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㉞ソーラーパネル人形
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「見て」
178㎝の高身長に最近は飲み会が復活し、体重を90キロ近くまで伸ばし、健康診断に大いに引っかかった夫の総一郎が156㎝40キロそこそこと小柄な妻に声をかけてきたのは土曜日のお昼。
彼の手には任天堂の主流キャラクターお馴染みのピンク球体の最強ゲームキャラクターがついたソーラーパネル人形を持ちながらやってくる。
「星のカビ好きだったっけて?」
おもちゃ屋さんで買って来たのかしらと梨乃は首を傾げながら、そのピンクの最強キャラクターを見る。
「ゲームセンターでとりやすそうで、可愛かったから捕獲してきた」
「へぇ~。こういうのって、本当にクレーンゲームでとれるんだ」
「うん」
梨乃は確かに可愛いわよねと人形を手に取り眺める。
太陽光でゆらゆら揺れるスウィングソーラーコレクション人形と箱には書かれているのだが。
「首を振ってないね」
「うん」
「お部屋の電気じゃ明るさが足りないのかな?ベランダに出してみたら?」
「そう思って午前中に出してたんだけど、全然、首を振らない」
「少し曇ってるからかな?携帯のライト当ててみる?」
「首振らないよ」
30代半ばの総一郎は既にあてたと妻にドヤ顔をする。
「壊れてるんじゃないの?」
太陽の下においても、携帯のライトをあてても動かないという事は壊れているのだろう。
「アナログでカタカタ揺らしながら、動かしたい時は動かしましょうか」
正論を梨乃は言うと、総一郎は大きな体で体操座りをする。
「昨日、ゲームセンターで捕獲する前は動いてたんだけど。家に連れて帰って来たら動かないんだよ」
そう言うのを壊れているというのではないだろうか?
動かないものは動かない。
「あーあ。落下のタイミングで壊れたんだ」
あぁ、なるほど。
この夫はこのでかい体格で小心者なのね。
「どこのゲームセンター?」
「家の近所のゲームセンター」
「ほな。定員さんに説明して、変えてもらおうか。昨日取ったものなら、まだ、在庫はあるでしょうし。クレーンゲームで撮った時にポンって落ちるじゃん。その時に壊れたんかな?」
総一郎はそんな妻に黙り込む。
「どしたん?」
「でもさ。こういうのって、おっさんが故障しててって言ってもさ。気持ち悪くない?」
別に気持ち悪く無いと思うのだが。
この男は恥ずかしいのだろうか?
「じゃあ。私行ってくるわ」
「俺も行く」
***
「すみません。昨日、クレーンゲームで捕ったんですがお家に帰って太陽の下に放り出しても、携帯のライトを当てても動かなくって」
「交換しますね」
梨乃はゲームセンターにいる定員のお兄さんに言うと、お兄さんは快く人形を手に取る。
「あの一番、元気に首を振ってる子をお渡ししますね!」
「ありがとうございます。助かります。本当に!いきがいいっ」
「はい!ぴちぴち、ピクピクっすよ!」
一瞬で交換をすると、総一郎はソーラーパネル人形を手に持つ。
「良かったね」
「うん」
満面の笑みで大企業の管理職勤務。
どこからどう見てもオジサンは上機嫌でソーラーパネル人形を持って歩き出した。
家にも戻るなり書斎の机に置くと、キャンプでも使うLEDランタンを人形の前において動かしだした。
「大人の本気を思い知れ!ははははは。明るい。動くしかない」
総一郎のそんな様子を梨乃は眺めながら。
”良かったねぇ”
微笑ながら夫の観察を微笑みながら行った。
178㎝の高身長に最近は飲み会が復活し、体重を90キロ近くまで伸ばし、健康診断に大いに引っかかった夫の総一郎が156㎝40キロそこそこと小柄な妻に声をかけてきたのは土曜日のお昼。
彼の手には任天堂の主流キャラクターお馴染みのピンク球体の最強ゲームキャラクターがついたソーラーパネル人形を持ちながらやってくる。
「星のカビ好きだったっけて?」
おもちゃ屋さんで買って来たのかしらと梨乃は首を傾げながら、そのピンクの最強キャラクターを見る。
「ゲームセンターでとりやすそうで、可愛かったから捕獲してきた」
「へぇ~。こういうのって、本当にクレーンゲームでとれるんだ」
「うん」
梨乃は確かに可愛いわよねと人形を手に取り眺める。
太陽光でゆらゆら揺れるスウィングソーラーコレクション人形と箱には書かれているのだが。
「首を振ってないね」
「うん」
「お部屋の電気じゃ明るさが足りないのかな?ベランダに出してみたら?」
「そう思って午前中に出してたんだけど、全然、首を振らない」
「少し曇ってるからかな?携帯のライト当ててみる?」
「首振らないよ」
30代半ばの総一郎は既にあてたと妻にドヤ顔をする。
「壊れてるんじゃないの?」
太陽の下においても、携帯のライトをあてても動かないという事は壊れているのだろう。
「アナログでカタカタ揺らしながら、動かしたい時は動かしましょうか」
正論を梨乃は言うと、総一郎は大きな体で体操座りをする。
「昨日、ゲームセンターで捕獲する前は動いてたんだけど。家に連れて帰って来たら動かないんだよ」
そう言うのを壊れているというのではないだろうか?
動かないものは動かない。
「あーあ。落下のタイミングで壊れたんだ」
あぁ、なるほど。
この夫はこのでかい体格で小心者なのね。
「どこのゲームセンター?」
「家の近所のゲームセンター」
「ほな。定員さんに説明して、変えてもらおうか。昨日取ったものなら、まだ、在庫はあるでしょうし。クレーンゲームで撮った時にポンって落ちるじゃん。その時に壊れたんかな?」
総一郎はそんな妻に黙り込む。
「どしたん?」
「でもさ。こういうのって、おっさんが故障しててって言ってもさ。気持ち悪くない?」
別に気持ち悪く無いと思うのだが。
この男は恥ずかしいのだろうか?
「じゃあ。私行ってくるわ」
「俺も行く」
***
「すみません。昨日、クレーンゲームで捕ったんですがお家に帰って太陽の下に放り出しても、携帯のライトを当てても動かなくって」
「交換しますね」
梨乃はゲームセンターにいる定員のお兄さんに言うと、お兄さんは快く人形を手に取る。
「あの一番、元気に首を振ってる子をお渡ししますね!」
「ありがとうございます。助かります。本当に!いきがいいっ」
「はい!ぴちぴち、ピクピクっすよ!」
一瞬で交換をすると、総一郎はソーラーパネル人形を手に持つ。
「良かったね」
「うん」
満面の笑みで大企業の管理職勤務。
どこからどう見てもオジサンは上機嫌でソーラーパネル人形を持って歩き出した。
家にも戻るなり書斎の机に置くと、キャンプでも使うLEDランタンを人形の前において動かしだした。
「大人の本気を思い知れ!ははははは。明るい。動くしかない」
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”良かったねぇ”
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