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労働者の犠牲の仕組みは一緒
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快いサインの書かれた書類をほくほく顔で抱きしめて城へと帰投する最中。夕方差し掛かって夜になる手前には別のちゃんと機能している町に着く予定だ。そこで一泊してから町へと向かうのだ。赤々とした重たい湿度も、抱きしめて私の体温の移った書類のお陰で楽しい物だ。ルンルン気分で居たらカペル君が心配そうに私の方を見て居た。
「我が君、そのような大胆なことを早々にしてしまって……。宜しいのですか?」
「良いのよ。この世界の仕組みも金持ち優遇なんだから、多少痛い目見て貰うわ貴族には。村や町の収入の税金はしっかり取るけど、貴族は収入の1000万のうち、しっかり1000万使えば運営費として払わなくていいって、そりゃ貧富の差は広がるよ」
実際のその実例が前の世界の日本だし。日本のお金持ちとこっちの貴族は似ていてどちらも『不労所得』を重視するんだ。働かないでお金が発生する仕組みをね。こっちのサラリーマンとこっちの平民が収入を得ようとしたら必然的に『沢山働く』つまり『有限の時間を』切り売りして働くことになる。
一方日本のお金持ちとこっちの貴族は、土地と下々の者が、遊んでいても24時間稼いで居てくれる仕組みになっているから、どう頑張っても金持ちには勝てないの。サラリーマンや平民は働けて精々12時間だけど、不労所得の仕組みは崩壊しなければ、24時間いつでも稼いでくれるから。
そして、平民やサラリーマンは法の下で否が応でも税金を払わないと行けないのに対して、金持ちの場合はこの世界も前の世界も、1000万収入得たらそっくりそのまま1000万使えば払わなくて良いんだよ。こっちだと貴族運営費という名称で、前の世界ならば『法人税』という名称で税金免除されるから。
(これが貧乏人が一生貧乏人である仕組みってね。なんか、考えてて悲しくなってきた……。てか、前世の私これだけ知ってるのに、何故低底市民から抜け出せなかったし……もう、いっか。あと、こっちは市民に消費税がないだけ救いか)
「だから、今回はそこの町の貴族から強制的にお金を徴収してるよ。今頃ソーラかヌファンがその貴族の小汚い所引っぺがして脅してる筈だし」
「レミリス様には今回頼らないのですか?」
「あんまり頼り過ぎるのもアレだから、今回は腹心のメイド二人にやって貰ってるわ。あの暗殺騒ぎからして、あの二人が手練れだってわかったし」
「あははは……」
護衛なのにすぴすぴ寝ているパトちゃんに追いやられて、私の隣へと来たカペル君が苦笑いして遠くを見る。ごめんね、実は血染花伝と破骨花伝の冒険者の話は寝ているふりで聞いちゃったのさ。ある意味二人を使う理由が出来て嬉しいけど、口止めされているカペル君は気が気でないのだろう。ご本人達は知って欲しくなさそうだったし。
「人を使う側て……勝手ですね」
「どっちもよ。お互いにやって貰っていることを忘れればいつか壊れちゃうよ。結果どっちかの力が強くなって今の貴族達よ。大丈夫、まだ修正は効くよ。頑張るからさ、待ってて」
労働者が強くなれば、元々の会社や土地を買って責任を取ろうという人は居なくなり。今回みたいに上だけが偉くて強くなりすぎれば……此処みたいに緩やかに国は死んでゆく。難しいよ。しかも、反発が来ても強引に前に進まねば。間違いなくエヴァ王国は破綻する。だから、進まねば。書類を抱きしめる手を無意識に強めていたようで、くしゃりとした音で、慌てて込めていた力を緩めてた。
「我が君、我が君は本当に凄いや」
「お兄ちゃん?」
「いいこ、偉いです!」
どこか、貴族と聞いて暗い影を瞳に落としたカペル君が、私を見て悲しげに微笑んだと思ったら遠慮がちに偉いと頭を撫でた。カペル君の撫でる手はやっぱり気持ちよくて、自然と目を瞑って頭を差し出してしまう。そのまま書類を抱きしめる私を引き寄せて抱きしめた。肩に流すように縛られている翡翠色の髪が私の頬に掛かる。体温は私のほうがあったかいけど、こうしているうちにホカホカとした温もりに包まれた。
「無理しないでくださいね。今の僕では全然ダメですが、いつか我が君の負担を……一番、誰よりも近くで背負ってみせますから」
「ありがとう。待ってる」
「はい」
ゆるゆると抱きしめて、遂には膝に乗せられて頭を撫でられると良い気分になってうとうとと眠くなる。くわりと欠伸をすれば、釣られたように頭の上からカペル君の欠伸の声と吐息が頭の上から落ちてきた。ゆるゆると微睡んで、私もパトちゃんが寝ているのを良いことに甘えていると。馬車が少し大きな音を立てて止まった。最初は着いたのかな? なんて暢気なことを考えていた。
「パトちゃん?」
「リエル様とカペルリットくーん。絶対に……馬車から出ないでください。囲まれてます」
寝ていたのに急に目をカッと開いて、先端に宝石を付けた小さな杖を衣服の中から抜き出して、何かを警戒するように殺気だったパトちゃんの緩やかに発せられる。絶望の一言……囲まれてます。何に? なんて問うのは野暮という物だろう。急に現れた殺気は、明らかに人の物だった。
「副長! 右を頼む」
「おけ、そっち頼むな」
「襲撃、襲撃!」
私が殺気を感じてすぐに、刃物と刃物が交わる金属の音と騎士達の声とレドビスの襲撃を告げる声。何かが馬車にぶつかっているのか、大きい音と共に馬車が大きく横揺れした。恐怖で反射的に、その音の方へと顔を向けようとしたら、カペル君に止められ無理矢理向き合うように抱きしめられて、頭を固定してきた。カペル君の身体も震えていて……額に当たるカペル君の胸は破裂しそうな心臓の脈動が伝わってきた。
【我が魔力に呼応せし元素よ 天津から降り立つ結びの滴は地へと4つに分かち落つる 紡ぎ走るは守り印
略式詠唱 全属性対応防壁 リューベ・オールエレメント】
「略式なので全詠唱よりは耐久が大幅に落ちますー。私も外からでますのでぜーったい出ちゃダメですよ? いいですね」
そう言って間延びした声で、返事も効かずにパトちゃんは馬車の扉を開けて行ってしまった。今回はこんな密閉空間で狙われたのは、初めてのことなので私もプルプルと子鹿のように震えて抱きしめている書類を挟み込むように、カペル君の背中に手を回した。
「大丈夫、大丈夫です。レドビス様もパトリシア様も、強いですから。いざというときは僕が、守りますからッッ……。大丈夫です。大丈夫」
何度も呟いて私を抱きしめながら、大丈夫、大丈夫と言い続けた。やがて揺れが大きくなり、ガラスが割れるような音が聞こえたと思ったら、遅れて馬車の窓ガラスが割れて、私とカペル君にガラスが降り注いだ。結界が割れて馬車の窓も割れたのだろうと冷静に思うのは。カペル君が全てを見ないように抱きしめてくれるからなのだろうか。
「大丈夫です。帰ったら時間を貰ってお花でも見ませんか? 我が君、それまで頑張りましょう。クッキーが好きだってレミリス様に聞きましたよ……。ヌファンさんやソーラさんにお願いして……みますね。だから、大丈夫です」
悲鳴も、怒号も聞こえる。けど、カペル君の声だけはそれに混じることなくまっすぐ私の耳に届く。なんども、なんども大丈夫と言って私の身体を抱きしめる。暖かい、暖かくて怖い恐怖で意識が朦朧としてきた頃に、優しくカペル君が抱きしめる手を緩めて、片手で頭を撫でてくれた。
私は、顔を上げてカペル君を見上げた。細かなガラスが翡翠色の髪に乗っている。泣きそうだけど笑って見上げる私をを見て安心させるように笑った。私は、カペル君の顔を見て安堵で少しずつ落ち着いて来た頃に。左側からぐしゃりと音と共に……。
ピシャリ
割れた窓から、カペル君と私に誰のかわからない鮮血が降り注いだ。鉄の匂いとさっきまで生きていたことがわかる生暖かい温度が、カペル君にも……私にもゆっくり染み渡ってくる。むくりともたげた恐怖に、ついに耐えきれなくなった私の意識は、勝手にふっと瞼を降ろした。
「カペル君……」
「我が君、そのような大胆なことを早々にしてしまって……。宜しいのですか?」
「良いのよ。この世界の仕組みも金持ち優遇なんだから、多少痛い目見て貰うわ貴族には。村や町の収入の税金はしっかり取るけど、貴族は収入の1000万のうち、しっかり1000万使えば運営費として払わなくていいって、そりゃ貧富の差は広がるよ」
実際のその実例が前の世界の日本だし。日本のお金持ちとこっちの貴族は似ていてどちらも『不労所得』を重視するんだ。働かないでお金が発生する仕組みをね。こっちのサラリーマンとこっちの平民が収入を得ようとしたら必然的に『沢山働く』つまり『有限の時間を』切り売りして働くことになる。
一方日本のお金持ちとこっちの貴族は、土地と下々の者が、遊んでいても24時間稼いで居てくれる仕組みになっているから、どう頑張っても金持ちには勝てないの。サラリーマンや平民は働けて精々12時間だけど、不労所得の仕組みは崩壊しなければ、24時間いつでも稼いでくれるから。
そして、平民やサラリーマンは法の下で否が応でも税金を払わないと行けないのに対して、金持ちの場合はこの世界も前の世界も、1000万収入得たらそっくりそのまま1000万使えば払わなくて良いんだよ。こっちだと貴族運営費という名称で、前の世界ならば『法人税』という名称で税金免除されるから。
(これが貧乏人が一生貧乏人である仕組みってね。なんか、考えてて悲しくなってきた……。てか、前世の私これだけ知ってるのに、何故低底市民から抜け出せなかったし……もう、いっか。あと、こっちは市民に消費税がないだけ救いか)
「だから、今回はそこの町の貴族から強制的にお金を徴収してるよ。今頃ソーラかヌファンがその貴族の小汚い所引っぺがして脅してる筈だし」
「レミリス様には今回頼らないのですか?」
「あんまり頼り過ぎるのもアレだから、今回は腹心のメイド二人にやって貰ってるわ。あの暗殺騒ぎからして、あの二人が手練れだってわかったし」
「あははは……」
護衛なのにすぴすぴ寝ているパトちゃんに追いやられて、私の隣へと来たカペル君が苦笑いして遠くを見る。ごめんね、実は血染花伝と破骨花伝の冒険者の話は寝ているふりで聞いちゃったのさ。ある意味二人を使う理由が出来て嬉しいけど、口止めされているカペル君は気が気でないのだろう。ご本人達は知って欲しくなさそうだったし。
「人を使う側て……勝手ですね」
「どっちもよ。お互いにやって貰っていることを忘れればいつか壊れちゃうよ。結果どっちかの力が強くなって今の貴族達よ。大丈夫、まだ修正は効くよ。頑張るからさ、待ってて」
労働者が強くなれば、元々の会社や土地を買って責任を取ろうという人は居なくなり。今回みたいに上だけが偉くて強くなりすぎれば……此処みたいに緩やかに国は死んでゆく。難しいよ。しかも、反発が来ても強引に前に進まねば。間違いなくエヴァ王国は破綻する。だから、進まねば。書類を抱きしめる手を無意識に強めていたようで、くしゃりとした音で、慌てて込めていた力を緩めてた。
「我が君、我が君は本当に凄いや」
「お兄ちゃん?」
「いいこ、偉いです!」
どこか、貴族と聞いて暗い影を瞳に落としたカペル君が、私を見て悲しげに微笑んだと思ったら遠慮がちに偉いと頭を撫でた。カペル君の撫でる手はやっぱり気持ちよくて、自然と目を瞑って頭を差し出してしまう。そのまま書類を抱きしめる私を引き寄せて抱きしめた。肩に流すように縛られている翡翠色の髪が私の頬に掛かる。体温は私のほうがあったかいけど、こうしているうちにホカホカとした温もりに包まれた。
「無理しないでくださいね。今の僕では全然ダメですが、いつか我が君の負担を……一番、誰よりも近くで背負ってみせますから」
「ありがとう。待ってる」
「はい」
ゆるゆると抱きしめて、遂には膝に乗せられて頭を撫でられると良い気分になってうとうとと眠くなる。くわりと欠伸をすれば、釣られたように頭の上からカペル君の欠伸の声と吐息が頭の上から落ちてきた。ゆるゆると微睡んで、私もパトちゃんが寝ているのを良いことに甘えていると。馬車が少し大きな音を立てて止まった。最初は着いたのかな? なんて暢気なことを考えていた。
「パトちゃん?」
「リエル様とカペルリットくーん。絶対に……馬車から出ないでください。囲まれてます」
寝ていたのに急に目をカッと開いて、先端に宝石を付けた小さな杖を衣服の中から抜き出して、何かを警戒するように殺気だったパトちゃんの緩やかに発せられる。絶望の一言……囲まれてます。何に? なんて問うのは野暮という物だろう。急に現れた殺気は、明らかに人の物だった。
「副長! 右を頼む」
「おけ、そっち頼むな」
「襲撃、襲撃!」
私が殺気を感じてすぐに、刃物と刃物が交わる金属の音と騎士達の声とレドビスの襲撃を告げる声。何かが馬車にぶつかっているのか、大きい音と共に馬車が大きく横揺れした。恐怖で反射的に、その音の方へと顔を向けようとしたら、カペル君に止められ無理矢理向き合うように抱きしめられて、頭を固定してきた。カペル君の身体も震えていて……額に当たるカペル君の胸は破裂しそうな心臓の脈動が伝わってきた。
【我が魔力に呼応せし元素よ 天津から降り立つ結びの滴は地へと4つに分かち落つる 紡ぎ走るは守り印
略式詠唱 全属性対応防壁 リューベ・オールエレメント】
「略式なので全詠唱よりは耐久が大幅に落ちますー。私も外からでますのでぜーったい出ちゃダメですよ? いいですね」
そう言って間延びした声で、返事も効かずにパトちゃんは馬車の扉を開けて行ってしまった。今回はこんな密閉空間で狙われたのは、初めてのことなので私もプルプルと子鹿のように震えて抱きしめている書類を挟み込むように、カペル君の背中に手を回した。
「大丈夫、大丈夫です。レドビス様もパトリシア様も、強いですから。いざというときは僕が、守りますからッッ……。大丈夫です。大丈夫」
何度も呟いて私を抱きしめながら、大丈夫、大丈夫と言い続けた。やがて揺れが大きくなり、ガラスが割れるような音が聞こえたと思ったら、遅れて馬車の窓ガラスが割れて、私とカペル君にガラスが降り注いだ。結界が割れて馬車の窓も割れたのだろうと冷静に思うのは。カペル君が全てを見ないように抱きしめてくれるからなのだろうか。
「大丈夫です。帰ったら時間を貰ってお花でも見ませんか? 我が君、それまで頑張りましょう。クッキーが好きだってレミリス様に聞きましたよ……。ヌファンさんやソーラさんにお願いして……みますね。だから、大丈夫です」
悲鳴も、怒号も聞こえる。けど、カペル君の声だけはそれに混じることなくまっすぐ私の耳に届く。なんども、なんども大丈夫と言って私の身体を抱きしめる。暖かい、暖かくて怖い恐怖で意識が朦朧としてきた頃に、優しくカペル君が抱きしめる手を緩めて、片手で頭を撫でてくれた。
私は、顔を上げてカペル君を見上げた。細かなガラスが翡翠色の髪に乗っている。泣きそうだけど笑って見上げる私をを見て安心させるように笑った。私は、カペル君の顔を見て安堵で少しずつ落ち着いて来た頃に。左側からぐしゃりと音と共に……。
ピシャリ
割れた窓から、カペル君と私に誰のかわからない鮮血が降り注いだ。鉄の匂いとさっきまで生きていたことがわかる生暖かい温度が、カペル君にも……私にもゆっくり染み渡ってくる。むくりともたげた恐怖に、ついに耐えきれなくなった私の意識は、勝手にふっと瞼を降ろした。
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