絶対に笑える作者の日常・爆笑した話集

湯川仁美

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㊴ボケ殺し

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「おはようございます。ふぅ」
木曜日の8時過ぎに職員室に入ると、梨乃は朝の挨拶をその場にいる教職員にしたあとに鞄を置くと息をはいた。
「おはようございます。ジム疲れっすか?」
気軽に声を掛けてきたのは3年2組の担任である新任担任の野口翼。
「そう。ジム疲れ。この辺を育てるのも大変なのよ?」
そういって胸周りを梨乃は指すと、野口は苦笑する。
「朝っぱらから、何をゆーとるんすか」
「大胸筋の話をしているだけでしょ?何を照れているの?お日様がこんにちはをして、子供達もやって来るというのに」

呆れるように梨乃は言うと、野口は顔を赤くさせる。

「成果のほどは?」
「ローマは一夜にしてならず」
「どういう意味?」
「ローマという偉大なる大帝国は一夜にしてならず」
梨乃は淡々と冷めた声で答えるが野口はぴんとこないようす。
「じゃあ。千里の道も一歩より」
千里の道も1歩1歩進むことによって千里という道のりを達成できる。
Aで言ってもだめなら、Bで攻めてみるのが教育魂。
「バストアップなら走るよりもベンチプレスとかじゃない?」
・・・。
梨乃は黙り込んだ。
巨乳という偉大なる業績はたった1回のジムでなせるものではない。
巨乳の長い道のりも1歩1歩歩むことによって、塵も積もって千里になる。
「パーソナルジムにランニング種目ってあるんか」
・・・・この男は。梨乃は一つの単語を頭に思い浮かべながら真面目に言う野口ににっこり微笑んで首を振った。
「(ランニングなんてものは)ないです」

***
「ボケ殺しー!」
1時間目の始まるチャイムと共に誰も居なくなった職員室で教頭にむかって梨乃は叫んだ。
「ははははは。あれは酷いな。凄いボケ殺しだ。これが放課後の会話だったら突っ込んだのに」
「次は頼みましたよ?」
梨乃は教頭に苦笑しながら頼むと、クスクス笑いながら職員室をあとにした。

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