10 / 15
第二章 動き出す関係(溺愛
④
しおりを挟む志麻子とマイサラン・ディの2人分の驚く声が上がる。
「マ、マイサラン様。私がジュースと間違えてお酒を飲んでしまって、殿下は保護者的な意味で責任感を感じているようなのです。未成年を放置して、酔わせるなんて行為云々を置いておいても褒められないですし。マイサラン様。明日、お時間を書面でもいただけないでしょうか?」
志麻子はマイサラン・ディが今日、コーヒー貿易の発端を作ってくれたこともありまだまだ話したい。
誠一は志麻子を放さない。
そんな様子に男女問わず周囲から視線は集まった。
「あらあら誠一王太子殿下はその女性に好意を持っているのかしら?」
「まぁ。自分のお手元に女性をとどめるだなんて初めての事でございますね」
周囲のからの声に志麻子は焦った。
貿易は広げたい。
領地を反映させたい。
けれども誠一の婚約者としてではない。
一人の伯爵令嬢として、誠一にいつでも婚約破棄をされてもいいように立ち居振る舞いたいのだ。
「誠一は彼女をいつ解放するんだ?いつも、数週間から数か月で解任しているよな?」
マイサラン・ディは誠一をまっすぐ見て言う。
彼も一国の皇子。
そして、この様子からしてきっとマイサラン・ディ殿下は誠一殿下と年齢も近そう。
「黙れ」
誠一と仲がいいのだろう。誠一もフランクに答える。
「解放してやれ」
「解放?まるで俺が志摩子を捕えているような言い方だな」
「違うのか?」
マイサランはフランクに志摩子の顔を覗き込みながら重ねて尋ねる。
「志麻子には俺が望んで側にいてもらっている。俺の婚約者をジロジロ見るな」
そういって脇に置く志麻子をくるっと自分の前に立たせるとくるりと向かい合わせその頬に手を置く。
そしてそっとその額に唇を落とした。
「せ、せ、せ、せ、誠一皇太子殿下っっ」
お酒以上に体中の血液が物凄い勢いで全身を駆け巡るのが分かった。
あまりの緊張、驚き、そして羞恥心から真っ赤になり足が震える。
「大丈夫か?」
誠一はクスリと満足そうに笑うと想像以上の反応に目を見開いた目を細めた。
「そろそろ。解散の時間だ。今日は少し早いが失礼する。俺の婚約者はうぶな未成年だからな」
一度に誠一はにこやかに挨拶をするとそのまま会場を後にした。
確かに夜会の解散までは30分ほどでありそろそろ帰りだす人もいたのだが。
全員が足を止めて2人を見ていた。
志摩子を大切そうに抱き寄せながら歩く。
「なっ、なっ、せ、誠一皇太子殿下におかれましては・・・。酔っ払ってます?」
車に乗るなり志麻子は声を上げたが、涼しい顔で車の中であぐらで座る誠一にその声はどんどん小さくなる。
「何をそんなに驚いている?」
「驚いてます!もちろん、驚いています!あなた、だって、女、嫌いでしょう!あっ・・・。分かったわ」
志麻子は声を上げると、ビシッと誠一を指さした。
「あなたロリコンね!」
「はぁ?」
なぜそうなる。
なぜ俺がロリコンになる。
「そっか、そうなのね。幼女が好きなのね」
「女児が嫌いかと聞かれれば嫌いではないが。性的思考がどうのこうのという話であれば否定する」
誠一は面白そうに今まだに頬を硬直させ、少し震えている志麻子を楽しそうに眺める。
「お前どう見ても幼女には見えないが?胸もしっかりあるし酒飲んだからか今は色気もあるぞ?」
「へぇっ」
真正面から褒められ目をぱちくりさせると誠一は足を下ろして腕を組む。
客観的に見てもドレスアップをして、化粧をしっかりしている志麻子は綺麗だった。
初めて会った時は目立たないように存在感を消してたので、大人しそうな娘だと思ったが。
貿易話をとんとん拍子で進める姿。
自分が塩対応をしてもお構いなしにその場を有意義に過ごす姿には惹かれてしまう。
「直ぐに好きになって欲しいとは言わない。徐々に好意を持てくれると嬉しい。成人するまで3年はある。気長に待つ」
誠一はのんびりというとニコニコとしながら志麻子を眺める。
「な、なんですか」
「寝るなり仕事をするなり好きに過ごしていいぞ?家まで2時間くらいはかかる」
王族車は救急車や消防車同様に一般車両はよけてくれるがそのくらいは時間が掛かる。
「あぁ。そうだ。俺に抱き着くなり、上に座るなりして時間を潰してくれても構わない」
「・・・へ?」
「志摩子は軽いからな。おいで」
誠一は真っ赤になる志麻子に両手を広げる。
「未成年に手を出すゲス野郎ではない。良識の範囲内で愛してやる。おいで」
「い、い、いかないわよ!」
「そうか。世の女は金と財力と権力のある一途なイケメン王子が好きだろう?」
「一途」
「あぁ。俺は一途だ。これだと決めた女には優しいぞ」
29
あなたにおすすめの小説
『呪いのせいで愛妻家になった公爵様は、もう冷徹を名乗れない(天然妻は気づかない)』
星乃和花
恋愛
【完結済:全20話+番外3話+@】
「冷徹公爵」と呼ばれるレオンハルトが、ある日突然“愛妻家”に豹変――原因は、妻リリアにだけ発動する呪いだった。
手を離せない、目を逸らせない、褒めたくなる、守りたくなる……止まれない溺愛が暴走するのに、当のリリアは「熱(体調不良)」と心配または「治安ですね」と天然で受け流すばかり。
借金を理由に始まった契約結婚(恋愛なし)だったはずなのにーー??
そんなふたりの恋は愉快な王都を舞台に、屋敷でも社交界でも面白……ゆるふわ熱烈に見守られる流れに。
甘々・溺愛・コメディ全振り!
“呪いのせい”から始まった愛が、最後は“意思”になる、にやにや必至の夫婦ラブファンタジー。
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
「『お前の取り柄は計算だけだ』と笑った公爵家が、私を追い出した翌月に財政破綻した件」
歩人
ファンタジー
公爵家に嫁いだ伯爵令嬢フリーダは、10年間「帳簿係」として蔑まれ続けた。
夫は愛人に夢中、義母は「地味な嫁」と見下す。しかし前世で公認会計士だった
フリーダは、密かに公爵家の財政を立て直し、資産を3倍にしていた。離縁を
突きつけられたフリーダは、一言も抗わず去る。——翌月、公爵家は財政破綻した。
「戻ってきてくれ」と跪く元夫に、王家財務顧問となったフリーダは微笑む。
「申し訳ございません。もう私は、公爵家の帳簿係ではありませんので」
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
2/26 番外編を投稿しました。
読んでいただけると嬉しいです。
思っていたよりずっとたくさん読んでいただいていてとても嬉しいです。
とてもとてもありがとうございます!!
訳あり侯爵様に嫁いで白い結婚をした虐げられ姫が逃亡を目指した、その結果
柴野
恋愛
国王の側妃の娘として生まれた故に虐げられ続けていた王女アグネス・エル・シェブーリエ。
彼女は父に命じられ、半ば厄介払いのような形で訳あり侯爵様に嫁がされることになる。
しかしそこでも不要とされているようで、「きみを愛することはない」と言われてしまったアグネスは、ニヤリと口角を吊り上げた。
「どうせいてもいなくてもいいような存在なんですもの、さっさと逃げてしまいましょう!」
逃亡して自由の身になる――それが彼女の長年の夢だったのだ。
あらゆる手段を使って脱走を実行しようとするアグネス。だがなぜか毎度毎度侯爵様にめざとく見つかってしまい、その度失敗してしまう。
しかも日に日に彼の態度は温かみを帯びたものになっていった。
気づけば一日中彼と同じ部屋で過ごすという軟禁状態になり、溺愛という名の雁字搦めにされていて……?
虐げられ姫と女性不信な侯爵によるラブストーリー。
※小説家になろうに重複投稿しています。
【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜
光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。
それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。
自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。
隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。
それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。
私のことは私で何とかします。
ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。
魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。
もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ?
これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。
表紙はPhoto AC様よりお借りしております。
うっかり結婚を承諾したら……。
翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」
なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。
相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。
白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。
実際は思った感じではなくて──?
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる