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第26話 一撃

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村の奥へと行くとドラゴンと呼ばれる魔物がこちらへ空から飛んでくるのが見えた。

 その姿は赤く、まるで燃えているような紅蓮色のドラゴンだった。

 「なぜ、ドラゴンが…」

 「とりあえず避難しないと!」

 「男達は戦闘の準備だ!」

 村の男達はドラゴンを迎え撃つ体制をとった。

 まてよ…

 これはチャンスだ。

 ここでドラゴンを蹴散らしたら僕の評価は上がるに違いない。

 よし。ドラゴン退治といこうか。

 ドラゴンがとうとう僕らの前へと立ちはだかった。

 大きい。

 実際に対面すると、当たり前だが遠くで見ていたより大きく感じる。

 「こいつは、フレイムドラゴンだ」

 村の男の1人がそう言った。

 「火系のドラゴンか」

 別の村の男が言った。

 「なんとか…全員で戦うしかないな」

 また別の男が覚悟を決めたように言う。

 さあ、ここで僕の出番だ。

 「僕が…」
 「いいよ、皆んなは下がってて。僕がやるよ」

 僕が言おうとした言葉を謎男に奪われた。

 は?

 この謎の男はドラゴンを1人でやると言ったのだ。

 「大丈夫かい?あんた1人で無茶だ!」

 村の男は謎男に言った。

 「大丈夫だよ、僕があのドラゴンを倒してあげる」

 そう言って僕の元へと駆け寄った。

 「君の剣、少し貸してもらうよ」
 「は?え……?」

 謎男はそう言って僕の返答も聞かずに僕の腰にある剣をとってしまった。

 「この剣は…見たところ魔剣か…いいね」

 謎男はフレイムドラゴンの前へと立つ。

 全くもって、ドラゴンに恐れていないのだ。

 「久々だな…剣を使うのは……」

 謎男は剣を抜く。

 その瞬間魔力を解放する。

 一言でいえば、すさまじい魔力だった。

 あの火炎の勇者アルスに劣らないぐらいの強力な魔力。

 フレイムドラゴンが口を開く。

 その口の中から大きな火炎玉が生成される。

 あれを食らったらひとたまりもない。

 だが、謎男はいたって冷静だった。

 「僕の村を火祭りにしないでくれ」

 一瞬だった。

 瞬きをしたら危なく見逃してしまう速度だ。

 謎男はフレイムドラゴンに斬りかかった。

 だった一撃。

 されど一撃。

 その一撃はフレイムドラゴンの顔と胴体を分けるほどの威力だった。

 そう。

 一撃でフレイムドラゴンを倒したのだ。

 あまりにもあっけなかった。

 僕は謎男の強さに驚いた。

 「剣、ありがとう。なかなかいい剣だね」

 そう言って僕にかけ寄り剣を渡してきた。

 この一瞬を理解するのに少し時間がかかった。

 余裕でドラゴンを倒してみせた謎男。

 「あ…あなたは一体…なにも何者なんですか?」

 僕は驚いたあまりに少し言葉を詰まらせながら聞いた。

 「ん?僕かい?僕はしがない元隊長だよ。名前はパドレって言うんだよろしく」

 そうニヤリとしながらパドレと名乗る男は言ったのだった。



 
 

 

 

 
 

 

 
 
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