絶対に笑える作者の日常・爆笑した話集

湯川仁美

文字の大きさ
39 / 59

㉞ソーラーパネル人形

しおりを挟む
「見て」
178㎝の高身長に最近は飲み会が復活し、体重を90キロ近くまで伸ばし、健康診断に大いに引っかかった夫の総一郎が156㎝40キロそこそこと小柄な妻に声をかけてきたのは土曜日のお昼。
彼の手には任天堂の主流キャラクターお馴染みのピンク球体の最強ゲームキャラクターがついたソーラーパネル人形を持ちながらやってくる。


「星のカビ好きだったっけて?」
おもちゃ屋さんで買って来たのかしらと梨乃は首を傾げながら、そのピンクの最強キャラクターを見る。
「ゲームセンターでとりやすそうで、可愛かったから捕獲してきた」
「へぇ~。こういうのって、本当にクレーンゲームでとれるんだ」
「うん」
梨乃は確かに可愛いわよねと人形を手に取り眺める。
太陽光でゆらゆら揺れるスウィングソーラーコレクション人形と箱には書かれているのだが。
「首を振ってないね」
「うん」
「お部屋の電気じゃ明るさが足りないのかな?ベランダに出してみたら?」
「そう思って午前中に出してたんだけど、全然、首を振らない」
「少し曇ってるからかな?携帯のライト当ててみる?」
「首振らないよ」
30代半ばの総一郎は既にあてたと妻にドヤ顔をする。

「壊れてるんじゃないの?」
太陽の下においても、携帯のライトをあてても動かないという事は壊れているのだろう。
「アナログでカタカタ揺らしながら、動かしたい時は動かしましょうか」
正論を梨乃は言うと、総一郎は大きな体で体操座りをする。
「昨日、ゲームセンターで捕獲する前は動いてたんだけど。家に連れて帰って来たら動かないんだよ」
そう言うのを壊れているというのではないだろうか?
動かないものは動かない。
「あーあ。落下のタイミングで壊れたんだ」

あぁ、なるほど。
この夫はこのでかい体格で小心者なのね。
「どこのゲームセンター?」
「家の近所のゲームセンター」
「ほな。定員さんに説明して、変えてもらおうか。昨日取ったものなら、まだ、在庫はあるでしょうし。クレーンゲームで撮った時にポンって落ちるじゃん。その時に壊れたんかな?」
総一郎はそんな妻に黙り込む。
「どしたん?」
「でもさ。こういうのって、おっさんが故障しててって言ってもさ。気持ち悪くない?」
別に気持ち悪く無いと思うのだが。
この男は恥ずかしいのだろうか?
「じゃあ。私行ってくるわ」
「俺も行く」

***
「すみません。昨日、クレーンゲームで捕ったんですがお家に帰って太陽の下に放り出しても、携帯のライトを当てても動かなくって」
「交換しますね」
梨乃はゲームセンターにいる定員のお兄さんに言うと、お兄さんは快く人形を手に取る。
「あの一番、元気に首を振ってる子をお渡ししますね!」
「ありがとうございます。助かります。本当に!いきがいいっ」
「はい!ぴちぴち、ピクピクっすよ!」

一瞬で交換をすると、総一郎はソーラーパネル人形を手に持つ。
「良かったね」
「うん」
満面の笑みで大企業の管理職勤務。
どこからどう見てもオジサンは上機嫌でソーラーパネル人形を持って歩き出した。

家にも戻るなり書斎の机に置くと、キャンプでも使うLEDランタンを人形の前において動かしだした。
「大人の本気を思い知れ!ははははは。明るい。動くしかない」
総一郎のそんな様子を梨乃は眺めながら。

”良かったねぇ”

微笑ながら夫の観察を微笑みながら行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...