指さし婚約者はいつの間にか、皇子に溺愛されていました。

湯川仁美

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第二章 動き出す関係(溺愛

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「シャルト・リューズ・ヴーウ。甘いカクテルで度数は55度を5杯ほど」
誠一に耳打ちをする淳二の声は小さいが、地獄耳の志麻子にはしっかり聞こえていた。

55度だと。
誠一の眉間には深い皺が寄ると同時に怒りがこみ上げる。
淳二は誠一は勿論、最低限は志麻子が危ない目に合わないように配慮をするように指示を出してはいないが・・・。
止めれたはずだ。
「なぜ止めなかった」
「特に・・・。志摩子様のご様子が変わることはなかったので」
口籠る淳二もまさかそれほどまでに度数の高い物だとは思っていなかったようでその顔には焦りがにじみ出る。
誠一は心の中で舌打ちをする。
「55度を5杯ってことは。私はお酒がとても強い体質なのですね」
志麻子の呂律はハッキリしており足取りもしっかりしているが。ダンスを踊ったときよりも体は熱を帯びており、少しうるんだ瞳は色っぽい。
17歳のまだまだ少女らしさを残した様子から、一気に大人の女性になったようだった。

「誠一殿下。ごきげんよう。指さし婚約者様は間違ってジュースではなくシャンパンでも飲まれたのかしら?」
声を掛けてきたのは、ルルカベル王女。
お前が飲ませたのだろうとその口調から推測することは容易いが証拠がない。
王宮の会場内には防犯カメラがあるので、それを取り寄せれば証拠ともなるが・・・。
他国の王宮だ。騒ぎを起こすと外交問題にも発展しかねない。
誠一は志摩子を抱き上げると会場のテラスに向かった。
誠一が誰かを抱き上げるなんて、前代未聞の事態に会場の誰もが目を見開いた。

「わざと酒を盛られたな」
「ふふふ。そのようですね」
志麻子は楽しげに答える。
「ルネサンティカ皇女殿下の従姉妹のルルカベル様にやられましたね。でも・・・。たとえ、私に悪意を持ちお酒を盛ったとしても私はこの会場で心細かったので、私はとても嬉しかったですし。私は多少は酔っていてはいますが、まだまだ大丈夫。睨まないでください」
口を尖らせルネさんティカを庇うように言う志麻子に誠一は拳を握りしめた。
「すまない」
「殿下が謝る必要はございません。誠一皇太子殿下の指さし婚約者は男性に抱き上げられたのは小さい時以来なので、話していただけませんか?恥ずかしいわ」
そっと誠一にお姫様抱っこをさせられた志摩子は降りようとするが誠一は離れなかった。
細い。
小さい。
良い匂いがする・・・。

どのくらい時間がだっただろう。
「酔いは冷めたか?」
「おかげさまで」
経口補水液を飲みテラスで30分ほどのんびりしていると体の熱も冷める。
本当にお酒の強い体質らしい。
父も母も夜会で沢山のお酒を飲んでも酔っている姿を見たことはない。

「誠一皇太子殿下?」
いつまであなたは私にまとわりついてくるのかしら?
誰もいなければそう言ってしまうが。
今は他国の王宮の建国を祝う夜会。
誰が聞いているか分からない。
「もう心配はありませんよ?今後はお酒かジュースも確認しますし。どうぞ誠一皇太子殿下とお話をしたい方が沢山会場で待っていらっしゃいますよ」
「婚約者をエスコートするのは至極当然のことだ」

「はい?」

エスコート?
つい数時間前にヅカヅカ1人で会場に入って行ったこの男は何を言っている?
「何か俺はおかしいことを言ったか?」
「・・・殿下はそう言うタイプの男性ではないと、記憶しておりますが」
有無を言わさぬ誠一に志摩子は尋ねる。
「それは記憶違いだ。すぐに訂正しておけ」
「・・・努力はしますが」
「ついでに俺は婚約者を大切にする男ということも記憶しておけ」
今までの経歴からして、無理でしょうっと突っ込みたくなる言葉を飲み込む。

「あの。殿下、会場にお戻りになりませんか?」
「分かった」
夜会は社交の場だ。
誠一は志麻子の腰に腕を回ししっかりと自分の元にホールドする。
志麻子は歩幅を大きくし、前に出ようとすると誠一がそんな志麻子より半歩先に出てしっかり包み込まれるように抱かれるようになってしまうし。
遅く歩こうとすると足元がおぼつかないのかとよこにさらに密着されてしまう。
女性の扱いというよりも・・・。
まるで、大切なおもちゃを取られないように思考を巡らす子供。
「未成年が酔っ払ったことに責任を感じていますか?」
その問いに誠一は少し考える。
「悪意を持って飲まされたことは気がついていますなのでもう二度とそんなことはありませんよ。守ってもらわなくとも私は大丈夫です」

志摩子を守りたい。
志摩子を大切にしたい。

国民を守り。
国民を大切にする。
物心つく頃から人間に対してはそうやって過ごして来たが、特定の誰かにそう思うことはなかった。
淳二にお酒を飲まさないよう指示を出せば今後は淳二はそれに従うし。
志摩子を閉じ込めておこうと思えばいくらでもそうできる。

「誠一皇太子殿下?」

「断る」
何を断るの?っと志麻子は不思議そうにした時だった。
「ダンスを申し込みたいのですが・・・」
「断る」
それは会場で一番初めに声を掛けて来てくれたマイサラン・ディ皇太子殿下。
誠一は志麻子の手を取ろうとしたマイサラン・ディの手を払うと志麻子の手を握る。
志麻子とマイサランの二人は顔を見合わせた。
「我が愛しの婚約者は疲れている故、今宵は誰とも踊らない。今後、未成年故、全て俺を通すように」

「「え」」
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