ゆうしゃの夏、まほうつかいの空

えんびあゆ

文字の大きさ
23 / 68
第3章 ゆうしゃのしるしを巡る冒険

第23話 秘密の地図とゆうしゃのしるし[11]

しおりを挟む
「なっちゃんにとって、お姉ちゃんはどんな人だった?」

その問いに、なつみはすこし考えたあと、ぽつりと答えた。

「……やさしかったよ。やさしくて、つよくて、わたしのこと、ぜんぶわかってるみたいだった」
「うん」
「でもね、最後のほう、わたし、あんまりお姉ちゃんと話してなかったの」

風が、すこしだけ強くなる。
なつみのポニーテールがふわりと揺れる。

「……わたし、こわかったんだ。
お姉ちゃんがいなくなっちゃうかもしれないって、うすうす気づいてたから。
だから、あんまり目を見て話せなかったし、遊ぼうって言えなかった」

そらたはなにも言わなかった。
ただ、なつみの手の近くで、そっと草を握って、目線を下げた。

「この丘も、最後に来たの、たぶん二年前。お姉ちゃんが病院に行く前の日。
“来年もまた来ようね”って、そう言ってくれたけど……来れなかった」

なつみは、ポケットから地図を取り出す。
その紙の隅に、小さく「おもいでの ひかり」と書かれている場所――ちょうどこの丘に重なっていた。

「ここに、なにか残ってる気がするんだ」

なつみがそう言って、草のあいだにしゃがみ込む。

「わたしとお姉ちゃんで、なにか埋めたような……そんな気がするの」
「手伝うよ」

そらたもしゃがんで、ふたりで草をかき分けながら探しはじめた。

数分間の沈黙。
虫の音と、夕暮れの風の音だけが、ふたりの耳に届く。

「……あっ」

なつみが声をあげた。
草の下、少しだけ盛り上がった土の中に、小さな石が半分だけ埋まっていた。

「これ、なにかの目印かも」

そらたがそっと石をどけると、そこには小さな缶が埋められていた。
錆びているけれど、ちゃんとふたがされている。
なつみがそれを両手で持ち上げ、そっと開ける。

中から出てきたのは、一枚の絵だった。

色鉛筆で描かれた、ふたりの女の子――なつみと、ほのか。
そして、もう一枚、小さな折りたたまれたメモ。

【なつみへ
またふたりでこの丘に来たら、
空を見上げて笑ってください。
そのとき、わたしもきっと、そらで笑ってます。】

――お姉ちゃんの字だった。

「……お姉ちゃん……」

なつみの目から、涙がすっとこぼれた。
だけどその顔は、少しだけ、やさしく笑っていた。

そらたは、そのとなりで言った。

「やっぱり、なっちゃんは“ゆうしゃ”だね」
「……そうかな?」

「うん。だって、ちゃんと見つけたじゃん。お姉ちゃんの気持ちも、思い出も。ちゃんと、受け取ったよ」

なつみはゆっくりうなずいた。

「じゃあ、そらたは……やっぱり“まほうつかい”だね」
「そう?」
「うん。だって、わたしをここまで連れてきてくれたもん。ひとりだったら、途中で泣いてたかも」
「……ぼくも、なっちゃんがいなかったら、地図の意味、わからなかったと思う」
「じゃあ……ふたりで“しるし”を見つけたんだね」

ふたりは笑い合った。
夏特有のどこか温かみのある、やさしい風が吹いていた。

そして、小さな冒険は、まだもう少しだけ続いていく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました

cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。 そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。 双子の妹、澪に縁談を押し付ける。 両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。 「はじめまして」 そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。 なんてカッコイイ人なの……。 戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。 「澪、キミを探していたんだ」 「キミ以外はいらない」

夢見るシンデレラ~溺愛の時間は突然に~

美和優希
恋愛
社長秘書を勤めながら、中瀬琴子は密かに社長に想いを寄せていた。 叶わないだろうと思いながらもあきらめきれずにいた琴子だったが、ある日、社長から告白される。 日頃は紳士的だけど、二人のときは少し意地悪で溺甘な社長にドキドキさせられて──!? 初回公開日*2017.09.13(他サイト) アルファポリスでの公開日*2020.03.10 *表紙イラストは、イラストAC(もちまる様)のイラスト素材を使わせていただいてます。

貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈

玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳 大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。 でも、これはただのお見合いではないらしい。 初出はエブリスタ様にて。 また番外編を追加する予定です。 シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。 表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。

幼き改革者、皇孫降臨 〜三歳にして朝廷を震わせる〜

由香
キャラ文芸
瑞栄王朝の皇孫・凌曜は、わずか三歳。 泣かず、騒がず、ただ静かに周囲を見つめる幼子だった。 しかしその「無邪気な疑問」は、後宮の不正を暴き、腐敗した朝廷を揺るがしていく。 皇帝である祖父の絶対的な溺愛と後ろ盾のもと、血を流すことなく失脚者を生み、国の歪みを正していく凌曜。 やがて反改革派の最後の抵抗を越え、彼は“決める者”ではなく、“問い続ける存在”として朝廷に立つ。 これは、剣も権謀も持たぬ幼き改革者が、「なぜ?」という一言で国を変えていく物語。

ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています

紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、 ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。 「もう君は、僕の管理下だよ」 退院と同時に退職手続きは完了。 住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。 外出制限、健康管理、過保護な独占欲。 甘くて危険な“保護生活”の中で、 私は少しずつ彼に心を奪われていく――。 元社畜OL×執着気味の溺愛社長 囲い込み同棲ラブストーリー。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

白苑後宮の薬膳女官

絹乃
キャラ文芸
白苑(はくえん)後宮には、先代の薬膳女官が侍女に毒を盛ったという疑惑が今も残っていた。先代は瑞雪(ルイシュエ)の叔母である。叔母の濡れ衣を晴らすため、瑞雪は偽名を使い新たな薬膳女官として働いていた。 ある日、幼帝は瑞雪に勅命を下した。「病弱な皇后候補の少女を薬膳で救え」と。瑞雪の相棒となるのは、幼帝の護衛である寡黙な武官、星宇(シンユィ)。だが、元気を取り戻しはじめた少女が毒に倒れる。再び薬膳女官への疑いが向けられる中、瑞雪は星宇の揺るぎない信頼を支えに、後宮に渦巻く陰謀へ踏み込んでいく。 薬膳と毒が導く真相、叔母にかけられた冤罪の影。 静かに心を近づける薬膳女官と武官が紡ぐ、後宮ミステリー。

処理中です...