全てが終わったBADEND後の乙女ゲーム転生で反逆いたします

高梨

文字の大きさ
58 / 81

戦の高揚

しおりを挟む
【私も彼女も反逆する。私は私の為、彼女は他人と自分の為に】

 私は目を瞑れば別の世界の事を見ることが出来た。私の居る世界を作った世界風に言うなればアカシックレコードという物にアクセスしているような感じだ。私は、私は全ての元素をその身に宿し新たな属性……無属性を扱える唯一の存在。そう、作られた。世界を見れるように作られた。悲しい生い立ちになるように私は作られた。

 ままが狂っているなら私はもっと先に狂っていた。この世界から私達を作った世界に手を伸ばして……適正のある魂を引き上げて身体を交換する。

【この子、別に悪くないのになぁ。メアリースーって役割なのかな】

 唯一冷静に見てくれたあの人の魂を引っぱり上げて、あんな糞みたいな世界に押し込むのは気が引けた。

でも……

【まぁ、でもいいなぁ……こんな失敗資本主義社会じゃなくて、やっぱ二次元が】

 利害が一致しているから、私は彼女を引き込んだ。触媒を通じて彼女の魂を引きずりだして、私の中に入れる。けど、下手に彼女の魂だけを身体に押し込んだら、拒絶反応で魂が砕けるだろうから、凄く痛いけど自分の魂を半分に引きちぎって自分の中に残して……。

 大橋賽の身体に自分の魂を入れた。

 日本人という人種らしい黒毛と茶髪の混じった髪質と、少しのっぺりとして大人なのに子供っぽい顔立ち。少し小じわが目立つ口元はニッコリと笑えば、朗らかな人の良さが溢れるような顔となった。偶々、仕事帰りで着替えるところだったのだろう、姿見の前で蹲っていた。

 足下には忌々しい触媒が、忌々しいラストを飾るページを開いて私に見せつけていた。本に見せつけるなんて意思はないが、イライラしてきた私はそう感じて、触媒を踏みにじった……何度も何度も。

【出生に恨みを持つテニクの再来と呼ばれた子供を、クロージスの子供が打ち倒し……ナザルカラクと結ばれて、奴隷として悲惨な生活を送ったカペルという子供が、打ち倒したテニクの再来にトドメを刺す……家族の恋愛ファンタジー。輪廻とロンドの果ての二次創作……。忌々しい……。待っててね、お母さん……作った責任を取って貰うから】



 私は異世界で、大橋賽も同じ異世界で、互いに反逆へと進んでゆく。そうなるように、私は今まで苦しんでも世界を怨まないように頑張ってきたのだから、やりとげて見せる。







【天乱蒼天 一切を濁さず 縣の縛り解き放ち 大陸の自由を約束する 区別を否定し我々に縛りはなし 恐れはなし 帝の登るところに陽が連れ立つ 去れば陰が降り立つ 太古より続くその輪廻を見届け運び 全ての縛りを解き放つが我である

 上級風魔法 クリマートゥリーフ・マウスィミー】

【立つ瀬は背徳 退き瀬は甘美 押し引きを一体その名を刻む 底に支えし塵に沈む我の名は えにしの意図
威力補助詠唱】

 最初にカペルと魔術部隊に、風魔法の大規模上級風魔法を放って貰った。相手の戦線構築を邪魔する目的だから、攻撃が素早くて、なおかつ消費の少ない風魔法を一発。その代わり攻撃威力が低いけど、私の無属性の威力補助を持って……国境に設置された砦と壁をまるごと吹き飛ばした。死に急ぐ馬鹿はいないだろうけど、今これだけそろって居る状態で向かってくる兵士は皆無であることを願う。

「全軍……前進」

 完全に情報を遮断した上での奇襲攻撃は成功。そのまま砦から押し入り……内側と外側からワジェライ王国を叩き潰す。流石に砦の中に押し入れば、敵の勇敢な物から無謀な物まで一斉に追い掛かってくるのを……

「ゴメン」

「ぐぁ」

 まず先に私から相手の首を跳ねた。まだ、若く未熟な兵士といえど、女の私があっという間に人の首を跳ね上げたことで、兵士の何人かが剣を捨てて逃げる。それは深追いせずに前に進む指示を送った。エヴァ王国の戦力的には長期戦は向かない。短期で損害をだしてから、内部を手薄にして暗殺部隊が動き安くなるように仕向ける。

「我が国の王リエル様が一人討ち取ったぞ! 我々も遅れを取るな! すすめッッッ!」

 指揮官の叱咤によって士気が上がって予想よりも兵士の動きが良くなる。カペルは、のらりくらりと相手を伸してから魔法で戦闘不能にするという、器用な立ち回りをしている。今この場では私とカペルは強さを示すためにどうしても前に出ないと行けない。

 本当に危険なお仕事。

 私もカペルも言葉はないけれど、互いの体調を気にし合いながら、敵と剣を交えた。あのトロールの時のお陰か、眼球スレスレに刃物が振られても動揺せずに避けられる。あのときの……カペルが死にかけたあのときよりは怖くない。けど、油断はできない。攻守の入れ替えは少しでも間違えれば、我々の方が大打撃を被る……。どんなときでも冷静に指揮棒を振る機会を窺って。

「ごめん」

「が」
 
 敵の首と四肢を跳ねる。鎧は気がつけば血みどろで、私の白い髪は血に染まる。あのときの暴走を思わせるクラクラとする血の匂いと、先ほどまで生きていたことがわかる暖かい血肉の残骸が顔に当たる感触。むせ返る吐き気が意識をもうろうとさせると同時に、感覚は何故か研ぎ澄まされていき身体の動きはよくなる。

高揚感から、行けるかもしれないという気になってくるのを何度も頭で言い聞かせて押さえつけながら。

「全軍…前進」

 予定通りに前進の指示を出す。







 血肉が舞い踊る。そんな光景……僕の血の繋がった恋人は戦場でそれはそれは綺麗に舞って居る。今にも散って消えそうな雪の花のように。朝溶けの雪が春に飲み込まれて消えるように、美しい白銀の髪は血を纏って戦場に咲いていた。

【良いですか、絶対にリエル様に暴走を起こさせないように……そして。戦の高揚感に飲み込まれないように監視してください。それが、貴方の……この戦場で指揮官のリエル様よりも重要な貴方の役割となります】

 僕の役割をこの乱戦の中で認識して、リエルの目を見る……あのリエル様とは思えない血走った目。急いでリエルの傍へと近寄って、耳打ちをする。

「そろそろ撤退の時です」

「うん、わかった」

 わかったと無機質に言いながらも、ちゃんと声を張り上げ撤退の声をあげるリエル。いくつかの兵は戦の高揚感で言葉が聞こえていないのか、未だに撤退することなく戦い続けているが仲間はそれを止めることなく忠実に仲間を見捨てて行く。それを、リエルがどうにか指揮しようとするところを僕が止めて下がらせる。

「戦の場所で、大事なのは指揮に忠実な物です……行きましょう」

「……」

「リエル」

「うん」

 優しい彼女は、そういう切り捨ての指示がうまく出来ない。だから、僕が代わりに切り捨てる事を担うことにした。苦しいし、その判断を下す度に怨嗟の声の幻聴が聞こえる。けど、それでも僕はやらないと行けない……。だって、僕はリエルが皆が好きだから、僕は切り捨てても前に進まないと。

【カペル君】

 今度は、僕がリエル様の手を引いて進まないといけないんだ。今度は……僕が……。



ー小話【チョコットデー】ー


「まさか消し炭を送られるとは、酷いではないですか」

「やかましい、大人しく犠牲者になってよ」

 実は言うと、この世界もバレンタインデーなる物があるらしい。なので、厨房の人に無理を言って使わせて貰って居るんだけど。

「ひーっひひ、こりゃすげー。これだけでなんか人を殴打できそ、あいでッッ!」

「殴るよ」

「殴ってから言わないでくれ!!!」
 
 うまく出来ないので、グランド君とレミリスを実験台にしてチョコを作ってます。何故か絶望的なまでに堅くなるチョコレート。ちゃんと普通に冷やしているのになんでこんな、人を殺害できそうなほど異常な堅さを誇るチョコが出来上がっるんだろうと何度も首を傾げた。

「う~。これじゃカペルにあげられる出来にならない」

「焼けば消し炭 冷やせば凶器 しっかりとお二人の血を継いでいるのではないですか? アッハッハッハ」

「チョコレートだけピンポイントに呪われてたまるか! うまくなるまで二人とも永遠に付き合って貰いますからね!」

「「え?」」







 



しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

処理中です...