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4.図書室

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 私の細やかな願いは、思わぬ形で叶った。
 というのも、私が所用で登城した帰り、文官たちの話し声が聞こえてきたのだ。

「レスター男爵子息は、また図書室を利用しているのか?」
「ああ。今回も数冊借りる予定だと言っていたよ。嫁さんにも頼まれてるんだとさ」
「嫁さんって……ロイジェ公爵の元婚約者じゃないか? 侯爵令嬢に負けたのに、公爵を諦めきれなくて披露宴に参加したって話だぞ」
「そうらしいな。ロイジェ公爵夫人に嫌がらせをしようとして、警備につまみ出されたんだって?」
「いや。公爵に愛人になるように迫ったと、私は聞いたぞ」
「どれが真実でも最悪だな。いくら光魔法が使えるからって、レスター男爵家もよくそんなお嬢様を娶ったもんだ」

 アンリの噂は、何枚も尾びれがついて広まっていた。
 レイラに嫌がらせ?
 私に迫った?
 どれも事実無根の作り話だ。

 しかし、そんなことよりも今はレスター男爵子息だろう。
 私は早速図書室へ足を運んだ。

 王城に設けられた図書室は、王立図書館ほどの規模を誇り、他国の文学書も多く取り揃えている。
 そして貴族であれば、たとえ没落間際の男爵家であっても利用できる寛容さを持つ。

 黒い扉を開いて中に足を入ると、紙の匂いが鼻腔に入り込んだ。

 嫌いというほどではないが、好ましくもなく、眉を顰める。
 広々とした室内には、天井付近まで届く高さの本棚がずらりと並び、本が隙間なく揃えられている。
 どこか威圧感のある光景に、一瞬息を呑んだ。
 いかんいかん、レスター男爵子息を探そう……

 隅には、読書用の長机と椅子が用意されている。
 利用者の多くは老人だったが、それに混じって若い青年がいることに気づいた。

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