魔法学園最弱の俺が英雄に

結城 もみじ

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第四話 魔法と精霊

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 「さて。今日も朝練がんばりますかー」

 カケルは今日も朝練をしている。
 街にまだ朝霧が漂う中、ランニングをし、木剣で型の素振りをしているのだ。
 でも、最近は一人仲間が増えた。

 「はい。カケルさん。タオルです汗拭きに使ってください」

 お世話係のミーニァさんだ。
 この前の一件の後、性格がコロッと丸くなりカケルにベッタリくっつくようになったのだ。
 心を開いてくれたのは良かったが、ここまで開いてくれるとは予想外だったのだ。正直怖いぐらいだ。

 「ミーニァさんありがと。それより朝早いね。朝練に付き合わなくて良いのに」

 「いえいえ。私が好きでやっているので、構わないでください。それより大会が明後日ですが、大丈夫なのですか?」

 ミーニァさんが言った大丈夫の意味は、最下位なのに大会に出るってことだ。
 まあ自分から告白したのだから仕方ないであろう。
 自分のことを打ち明けた後ミーニァさんはとっても悲しそうに、こちらを見ていた。

 恐らく、自分がカケルに対して取っていた態度に申し訳なさを感じていたのだろう。
 冷たい態度を取っているときにも、カケルは日々努力しているのに私はなんなんだ。差別から逃げてばっかりで、結局私は自分の力では何にも出来ない人だと語った。

 「そんなに気にしないでください。まあお互い様ですから」
 
 カケルはお互い苦労しているという意味でお互い様と言ったのだ。
 
 「それにしても、このタオル薔薇の香りがしますね」
 
 カケルがタオルの香りに癒されていると。

 「あ!分かります?昨日の夜に準備して置いたんですよ。カケルさんのた・め・に♪」

 その時ミーニァさんの頬が微かにピンク色に染まったがあえて口出しはしない。

 「ありがとう。でも、本当に無理はしないで下さい」

 「ふふっ。やっぱりお優しいのですね。私はそんな貴方が……」

 「最後の方なんか言った?」

 「いえ。何でも。少しは気付いてほしいです。カケルさん……」

 会話が終わると、カケルは朝練を止め、学園に行く準備をした。
 朝ご飯はもちろん、ミーニァさんの手作りだ。これがなんと言ってもうまいのだ。
 今日の朝ご飯は、フランスパン風のパンとトマトスープチーズ入りだ。
 
 このパンをチーズの入ったトマトスープに浸して食べる。これがもの凄く絶品なのだ。
 お店で出せるレベルだとカケルは思った。

 カケルはムウと考え込んだ。
 もしコレがお店に出たら……僕の分が無くなってしまうじゃないか!?それはダメだ。
 難しい顔をしながらご飯を食べてるとミーニァさんが微笑んだ。

 「そんな難しい顔をしながら食べないでくださいよ~。楽しく、嬉しく食べてくれないとこちらが少し不安になってしまいます。なにか不満な点でもありましたか?」

 カケルは口に含んだ物を飲み込むと、「いえ、味はとっても美味しいです。でも、ミーニァさんの料理がお店に出すと考えたら、ちょっと独占したくなってしまいました。すみません心配させてしまって」と言った。

 ミーニァさんはその後嬉しそうにご飯を食べていった。その姿を見てカケルもその笑顔につられて頬が緩んだ。
 ご飯を食べ終えると、カケルは学園に向かい、ミーニァさんはカケルの部屋を片付けると王女様の屋敷へ向かうと言っていた。
 前から不思議に思っていたミーニァさんの行動が一つ分かっただけで、なんかカケルはとっても嬉しかった。

 学園に着くと相変わらず蔑む目でこちらを見ている。まあコレにも慣れたもんだ。
 そしてセレスさんとお話しする。これがカケルの毎日となっている。
 
 「おはようございます。もう少しで闘技大会ですね。カケルさんの方は順調ですか?」
 
 セレスさんは無邪気に笑いながら話しかけてきた。
 おいおーい。そろそろ周りの視線に気付いてくれよー。殺気が、殺気がァァ。

 「ま、まあ順調ですね。セレスさんこそ順調なんですか?」

 ここは単純に返した方が良いと本能的に体が言っていた。

 「私は順調ですよ。優勝するつもりですから。フンッ」

 セレスさんは胸を張って自信満々にそう言った。
 こう見てセレスさんは学年三位で今回の大会の優勝候補なのだ。ペアも二年生三位で戦闘コンビネーションではペアの中ではズバ抜けている。

 学年三位でしかも学園アイドル的存在の彼女と、カケルが話していると周りの人が不快な思いをするのは当然と言っても良いだろう。そして耐えきれなくなったものもいた。

 「セレスさん。そんな最弱と話すより我々上位軍とお話しましょう。そんなゴミみたいな奴はほっとけば良いのですよ」

 こいつは学年五位のグラーツだ。このクラス一番力の差を気にする奴で、よっぽどカケルと話すのが気にくわなかったらしい。声には怒りが込められてた感じでもあった。
 
 そんな事を言われたセレスさんの顔を見ると、大変不機嫌顔だった。いつもみたいな可愛らしい顔とは思えないぐらい、嫌な表情をしていた。
 セレスさんは嫌な顔から真面目な顔になった。
 
 「そうですね。カケルさんは確かに最弱です。貴方より弱いです。ですが、カケルさんは陰で貴方達以上に努力をしています。貴方みたいに努力をしてない人より、私は努力をしている人の方と話す方が自分の為になると考えたのでお話をしているのです。なので貴方達とはお話しません。」

 最後の方は突き放すように言い放った。
 グラーツは拳を握り締めなが「俺はそんなの認めませんから。あなたはこっち来るべきだと」言っていた。よっぽど悔しかったかのだろう。こちらを睨んだ後、グラーツは上位軍の所へ戻っていった。

 「すみません。なんか巻き込んでしまって」

 セレスさんは謝罪すると、カケルは手と首を右左に振った。
 逆に助かったのだから、謝罪はやめて欲しいと言いセレスさんは顔を上げた。

 そしてこの空気を切り裂くかのように、チャイムが鳴った。
 ホームルームが終えると、一時間目は魔法に関する授業だ。

 一年生が使える魔法は初級魔法しか教えてないらしい。一部の貴族は家で魔法師を雇っており、中級、上級魔法も使える人も居るとか。
 
 闘技大会では魔法使用が許可されており、自分が出せる魔法なら何でも良いとなっている。ただし、殺傷力がある魔法は禁じられており使った場合、不戦敗と停学処分が下される。

 授業内容は、魔法と精霊の関係性のことだった。

 この世界の魔法は生まれた頃に付く精霊の力で出しており、精霊が多ければ多いほど魔力が高くなる仕組みだ。魔力が無くなれば精霊が自然と集まり回復するのだ。
 だが精霊のおかげで魔法が使えているのに、皆そのことを忘れており、あたかも自分が出していると勘違いをしている。
 頭の中でイメージしたことが精霊に伝わり、火を出したり、水を出したりする事が出来る。
 つまり大切なことはイメージする事なのだ。

 また、魔力の回復は自然回復の他に薬で回復することもできる。世間では魔力薬と言われている。
 精霊というものは、人以外に植物、動物にも付いており、魔法薬は薬草に付いている精霊を逃がさずに煮詰め、絞ると出てくる汁に精霊の力が含まれて、それが魔法薬となるのだ。

 その後も色々と魔法と精霊の関係性の話は続いた。
 一時間目が終えるとその後は全て闘技大会に向けて訓練だった。皆この時間に作戦の行動確認や、使う魔法の最終チェックするのだ。
 翌日は健康管理や気持ちを落ち着けるなどで、闘技大会に向けて休む日とされている。

 カケルはミア先輩とアイさんと合流し、闘技場へ向かった。

 同時刻。
 エリン王女の屋敷では――

 「あら?ミーニァ最近気分が良いけど、何かあったの?」
 
 エリン王女は我が子を見守る母親のような目でミーニァを見つめた。
 ミーニァさんは少し頬を赤らめながら語った。

 「じ、実はこの前カケルさんが私に…………と言う事がありまして。それがとっても嬉しくて」

 ミーニァさんはカケルと起こった事を嬉しそうに話した。
 その事を聞いたエリン王女は頬を緩め心の中で「やっぱり、あの方の側に置いた効果なのかー。いいなー私も優しくして欲しいなー」と思っていた。

 「それはとっても良かったですね。まあ頑張りなさい。色々と……」

 「はい!頑張ります!」

 ミーニァさんは元気良く返事をすると、獣耳が可愛くペコペコ弾んでいた。
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