全てが終わったBADEND後の乙女ゲーム転生で反逆いたします

高梨

文字の大きさ
56 / 81

妖精族の脆さと人間の脆さ

しおりを挟む
 強いハーブの香りが充満する白い部屋の中で、目の前の医者の顔をしているディザスター様に身体を見て貰って居た。普通の医者がするとおりの診断をこなしていると、数度大きく息を吸い込んで咳をした。あのアンドール襲撃事件から、また……再発してしまったのだ。あの病を、それでも仕事を……ソーラと一緒に仕事をして、リエル様をお支えしたい。だから、縋るようにディザスター様の目を見れば……。

「こほ……。私の身体は」

「ドクターストップというやつじゃな、今後一切の戦闘行為を禁じる」

 首を静かにディザスター様は振った。

「そんな!」

 家族に諭される形で、ディザスター様に頭を下げて私の身体を見て貰った。緻密に練り込まれた検査魔法が、私の身体を上から下に一巡して、ため息をついて出たのはその言葉……。なにがドクターストップか! 私は抗議をしようと口を開いた所で。

「ッッ……!」

「医者がドクターストップと言ったらストップだ。死にてぇのか」

 もう、落としを召されて丸くなったディザスター様は速かった。ヒュンという風を切る音さえも置き去りにした動作で、私の開いた口に鋭利なメスを入れた。互いに動けば、私の喉が裂かれ血が噴き出してしまうだろう。歳で柔らかくなった筈の目は、記憶の中の彼と同じ……人を燃やし尽くす【灰燼の幼子】の目をしていた。そう、彼の再生と破壊を司る癒やしの炎は童話の……。

 私が思わず怯えて震え始めた頃に、ディザスター様はメスを抜いてポケットからだしたハンカチで、自分の唾液でベタベタな口元を拭ってから、同じ布でメスを綺麗に拭いた。仕上げには殺菌とばかりにメスを軽くあぶって、座った。先ほどの垣間見えた獰猛さはなりを潜め、ほっほっほと声を上げて笑っている……が、目は笑っていない。

「主と……リエル様もそうじゃが、中途半端に妖精族の血が混ざった人間は。純血の人間よりも、それこそ、妖精よりも脆い。

一見は、妖精の身体的もろさと、人間の魔力操作の不器用さをカバーして強くはある……だが、どうしようもなく脆いんじゃよ。

主は、僅かに入った妖精族の血で外見だけはどうにか緩やかになっておるが……中身はボロボロじゃ。

自分の身体の強さと魔力の強さが反発しあって自壊する。魔法を使用したり、身体に負荷が掛かる戦闘をすれば余計に死期がはやまるじゃろう。

おまけに主の場合は、未だ治療法が見つからぬ喘息という持病を持っているからの……そろそろ癒やしの炎でも抑えるのは無理じゃろうて……。

まぁ、直接中から喉を焼いて殺菌するならば、持つがの……ほっほっほ」

「それで、済むならば喉を直接焼いてくださってもかまいません」

「わしは、この年でも人など嫌いじゃし、ひねくれ者だからの。気分が乗らん、わかったら診察は終了じゃ、さっさとゆけ」

 そう言って、私は押し出されるように診断室から閉め出されてしまった。歯を食いしばり、相変わらずの狸爺だと、些か不機嫌になりながらも帰路へついた。こんな一介のメイドが高名なディザスター様の診断室から出てきたなど、下手な貴族に見られてしまえば、他の貴族の嫌みの出汁にされて、リエル様が何を言われるかわかったものではない……。それにしても……。

 リエル様も混血にすらなれぬ中途半端に妖精の血が混じった存在ならば、このままリエル様が戦に出て……それが長引けば、戦に身を置いていた私よりも死んでしまう可能性が高いのではないか? 妖精と人間の血を中途半端に次ぐ者は大体0歳~30歳までは、どの種族よりも強力な戦闘力を持つ場合がある……けど30歳以降はいつ死んでもおかしくないほどに、身体が急激に衰えてゆくのだ。

 そう、今の私みたいに……。戦えたのに普通の妖精族レベルまで身体が衰えてしまう。







 あの、貴族達の前での大演説のお陰で、若い貴族からの指示もちょっとずつだけと集めることも出来たし、カペルとはまた心が通じ合ったし何だかんだ良い結果に終わった。

 それでも、色々と革命軍がおかしな武器やらなんやらを必死に開発しているという情報が集まり。急いで戦の準備を進めている。開発できる暇と余裕があるってことは、あちらはとっくに戦の準備は整えられている。言うなれば、あいては勝利を確実にするもう一手を作っている最中だ。それをどうにか阻止するために、急ピッチで色々進めているんだけど……。


「えーこの場合は軍を鶴翼陣にして。んで、配置は弓兵と遠距離型の魔法使いを中心に……。兵法ってほんと頭が痛くなるぅぅ……」

「リエル様、このレドビスが幾らでもお教えいたします。ですから、もう少し耐えてください」

「ひひーん」

 カペルのダンスから、今度は私が馬のように泣くことになった。兵の動かし方をレドビスにみっちりしごかれているけど。なにより、兵の一部の団員が勝手に動いてしまった場合の対処方が膨大すぎて、リエルチート脳みそでも軽くパンクしそう。

「エヴァ王国の特徴として、攻勢極限点を越す事で敗北しやすい戦力となります。

やはり、雨とぬかるみの土俵を……」


【攻勢極限点】(攻撃の限界点)

攻撃することで得られる優位は、ある一定を越えると戦力が減り攻守の優劣逆転を引き起こすため。

一定の攻撃が優位な状態で、攻めを守りに転換する指示が必要となる。


「そもそも、エヴァ王国は一点集中の攻めと籠城は得意だけど、長時間での戦闘となると弱いから、攻撃と防御の切り替えを誤ると大惨事になるからねぇ……」

「中々に難しい土地柄ですから、場合の寄っては騎士団長にも指示の支援を仰ぎましょう」

「それが確実ね」

 中々にピーキーな性能を持った子達だから、どうにもこうにも……初心者には微妙に厳しい戦力ばっかりだ。それこそ、貴族の支援とかで、どうにか士気や物資が高まってるとはいえ……私の指示で簡単に全部飛び散って消える可能性があるという事が、不安でしょうがない。

「そのように不安でしたら、やはり、諜報と暗殺部隊に力を入れましょう。指揮が不安なら相手の指揮官を潰せば……」

 こんな具合で話しは進んでゆく。


ー小話【暗殺?】ー

 一人の男が市街地の中で騒いでるのを、一人の少女が首元を掴んで引きずっているという色々おかしい光景だ。アルお母さんはこどもに「見ちゃだめ」と顔を逸らすほどに大人げなく泣き叫ぶ男が、さらに大声を上げて暴れていた。

「いやだぁぁぁぁ! 何で俺がワジェライ王国なんか。うわーん!」

「あのですねー嘆きたいのは私なんですぅー。貴方が団体行動を乱しまくるからですしぃ~。これが出来たり情報持ち帰れましたらぁ~。あのペルミルでしたっけぇ? その娼婦さんを専門に付けてくれるそーですよー」

「はっはっは! 私の名前は、マーベラスト・サット・スズー。好きな言葉は人助けと 趣味は女あさ、じゃなくて趣味は人の役にたつことです!」

「人の【厄】になってますねぇーたしかにー」

 団体行動を逸脱&違反しまくってるし、マーベラストのセクハラ報告でどうにかして下さい! というあらゆる方面からの、クレームに頭を悩ませていると、騎士団長とレドビスに聞いたリエルの命令により。暗殺の命令をを受けたマーベラス。そして、そのお目付役を命じられたパトリシアの二人。

 そして、女の名前を出すと「あっろは~!!」なんて踊り出しそうな勢いのマーベラストにイライラを募らせるパトリシアの凸凹珍道中。見た目はロリだけど子供は10以上の子持ち獣人魔術師と、変態という文字を頭の上から足の爪まで貼り付けたような女狂いの珍道中。

【じゃあ、パトちゃん今回もよろしくね~】

「何がよろしくなんですかねー」

 引き取ってくれて清々する、と言わんばかりに良い笑顔で命令してきたリエルに若干殺意が湧くものの、我が主であるリエル様を憎めずにため息をついて今回も、頑張りますかぁーと気の抜けた顔で、マーベラストの後をてちてち、パトリシアは付いて行った。





 




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

処理中です...