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第二章 銀色の聖女
第三話
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ユニコーンの角を手に入れた二人はレント領の冒険者協会を訪れていた。
「まさか、本当にユニコーンの角を手に入れるなんて」
「出来ない依頼を受けるつもりはありませんよ。間違いなく本物ですが、しっかりと鑑定までお願いしますね」
「承知致しました。ですが、見つけるだけでも大変なユニコーンをよく……。さすがは若手筆頭といったところでしょうか?」
以前ジークとブリンクがバジリスクを納品するために訪ねた冒険者協会とは別の場所にあたるレント領支部。二人はそこをメインに活動していた。
「僕は大したことはしていませんよ。彼の導きによるものです」
「あなたも充分規格外だと思うのですが……。ラギアスの悪童、良くも悪くも有名ですからね」
ジークの名前が冒険者協会を中心に広まったのは三年前。バジリスクの納品時に協会職員と揉めたことがきっかけになる。
「……彼は口が悪いですから色々と誤解されがちですが、性根は誰よりも真っ直ぐですよ」
「そうですね、ある意味では誰に対しても平等ですからね。……今でもバジリスクの件は有名です」
バジリスクに限らず、以降も討伐難易度の高い魔物の納品は続いた。依頼の有無に関わらず凶悪な魔物から希少な魔物と幅広く討伐報告が続いたため、毎回のように冒険者協会は騒ぎになった。
「いちいち喚くな。ここでは雑草集めしかしていないのか?」
態度の悪さも相変わらずで職員や冒険者と度々衝突していたが、圧倒的な実力から周囲を黙らせていた。
「他の貴族ですと無理難題を仰る方が一定数いるのも事実ですが、彼の場合立場は関係なさそうですからね」
度々冒険者協会へ厄介な依頼や要望をする貴族が訪れることがある。偶々ジークと鉢合わせた時は普段と変わらない不遜な態度を取ったことから一悶着あった。
「貴様、私を愚弄するか⁉︎ グフィ家が黙ってはいないぞ!」
「面白い。ラギアス家とやり合うつもりならそれなりの家なんだろうな」
悪名轟くラギアス家となれば並大抵の貴族では手出しが出来ず、大物を刈り続けているジークの存在が拍車をかけていた。悪質な貴族を寄せ付けない門番のような存在にもなっていた。
態度の悪さは目に余るが、協会や他の冒険者へ不利益をもたらしたことは一度もない。中には命を救われた冒険者もいるくらいだ。
人によって評価が大きく異なり冒険者協会としても扱いが難しい。たが、実力は本物で人格面や協調性が問題無ければ最年少でAランク到達も不可能ではない。
「当協会としてはAランクへ推薦する支部長もいるくらいなのですが……」
「仕方ありませんよ。本人にその気がありませんからね」
浩人が冒険者登録をしたのは地位や名誉が欲しかった訳ではない。
危険な魔物の討伐を続けたのは戦闘能力の向上や資金集めが目的で、冒険者協会へ優先して素材を納品したのは恩を売るためである。
ゲーム通りなら将来取り潰しが決まっているラギアス家。下手をすれば原作開始前に一家諸共処分される可能性もある。
家、人脈、金の全てを当てにすることが出来ないのなら、冒険者として資金を稼ぎ、有事の際は恩を理由に協力を迫る。誰かのためではなく自分のために。打算的な行動に過ぎなかった。
Aランク冒険者を目指さないのも不要なことに時間を割きたくないだけ。
何のために行動しているのかが周囲には分からず、噂だけが一人歩きする。
「それでもお二人は最年少でBランク昇格の実績もありますから。指名依頼が多く入っていますよ」
「僕一人ではもっと時間がかかったと思いますよ。……それに目標がちゃんとありますから」
二人で冒険者活動をするつもりはなかったが、何かと理由を付けてルークが付いて来るようになった。初めは拒絶をしていたが折れる様子がないため諦めた。
――最近は拒むことをやめて様子を窺っている。とある疑念が浮上したからだ。
「ルークさんは騎士団を目指されているんですよね?」
「はい、ですのでいつまでも冒険者を続けることはできません」
「……そうですよね。残念ではありますが騎士も立派なお仕事ですからね」
ルークの夢は今も昔も変わりなく騎士になることである。憧れである父の背中を今でも追いかけていた。
「……おい、何をもたもたしている?」
「噂をすれば……誰かさんの話をしてたところさ」
いつも通りの近寄り難い雰囲気をしたジークが会話へ加わる。
「ふん、騎士はやめて吟遊詩人にでもなったらどうだ?」
「それはいいね! 国中へ君の武勇を語るのも悪くない。もちろん君も一緒にね!」
「……」
今回のユニコーンの角は指名依頼によるものだった。二人の噂を耳にした貴族が依頼した形になる。
面倒な依頼は基本的に拒否しているが、ユニコーンについては原作知識から生息地を把握していた。楽に資金を調達出来るなら断る理由もない。
「それとも君の本を書くのはどうだろうか? 伝記を遺して後世に伝えるのもロマンがあると思わないかい?」
「……なら貴様の墓標を遺してやろうか?」
ユニコーンと同じで原作知識を活用し多くの依頼をこなした。本人が意図しないところで噂が広がり、結果的に冒険者協会中心に認知されるようになる。――自ずとルークも一緒に。
「遠慮するよ。その予定はしばらく先かな」
「……お二人は本当に仲が良さそうですね」
「貴様は頭が悪いようだがな」
(似ているよな……やっぱり)
原作で登場していたパーティキャラの一人。騎士団最年少で入団を果たした『フォンセル』。その人物とルークは瓜二つだった。
「まさか、本当にユニコーンの角を手に入れるなんて」
「出来ない依頼を受けるつもりはありませんよ。間違いなく本物ですが、しっかりと鑑定までお願いしますね」
「承知致しました。ですが、見つけるだけでも大変なユニコーンをよく……。さすがは若手筆頭といったところでしょうか?」
以前ジークとブリンクがバジリスクを納品するために訪ねた冒険者協会とは別の場所にあたるレント領支部。二人はそこをメインに活動していた。
「僕は大したことはしていませんよ。彼の導きによるものです」
「あなたも充分規格外だと思うのですが……。ラギアスの悪童、良くも悪くも有名ですからね」
ジークの名前が冒険者協会を中心に広まったのは三年前。バジリスクの納品時に協会職員と揉めたことがきっかけになる。
「……彼は口が悪いですから色々と誤解されがちですが、性根は誰よりも真っ直ぐですよ」
「そうですね、ある意味では誰に対しても平等ですからね。……今でもバジリスクの件は有名です」
バジリスクに限らず、以降も討伐難易度の高い魔物の納品は続いた。依頼の有無に関わらず凶悪な魔物から希少な魔物と幅広く討伐報告が続いたため、毎回のように冒険者協会は騒ぎになった。
「いちいち喚くな。ここでは雑草集めしかしていないのか?」
態度の悪さも相変わらずで職員や冒険者と度々衝突していたが、圧倒的な実力から周囲を黙らせていた。
「他の貴族ですと無理難題を仰る方が一定数いるのも事実ですが、彼の場合立場は関係なさそうですからね」
度々冒険者協会へ厄介な依頼や要望をする貴族が訪れることがある。偶々ジークと鉢合わせた時は普段と変わらない不遜な態度を取ったことから一悶着あった。
「貴様、私を愚弄するか⁉︎ グフィ家が黙ってはいないぞ!」
「面白い。ラギアス家とやり合うつもりならそれなりの家なんだろうな」
悪名轟くラギアス家となれば並大抵の貴族では手出しが出来ず、大物を刈り続けているジークの存在が拍車をかけていた。悪質な貴族を寄せ付けない門番のような存在にもなっていた。
態度の悪さは目に余るが、協会や他の冒険者へ不利益をもたらしたことは一度もない。中には命を救われた冒険者もいるくらいだ。
人によって評価が大きく異なり冒険者協会としても扱いが難しい。たが、実力は本物で人格面や協調性が問題無ければ最年少でAランク到達も不可能ではない。
「当協会としてはAランクへ推薦する支部長もいるくらいなのですが……」
「仕方ありませんよ。本人にその気がありませんからね」
浩人が冒険者登録をしたのは地位や名誉が欲しかった訳ではない。
危険な魔物の討伐を続けたのは戦闘能力の向上や資金集めが目的で、冒険者協会へ優先して素材を納品したのは恩を売るためである。
ゲーム通りなら将来取り潰しが決まっているラギアス家。下手をすれば原作開始前に一家諸共処分される可能性もある。
家、人脈、金の全てを当てにすることが出来ないのなら、冒険者として資金を稼ぎ、有事の際は恩を理由に協力を迫る。誰かのためではなく自分のために。打算的な行動に過ぎなかった。
Aランク冒険者を目指さないのも不要なことに時間を割きたくないだけ。
何のために行動しているのかが周囲には分からず、噂だけが一人歩きする。
「それでもお二人は最年少でBランク昇格の実績もありますから。指名依頼が多く入っていますよ」
「僕一人ではもっと時間がかかったと思いますよ。……それに目標がちゃんとありますから」
二人で冒険者活動をするつもりはなかったが、何かと理由を付けてルークが付いて来るようになった。初めは拒絶をしていたが折れる様子がないため諦めた。
――最近は拒むことをやめて様子を窺っている。とある疑念が浮上したからだ。
「ルークさんは騎士団を目指されているんですよね?」
「はい、ですのでいつまでも冒険者を続けることはできません」
「……そうですよね。残念ではありますが騎士も立派なお仕事ですからね」
ルークの夢は今も昔も変わりなく騎士になることである。憧れである父の背中を今でも追いかけていた。
「……おい、何をもたもたしている?」
「噂をすれば……誰かさんの話をしてたところさ」
いつも通りの近寄り難い雰囲気をしたジークが会話へ加わる。
「ふん、騎士はやめて吟遊詩人にでもなったらどうだ?」
「それはいいね! 国中へ君の武勇を語るのも悪くない。もちろん君も一緒にね!」
「……」
今回のユニコーンの角は指名依頼によるものだった。二人の噂を耳にした貴族が依頼した形になる。
面倒な依頼は基本的に拒否しているが、ユニコーンについては原作知識から生息地を把握していた。楽に資金を調達出来るなら断る理由もない。
「それとも君の本を書くのはどうだろうか? 伝記を遺して後世に伝えるのもロマンがあると思わないかい?」
「……なら貴様の墓標を遺してやろうか?」
ユニコーンと同じで原作知識を活用し多くの依頼をこなした。本人が意図しないところで噂が広がり、結果的に冒険者協会中心に認知されるようになる。――自ずとルークも一緒に。
「遠慮するよ。その予定はしばらく先かな」
「……お二人は本当に仲が良さそうですね」
「貴様は頭が悪いようだがな」
(似ているよな……やっぱり)
原作で登場していたパーティキャラの一人。騎士団最年少で入団を果たした『フォンセル』。その人物とルークは瓜二つだった。
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