全てが終わったBADEND後の乙女ゲーム転生で反逆いたします

高梨

文字の大きさ
61 / 81

同盟はここにあり

しおりを挟む
 世界は歪んで居る。子供ながらにそう教えられた。毒の効果を知るためにわざと治療をせずに経過を見る医師。そして、その医師が作った物を事実を知らぬ物を見れば、その医師は英雄として称えられる……。裏でどんなことをしていたのかも知らない人々は。

 人々は誰しも自分の都合の良い悪人と英雄を求める。

 今は、私の愛すべき元婚約者で現在の親友がそれに飲まれまいと足掻いている。私は情報を司る一族の現当主だ。情報を司る物が前線にでるなど、愚行極まりない行いだ。誰が見てもそう言うだろう……。

「帰ったらリエル様にどやされるぞ~お前」

「私はリエル様直々に城と民を任されたのだ。怒られる筋合いなどないさ。私はいつも最善しかとらない」

「最善は最善だけど、お前のその最善は若干愉悦がはいってるよな」

 口角を上げてもう1人の親友に笑いかける。そして空を見ればゆっくりと着実に城下へと着弾へ向かう雷の砲弾が目を焼くように光と放つ。泡立つ死の匂いと市民の恐怖がゾクリと笑顔をそそる。こうすれば、こうすれば、我が愛しの君であり親友であり、リエル様に有利に事が運び。

エヴァ王国での王として、英雄として歴史に綴ることができるだろう。

「当たり前だ。私は私の全てを持ってして英雄を作り上げてみせる。そして、それに踊らされている国民を見て地獄にて笑ってやるさ」

「情報を司る一族の例に漏れず……中々の狂い人です」

 グランドと待機させている兵士以外の女の声が聞こえる。後ろを向けば銀髪の女がいた。あのときの使者の女ではなく。別のクイックシルバーの女だ。両端に低い位置で結ばれた髪に種族特有の色のない顔がこちらを見ている。この妖精族のクイックシルバーがここに来ていると言うことは。

「準備が整いましたということでよろしいでしょうか?」

「ええそうです。とっくにできてます」

「結構、ありがとうございます。戻ってよろしいですよ」

 言うのが先か……言った瞬間に音もなく消えてしまった。「さて」という声を呟いて再度……死を呼び込む雷の砲弾を見て、それでも私は笑いを堪えられなかった。

「それでは【リエル様が】結んだ同盟により、妖精族の手をお借りできるようになりました。それでも、時間が時間ということもありまして、兵士及び残りの魔術師諸君らにも詠唱と魔力補助を行って貰います」

 そうして、100は言われ続けた道化顔で国を守る為に残された。魔力を持つ物に向けて踊るようにくるりと振り向き笑いかける。現在のここは城下町の中でも、一番被害のでる着弾中心地だ。今回の事が失敗すれば私もろとも全ての兵士が消えるだろう。そんな緊張感を漂う中で、それでも私は笑った。

「なに、失敗すれば死に……成功すれば生きる。それのみでございます。私も【リエル様に】国を預かった身として前線に立ち。魔力補助を手助けしましょう。とはいいましても、私の種族はドワーフですので、普通の妖精族よりは魔力は劣りますが。頑張ると致しましょう。では、始め」

 残りの魔力のある兵士と魔術師お呼びに、クルクラフトから派遣されてきた妖精族の軍でこの雷の砲弾を防がなければならない。

【大規模合同結界】

 成功率はお世辞にも高いとは言えませんが、これが最善……私は成功させてみせましょう。

「この命に賭けて」







 あぁ、今度は私の剣が折れたのか。

 ゆっくりと暗くなっていく視界と世界に向けて、渾身の悪態をついた。

クソッタレ






「リエルッッ! 生きて!」

【折れた剣で我が身を切り裂けど立ち上がれ、それが……貴方と私の進む反逆の道。名を刻め我が名はなんとする】

 無意識だった。必死だった。

 あのときのトロールのように、カペルの声とリエルの声で私の意識は覚醒する。痛いけど、辛いけど、切られた身体で、折られた刃に手を伸ばして握り閉めた。子供の時とは違って刃も鋭く自分の力も強い。だからこそ、この綺麗な切っ先は私の手の平の肉を切り裂く。

それでも……。

「なッ」

「うああああああああああああああああああああああああアアアアアアアアアッッッ!!!!!」

 腕がなくなっても、足がなくなっても、私は、私なりにリエル・メーカー・アンドールとして、決めたんだ。

前へ……進めッッ!

「折れた剣で、なんでッ!」

「ああああああああああああああ!!!」

 型も形式もバラバラだ。けど、油断して間合いに入った槍の機動力と、折れたことによってダガーと同じ位の長さになった切っ先の機動力で、フリアエを翻弄した。そして、機動力について行けずに体勢を崩した瞬間に……。

「いやあああああああああああああああ!!! 痛い、痛いぃぃぃ!!!」

星純の槍を持つ手を一薙ぎして切り裂いた。

 痛みになれていない御姫様であるフリアエは、痛みに耐えられずに槍を手放した。とっさに渾身の力を振り絞って槍と蹴り飛ばして端っこの方へと飛ばした。それと共に力が抜けて地面へと顔から倒れる私は……目を瞑って衝撃に備えたけど、いつまで経ってもその衝撃は来ないどころか。

 誰かの温もりに包まれているのがわかった。

「私を殺すんじゃないの?」

 その誰かの温もりは痛さに、さっきまでもだえていたお母さんが私の身体を支え片手でぎこちなく地面へと座らせてくれた。痛みで歪んだ顔と、なりを潜めるが僅かに灯る……私への。リエル・メーカー・アンドールとアンドール国王への憎悪の目。それでも、先ほどの錯乱なんて嘘のように優しく私を包むように抱きしめた。血の濡れた手で

「もし、私のせいで生きるのが辛いなら。殺してしまおうと思ったの……私の責任として」

「それは、私が4歳頃で保護下にあったらそれは通じるだろうけど。ほら、見てよ。私もう14歳だよ? あと一年で成人。ここまでほっとかれてから、辛いだろうって意見も聞かずに殺されたらたまんないよ。それに、強いて言うならお母さんじゃなくて、あの馬鹿阿呆デブ&不細工アンドール国王のせいだよ」

「そう……ね、何もかも遅すぎて。それでも私は貴方に向き合えなかったのね。もう、大人になるのにね……。」

 優しく抱きしめてくれて、しとしと涙を流すお母さん。感覚と喋り方で気が触れてしまっているのはわかっていた。だから、怒るもなにも出来なくて。私は逆にお母さんの頭を撫でて慰めた。不意に何かの視線を感じてその方向を見ると。

「……」

 カペルが物陰から顔を出していた。どうやら、あの声は幻聴ではなくて……本物らしい。物陰から私達の様子を伺うカペルに笑いかけて「また、カペルに助けられたね」っと口パクで言えば伝わったのか、カペルの目からほろりと涙が流れた。そうして、暫く微妙な距離感のままに、お母さんを慰め続けて……落ちついた頃に言った。

「フリアエ様、貴方をエヴァ王国女王の権限で……拘束いたします」

「ええ、謹んで……お請けします」

 凛とした返事は、ゲームの中で聞いたクロージスよりも……重く響き渡るような声音だった。


ー【小話】血縁ー

医学資料654ページ

身体が貧弱な妖精族と魔力が貧弱な人間族が交わった場合に、一定の確率で中途半端が産まれる。

中途半端は、人間の特性と妖精の特性を正しく継ぐことが出来ずに……自身の身体に合わない強さを持ってしまう。

そのために、初期の生誕~30歳までは無類の強さと頭脳を誇るが、その後は身体が次第に自壊していき。

通常の人間族よりも短い生命となる場合がある。

勿論、超人的な能力を繋がない中途半端もおり、その場合は気付かずに死んでゆく物が多数。

 そして……例外なく50年までに、中途半端は死することが確認されている。

また、中途半端の概念自体が近年発見されたことにより、未だ研究が足りておらずに謎の多い生体となっています。

神は天才を好むから、才ある者は早死にすると言われて居ますが。もしかしたら……歴史に名が残る天才はみんな中途半端なのかもしれません。

【研究情報提供者 ソーラ・マーヤン】
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?

せいめ
恋愛
 政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。  喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。  そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。  その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。  閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。  でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。  家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。  その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。    まずは亡くなったはずの旦那様との話から。      ご都合主義です。  設定は緩いです。  誤字脱字申し訳ありません。  主人公の名前を途中から間違えていました。  アメリアです。すみません。    

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生した世界のイケメンが怖い

祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。 第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。 わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。 でもわたしは彼らが怖い。 わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。 彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。 2024/10/06 IF追加 小説を読もう!にも掲載しています。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

処理中です...