21 / 68
第3章 ゆうしゃのしるしを巡る冒険
第21話 秘密の地図とゆうしゃのしるし[9]
しおりを挟む
「この“まわるかげ”って……」
なつみはくるりと円の外に回り込み、回転する影をじっと見つめた。
「……お姉ちゃんと、ここで遊んだことある。小さいころ、ふたりで乗って、くるくる回ってさ。降りるとき、すっごくふらふらになって、ふたりして転んで笑ったの」
その思い出は、ずっと心の奥にしまわれていた。
だけど、影がまわるのを見ていたら、不意にその記憶がよみがえってきた。
「“影も、思い出も、回りつづけてるよ”って、お姉ちゃん、そんなこと言ってた気がする……」
そらたは遊具にそっと手を置きながら言った。
「……もしかして、その“まわるかげ”が、“しるし”だったりする?」
「……うん、きっと。だって……」
なつみは回転遊具の下、金属の隙間に指を伸ばした。
そこに、小さな銀色の缶がはさまっていた。
そっと取り出すと、軽い金属音がして、そらたが息をのんだ。
缶の中には、メモが一枚入っていた。
古びた紙には、細い文字でこう書かれていた。
【“ゆうしゃ”は、つまずいても、また立ち上がるんだよ】
その言葉を見た瞬間、なつみの胸に、ぐっと熱いものがこみ上げてきた。
「……わたし、思い出した。あのとき、回ってる途中で転んで泣いちゃって……“痛いよ、お姉ちゃん”って言ったら」
「“だいじょうぶ。あなたは“ゆうしゃ”だから、また立ち上がれるよ”って――」
「……そう、言ってくれたんだ」
なつみの声が、かすかに震えていた。
そらたは、そんななつみの横顔を静かに見つめた。
「なっちゃん、やっぱり、ゆうしゃって……強いんだね」
「……ちがうよ」
なつみは、ゆっくり首を振った。
「ゆうしゃってね、強いんじゃないの。……痛くても、怖くても、泣いても、ちゃんと立ち上がれる。そんなふうに、前に進もうって思える……そういう心のことなんだと思う」
そらたは、なつみの言葉に静かに頷いた。
「それが……ゆうしゃの“しるし”なんだね」
「……うん」
そのとき、団地のどこかで時計のチャイムが鳴った。
ふたりの影が、まだかすかに残る夕陽のなかで、遊具のまわりに重なっていた。
なつみは、そっとその影に手を重ねた。
「ありがとう、お姉ちゃん。わたし、ちゃんと受け取ってるから。しるしも、思い出も……勇気も」
ふたりは、しばらく黙って空を見上げていた。
遠くでカラスの鳴き声が響く。空には、もう一番星の隣に、小さな星がひとつ増えていた。
「そらた」
「うん?」
「……ゆうしゃって、やっぱりひとりじゃなれないんだね。わたし、そう思う」
そらたは少し驚いたように目を見開いたが、すぐにふっとやさしく笑った。
「ぼくも、まほうつかいって、そういうものかもって思いはじめてた」
なつみはそっとそらたの手を握った。
その手はあたたかくて、夕暮れの光よりもやさしかった。
そしてふたりはまた、次の“しるし”を探して歩き出した。
まわるかげの中に残された思い出とともに――。
なつみはくるりと円の外に回り込み、回転する影をじっと見つめた。
「……お姉ちゃんと、ここで遊んだことある。小さいころ、ふたりで乗って、くるくる回ってさ。降りるとき、すっごくふらふらになって、ふたりして転んで笑ったの」
その思い出は、ずっと心の奥にしまわれていた。
だけど、影がまわるのを見ていたら、不意にその記憶がよみがえってきた。
「“影も、思い出も、回りつづけてるよ”って、お姉ちゃん、そんなこと言ってた気がする……」
そらたは遊具にそっと手を置きながら言った。
「……もしかして、その“まわるかげ”が、“しるし”だったりする?」
「……うん、きっと。だって……」
なつみは回転遊具の下、金属の隙間に指を伸ばした。
そこに、小さな銀色の缶がはさまっていた。
そっと取り出すと、軽い金属音がして、そらたが息をのんだ。
缶の中には、メモが一枚入っていた。
古びた紙には、細い文字でこう書かれていた。
【“ゆうしゃ”は、つまずいても、また立ち上がるんだよ】
その言葉を見た瞬間、なつみの胸に、ぐっと熱いものがこみ上げてきた。
「……わたし、思い出した。あのとき、回ってる途中で転んで泣いちゃって……“痛いよ、お姉ちゃん”って言ったら」
「“だいじょうぶ。あなたは“ゆうしゃ”だから、また立ち上がれるよ”って――」
「……そう、言ってくれたんだ」
なつみの声が、かすかに震えていた。
そらたは、そんななつみの横顔を静かに見つめた。
「なっちゃん、やっぱり、ゆうしゃって……強いんだね」
「……ちがうよ」
なつみは、ゆっくり首を振った。
「ゆうしゃってね、強いんじゃないの。……痛くても、怖くても、泣いても、ちゃんと立ち上がれる。そんなふうに、前に進もうって思える……そういう心のことなんだと思う」
そらたは、なつみの言葉に静かに頷いた。
「それが……ゆうしゃの“しるし”なんだね」
「……うん」
そのとき、団地のどこかで時計のチャイムが鳴った。
ふたりの影が、まだかすかに残る夕陽のなかで、遊具のまわりに重なっていた。
なつみは、そっとその影に手を重ねた。
「ありがとう、お姉ちゃん。わたし、ちゃんと受け取ってるから。しるしも、思い出も……勇気も」
ふたりは、しばらく黙って空を見上げていた。
遠くでカラスの鳴き声が響く。空には、もう一番星の隣に、小さな星がひとつ増えていた。
「そらた」
「うん?」
「……ゆうしゃって、やっぱりひとりじゃなれないんだね。わたし、そう思う」
そらたは少し驚いたように目を見開いたが、すぐにふっとやさしく笑った。
「ぼくも、まほうつかいって、そういうものかもって思いはじめてた」
なつみはそっとそらたの手を握った。
その手はあたたかくて、夕暮れの光よりもやさしかった。
そしてふたりはまた、次の“しるし”を探して歩き出した。
まわるかげの中に残された思い出とともに――。
0
あなたにおすすめの小説
君は恋人、でもまだ家族じゃない
山田森湖
恋愛
あらすじ
同棲して3年。
毎朝コーヒーを淹れて、彼の寝ぼけた声に微笑んで、
一緒に暮らす当たり前の幸せを噛みしめる——そのはずだった。
彼女は彼を愛している。
彼も自分を愛してくれていると信じている。
それでも、胸の奥には消えない不安がある。
「私たちは、このまま“恋人”で止まってしまうの?」
結婚の話になると、彼はいつも曖昧に笑ってごまかす。
最初は理由をつけていたのに、今では何も言わなくなった。
周囲の友人は次々と結婚し、家族を持ち始めている。
幸せそうな写真を見るたび、彼女の心には
“言えない言葉”だけが増えていく。
愛している。
でも、それだけでは前に進めない。
同棲という甘い日常の裏で、
少しずつ、確かにズレ始めているふたりの未来。
このまま時間に流されるだけの恋なのか、
それとも、家族へと歩き出せる恋なのか——。
彼の寝息を聞きながら、
彼女は初めて「涙が出そうな夜」を迎えていた。
幼き改革者、皇孫降臨 〜三歳にして朝廷を震わせる〜
由香
キャラ文芸
瑞栄王朝の皇孫・凌曜は、わずか三歳。
泣かず、騒がず、ただ静かに周囲を見つめる幼子だった。
しかしその「無邪気な疑問」は、後宮の不正を暴き、腐敗した朝廷を揺るがしていく。
皇帝である祖父の絶対的な溺愛と後ろ盾のもと、血を流すことなく失脚者を生み、国の歪みを正していく凌曜。
やがて反改革派の最後の抵抗を越え、彼は“決める者”ではなく、“問い続ける存在”として朝廷に立つ。
これは、剣も権謀も持たぬ幼き改革者が、「なぜ?」という一言で国を変えていく物語。
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下の後宮薬膳茶
菱沼あゆ
キャラ文芸
冷徹非道と噂の皇帝陛下のもとに、これまた悪しき評判しかない異国の王女、琳玲がやってきた。
琳玲は皇后の位は与えられたが、離宮に閉じ込められる。
それぞれの思惑がある離宮の女官や侍女たちは、怪しい薬草で皇帝陛下たちを翻弄する琳玲を観察――。
悪徳公主と冷徹皇帝陛下と女官たちの日々は今日も騒がしい。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
白苑後宮の薬膳女官
絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。
ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。
薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。
静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる