全てが終わったBADEND後の乙女ゲーム転生で反逆いたします

高梨

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婚約

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「おえー……」

「我が君大丈夫ですか?」

 現在の私は、カペル君におぶられながら移動しています。理由は……傷による高熱だと思う。そこは全員医者じゃないから、おそらくはという感じだけど。コールを退けながら歩いていたら、カペル君がいち早く私の体調に気がついたんだ。

「我が君」

「ん? なに? うひゃッ!」

「凄い熱ですッッ」

 カペル君が突然私の顔を見て、冷たくて細くも骨張った男の手で首元をひたりと添えたから、びっくりして変な悲鳴を上げた。多分、熱は貴方の行動のせいですなんて言えなくて、あれよあれよと言ううちにカペル君の背中に連行された。一度おぶられれば、くらりと吐き気と頭痛が襲ってくる。自分では気がつかなかったけど、本当に私は具合が悪くなったみたいだ。申し訳なさそうに周りを見れば。

「リエル様? 予めストックしてありますお水を飲みましょう! はいどうぞ」

「あら、額に汗が、少し失礼します」

 謝罪なんて言わせないとばかりに、ヌファンとソーラが世話を焼いてくるから、体調を崩した事への謝罪は言えぬままだ。それなのに、みんな優しい目をして心配そうに私も見る物だからいたたまれない。さらに、私は心臓に毛が生えているのか、凄く眠い。背負われている間にもコールが襲いかかって来ていると言うのにだ。

「我が君、どうぞお休みください。貴方が元気であることが重要なのですから」

「うん、ゴメン。任せていい?」

 任せて良いかを聞くと、皆それぞれ返事をしてくれた。とても嬉しそうに……。申し訳なく思いながらも、下がってくる瞼を受け入れた。うとうと、微睡みを迎える中で、血と汗の混じったカペル君の匂いがする。微睡みに溶けた頭は自然と香りの強い首元に鼻を寄せて力を抜く。心なしか、私の胸から伝わる背中越しの心臓の脈動が、激しい。それが、今は余計に安心出来て、ふっと身体が軽くなるような浮いた感覚と共に、私は意識を手放した。



「まさか、オンリーコミケの夢見るとは…」

 まさかのリエルちゃんの姿のままコミケに行くという夢を見た。周りは懐かしさを感じる衣服と……すっごい汗臭い女の人お密集具合が懐かしい。そういえば、前の世界でコミケに行ったよねー。私は二次創作で使ったお金と同じ金額、公式のグッツを買って還元するっていう誓いを立ててたから、そこまで買い漁ったことはないけど。

 揉みくちゃにされながらも、私が連れてこられた乙女ゲーのオンリーを見回ると……一つだけ気になる同人誌があった。気の強そうなお姉さんが売り子をやっていて、なんか、必死に売り込んでいるけど。その売り込みの必死さが、怖くてだれも近寄ってない。遠目から表紙を見ようとして。

【私はままとお母さんに……二人に◯◯されたから反逆と復讐をなしとげるの】

 無機質なリエルちゃんの声がどこからともなく聞こえた。◯◯が聞こえなくて暗闇の中で何度もそれはなに? 何度も問いかけれど、答えはないままに。四方八方が暗闇に包まれて、なにも聞こえない触れない。怖くなって声が裏返ようが、聞き苦しかろうが、じたばたと暴れてから……どこからともなく。

【せっかく う    赤     よ】

 そんな声が響いてきた。


 そこで


「リエル様 おはようございます!」

 私は目がさめた。コミケ?という単語を呟いて首を傾げているソーラに、口に出てたかと硬直しながら、周りを見るとおなじみの私の部屋だ。あれからどれだけ眠っていた? とソーラを見ると、ソーラはニッコリと笑って、私の額に手をやって熱を確かめてから、説明してくれた。

「3日です。あの用水路に出た後に、レミリス様の指示を受けた自国の兵士が迎えに来て下さったので、全員大事に至らずにディザスター様の癒やしの炎で治療を終えました。

 けど、ヌファンやリエル様などの重傷者は、眠り続けていました。ヌファンは歳のこともあってあと数日は目が冷めないそうです。

そして、アンドールの被害は甚大です。今、革命軍に攻め込まれたらアンドールはあっさり落ちます。

レミリス様が、わざとアンドールに……革命軍の侵入の情報を揉み消したお陰で、アンドールは我々の国に武力強力を求めて来ました。

書類やまとめは、ナザル様やカペルリット君がまとめたので、後は印をうつだけで済みます」

「情報を揉み消したってことは、レミリスはこうなることは知ってたってことねー」

「……はい。そう、なっちゃいますね」

 多分、レミリスに試されたんだと思う。何だかんだ、私は本格的な死地になんて経験したことはない。多分……この先は自分を含めて、隣に居る人間が……大切だろうがなんだろうがいつでも死ぬ所に、私は日とを送り出し…私も行くことになるのだと、改めて思った。

「なるほど、試されたのね…」

「流石リエル様、わたくしのことをよくご理解頂けているようで、として嬉しく思います。 アッハッハッハ」

 吃驚しすぎて、体がベッドから跳ねたあとに、慌ててレミリスの声の方向を見れば、いたずらに…けれど寂しそうに笑う。あぁ……やっぱり私の決意や想いはコイツにバレバレなのかと、苦笑しながらも【歩み寄ってくれた親友】として、私は毒づいた。
 
「なに、ナチュラルに気配消して控えてるのさ…。やーい、ストーカー!」

「ええ、それが生業なのですからご勘弁を。ご体調はそこまで悪くないようで、ワタクシ安心しました」

 これが、婚約者だったら「それでも宜しいのですよ?」っと余裕綽々で言っただろう。互いに煮え切らない苦笑で互いを見て居ると、静かにドアが閉まる音がした。まさかと思って後ろを見ると、ソーラが居ない……二人っきりにされた。

「一応、書面上では婚約者のままですから」

 道化の癖に酷く悲しそうで、未練のある顔をして……そっと。ベットの中の私の上に紙を差し出した。限界まで簡略化された、婚姻破棄の書類だ。起き上がってそれを取って名前を見ると。

「これって、レミリス!」

 すでに、名前が書かれていた。レミリスの名前が……。私とレミリスの婚約破棄の場合にレミリスのほうを先に名前を書くのは不味い。理由はこの世界の王族の婚姻破棄の書類は、魔法書類で目上の人から先に書くことになっている……じゃないと、貴族社会からは、目上の人を侮辱してまで別れたかった根性なしと言うことになってしまうから。

 私達の立場的には婚姻も破棄もどっちらが書くかで、周りの評価が大きく違うのだ。これじゃ、外面を気にする貴族は、レミリスの事を避ける……。レミリスは貴族という土俵では……一生独身になってしまう。市民との結婚なら出来るが、高確率で虐められる……婚姻した嫁さんのほうが。今すぐ書類の書き直しをして、私が先にと口を開こうと顔を上げたら、レミリスの顔が悲しそうにゆらいで、一粒の涙をこぼした。

 震える手でゆるゆると、私の頭を下手くそに撫でて笑った。

「死地に送って嫌われようとも、サイ様……貴方を愛しています。他など私には考えられない……。愛する人を死地に送ることは出来るのに、この恋情は手放せないようで、このザマです。

けど、それではいけないのです。私も、貴方も、だからこそ、私に言わせて下さい」


私と婚約破棄をしてください。


「そして、カペルリットと幸せになってください。自信もって私が言いましょう……彼は貴方を幸せにできます。私ではなく、彼が」

 初めて見たレミリスの涙が、私の手の腕に落ちる。いつの間にか握られていた手は震えていて。その震えた手で、私の手に万年筆を握らせた。



 
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