金と権力ある俺様王子が、最強令嬢を溺愛結婚する件

湯川仁美

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第一章 馴れ初めついでに日常をお見せします。

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ーーー王宮の外れにある官僚の職場。統括省の時計が16時45分を指した時だった。

「鷺洲公爵令嬢。定時まで後15分あるが帰る身支度をしてきなさい」
上司の声に彼女は顔をあげた。
「ありがとうございます。さすが私の直属の上司。統括大臣様。気遣いに惚れてしまいそうです」
にっこり笑うと麗子は立ち上がる。

今夜は宝玉王国での夜会がある。
それも節目となる建国7億年の記念式典。
公爵令嬢として参加することはもちろん必須であるし。
長年、この国の第一王位継承権を持つ王子の次期王太子妃という地位。
最年少統括省副大臣に着任し、国賓としての出席も兼ねていたのでメイク、ヘアセットと手を抜く事はできない。
他国からの王族にも私と玄翠の姿を見てもらわなければならない。

王族、貴族は代々お見合い婚ばかりだが麗子と玄翠は親が決めた婚約関係ではなくその伝統を打ち破る第一号になりたい。
一般人のように恋焦がれて結婚するのが良い。
自分で運命を切り開く事例を作りたい。
立ち上がると、さっそく更衣室に向かいメイドにヘアセットをしてもらいながら絢爛豪華なドレスを着る。
タイトなイブニングドレスをさっと身にまとうとそこにはキャリアウーマンの女子大生ではなく。
優雅で可憐な1人の令嬢の姿と変身を遂げた。
「メイド長。わざわざ、ありがとう。王宮までヘアセットに駆けつけてもらって」
「いいえ。お嬢様。ご指名してくださり、ありがとうございます。お嬢様は素材が良いので、仕立てがいがあります」

ヘアセットが終わり、メイクをさっと直し終わったときだった。
トントンッ。
ノックの音と共にメイド長の補佐で来ていたメイドがドアを開ける。
「用意できたか?」
統括省は王宮内にあるのでお迎えは不要と言っていたが、やってくるのが彼氏。
「ええ。どうかしら?今夜のドレスは?」
「まぁまぁだ」
玄翠はそっけない。
「パーフェクトとか。エクセレントとか。ビューティフルとか。ないわけ?彼女が着飾ったのよ?」
そっけない言葉に少しだけ麗子は褒めなさいよと言わんばかりに口をとがらせるのだが。
「ドレスの話だろ?麗子その物に比べたら、まぁまぁだ」
しれっという玄翠に麗子は口を閉ざした。
嬉しいけれど恥ずかしい。
良く恥ずかしいことが平気で言えるわ。
ついさっきまで、口を尖らせ、少し膨れたように見せていた麗子だったが、玄翠のストレートな称賛に眼を背ける。
そして苦笑しながらパーティーバックを左手に持つ。
「行きましょうか」
「あぁ。彼女様」
「えぇ。彼氏様」
麗子は右手で玄翠の腕を取って歩き出した。

***
王宮の夜会などを行うパーティ会場は何もない時でも、床、壁、天井に宝石が散りばめられ。
ガラスは全てステンドガラス。
月夜の光がライトと調和し、会場に降り注ぐ。
会場には続々と車、飛行機、ヘルコプターと各地の王族や貴族達がやってくるのが目に入った。
「今日は東條の馬鹿も来てる。離さないが、俺なら離れないように」
東條大輝。
1年ほど前の玄翠の誕生日で麗子の頬を打ち、蹴ろうとした元婚約者。
一昨日まで玄翠に殺人未遂の大罪を課せられ牢獄に入れられていたのだが、裁判の結果、罰金刑に処されて牢から出所したと法務省長から聞いていた。
「気をつけろ」
「気をつけますが。守って下さいね」
気をつけようと天災に見舞われる時は見舞われる。
「確認されるまでも無くそのつもりだ」
「じゃあ気を付けなくってもいいじゃない」
「どうしてそうなる?」
「玄翠の方がスペック高いのだから、私が気を付けるより。玄翠が気を付けた方が効率的だわ。私は貴方に絶大な信頼を置いてるの」
 絶大な信頼を置いてくれているのは、ありがたいが。
警備ができないところ・・・。
トイレや、令嬢達が集まったりした時は玄翠が近づきにくい。
「・・・気をつけるわ」
そんな玄翠の心配する声を知ってか知らずか。
麗子はうなづいた。

そしてその予想は的中する。

「お前、殿下とまだ付き合ってるんだって?」

この人はめんどくさいことがお好きなのかしら?
トイレに玄翠が行くため離れた時だった。
会場のど真ん中の多くの視線が集まる中でバカは話しかけてきた。
話しかけてこなければいいものを・・・。
それにしてもなんだろう。
話しかけなきゃいいものを・・・。
それにしても、久しぶりに顔を見たけど、声の主は確認しなくともわかる。
なんだかんだ。定期的に16年間、聞き慣れていた声だもの。
「ごきげんよう。東条大輝さん」
にこやかに麗子は挨拶をしながら振り返った。
しかし、そこにいるのは歩くナルシスト臭を漂わせながら女をはべらせてきた男性ではない。
痩せこけ、肌もカサカサとしている山の中で遭難をして1ヶ月ぶりに人里にたどり着いた人のよう。
やつれたわね。
そんな事を思いつつも、大丈夫?なんて声はかけない。
「俺の女に何の用だ」
玄翠はトイレから戻ってきて少し離れた所で父親と話し込んでいたが、麗子の隣にたつと、どこまでも冷たい声で大輝に尋ねる。
「これは、これは。殿下。刑務所の中でも、僕のお下がりの女を手にしていると・・・。噂はかねがね」
嫌味たっぷりに大輝は刑務所に入れられた事を恨んでおり、言うが・・・。
「あぁ。俺はお前が6、7度ほど。俺が選別した同室の囚人から痛めつけられ、危篤状態になったと聞いている」
意地悪くいう玄翠に大輝は怒りでその身を震わせると麗子を睨みつけた。
「貴様のせいだ」
「私のせい?ご自身でしょう?私を叩き蹴った事実は消えませんわ」
いや、叩こうとして。
蹴ろうとしただけだ。
人の噂は75日。
2ヶ月半も経つと噂が消えるように。
事実を誇張した話は周囲の人からの伝達ゲームのようにして広まった話は麗子が叩かれ、蹴られ。
玄翠が助け出し罰を与えた。
以来、2人は強い愛と絆に結ばれて交際をしていると言う認識になっていた。

「お、女の幸せは結婚だ。良い旦那と結婚し、子供を産み育てることが幸せだと言うのに、貴様はまだ独身!」
一般的な王族の姫君や、貴族の令嬢はそうね。
私が独身だと言うことも事実。
反論はできないわ。
でも・・・。
「で?シャバに出たての大輝さん自身はどうなんです?その理論で言うと、男は見合いをし、いい妻に巡り合い、子供を産んでもらうことが幸せになりそうだけれど?」
もし、麗子が黙っていれば。
より酷い言葉で、より追い詰めるような言葉を掛けようとしていた玄翠は開けた口を閉ざす。
麗子の長年の婚約者だったんだ。
積もり溜まったものもあるだろう。
「女は、働いたことのない奴の方が可愛いんだ」
「私の問いに答えて下さいよ」
この人は、何がなんでも私の心を傷つけないようね。
だけど、そんなことは無理。
私の心も体もダイヤモンド。
ダイヤを削るのは、ダイヤだけ。
傷つけられるのも、ダイヤだけ。
「お前のような考えもあっていいと思うが、俺は自立している女が好きだ。王妃の仕事は山のようにある。働いたことのない女が、いきなり王妃になると、その仕事量に最悪の場合、過労死という形でこの世を去った例がいく例もある」
玄翠は黙っていようと思ったが。
やはり、黙ってはいられない。
「俺は良い女が好きだ」
大輝は声を張り上げるのだが。
「俺も良い女が好きだ。違うな。麗子という良い女以外は嫌いだ。その点だけは気が合うようだな」
玄翠は麗子の腰に腕を回す。

「東条大輝さん。あなたはいい男なの?」
麗子は尋ねる。
「いい男が欲しいだの。いい女が欲しいだの。男女ともにいい女、いい男を求めるけれど。あなた自身は良い男なの?」
麗子は真っ直ぐ大輝を見つめる。
「なっ」
「な?」
「生意気だ!」
そんなやり取りに玄翠も麗子も笑い出す。
「何がおかしい」
「だって。高々、伯爵が殿下に何を言ってるの?あなたが生意気でしょう?」
「もういい!お前がまだ大学を卒業して、22歳という年までも独身で泣いて縋ってきたら、結婚してやっても良いと思ったが。してやらん!」
「おいおい。人の彼女に何を言ってるんだ」
玄翠は黙っちゃいない。
してやらんも、してやるも、ないだろう。
「なんなんだ!恋愛とか!不真面目な関係なんだろう」
玄翠は麗子の腰に回した手に力を込めた。
「突然ですが。発表があります。我が国は建国7億年を迎えました。世の中は変化し、世の中は移り変わっています。ここで宣言いたします。誰が自由に職業を選ぶことのできる国、誰もが自由に恋焦がれた相手と結婚のできる国、誰もが自分の節目となる選択を家のためではなく。自分自身のために選択できる国を作ります。私は大学を卒業するまでに玄翠王太子殿下でなければ結婚できない。玄翠王太子殿下でなければ結婚したくないという理由を今もありますが、今以上に見つけたいから入籍を保留にしております」
玄翠は麗子のマイクを取る。

「俺は切り開くことのできる道を作りたい。俺の後ろに道はできる」
私の"後ろ"でしょ?
マイクに声が入らないよう。
ぼそっと麗子は呟く。
「この鷺洲麗子と"一緒"に作っていきます」
「お手伝いいたします」
それは、宣言でもあったが。
麗子嬢に恋愛という面において、手を出すなと言う牽制の意も混ざっていた。
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