 「ああ…僕はまごうことなく人間さ」

 僕は驚いた。

 初めて魔人と共存する人間を見た。

 なぜ?

 なんで?

 「なんで、人間のあなたが村にいるんですか?」

 僕は聞きたい気持ちを抑えられず聞いてしまった。

 「逆に僕からしたら君がなんで1人でこの村を訪ねたのかを、知りたいね」

 それもそうだ。

 「おい!こんなやつの話なんか聞かなくていい!早く殺してしまえ」

 村の魔人は叫ぶ。

 「まあ、待てよ…見た感じ敵とは限らないよ、物事を見た目や偏見だけで決めちゃいけないからね」

 その人間の中年の男は言ってくれた。

 「だが!アイツの腰には剣がある!兵隊の可能性が高い!」

 村のおじさん達は敵意を緩めない。

 「たしかに怪しい部分もある…だけど同じ人間として一応言い分だけは聞いてあげようよ」
 「……まあ、いいだろう!」
 「ほら、君に言い訳のチャンスを作ってあげたよ、このチャンスにかけてみな」

 中年の男は僕にチャンスを作ってくれた。 

 僕は必死に考える。

 敵意を無いことをどうやって示すか…

 「僕は敵じゃありません!僕は人間ですが、魔人でもあります!信じてください!」

 僕のフルで考えた結果の言葉だ。

 我ながら恥ずかしいぐらいになんの説得力もない言葉だ。

 終わった……

 僕は心の中でそう思った。

 「ハハッ!」

 謎の男は笑う。

 「君、面白いね。こんな馬鹿な奴が兵隊だったら、人間の兵も大したことなくなるな。なあ、皆んなこんな奴が強い兵だと思う?」

 「いや、思わないな」

 「うーんまあ、仮に襲ってきても大丈夫そうだな」

 「信じるわけではないがな」

皆んななんとか納得してくれたようだ。   

 「良かったね、少年よ。君の馬鹿のおかげで少しはマシに見られたね」

 中年の男はニヤリとしながら言う。

 「ギャー!」

 叫び声が聞こえた。

 「どうしたんだ!」

 僕を敵対していた人が声かけた。

 他の村の人が慌てて走ってきた。

 「大変だ、ドラゴンが襲って来た!」

 


  

 

 

 
 

 
 
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