60 / 68
間話 掟と話し合いと…集合?
10
しおりを挟む
「…んな、阿呆な事する暇あるなら用事が済ませよや。それで連れて来たんやろ」
ポカンとしているアテナの横、麦わら帽子を顔に乗せていた男性──恐らく農国王がのそりと身を起こした。
黒い短髪に細い目、土で汚れている作業着…特徴も少なく印象に残り難い顔立ちと相まって、どこにでもいる民間人にしか見えない。こちらもあの農民スタイルなサルゴンの父親と言われて納得出来る。
「…用事、ですか…」
驚きの感覚というものがマヒしてきているのか、"国王"というとんでもない相手の事よりも"用事"という発言が引っかかった。
──恐らく、否、確実に先程フェルナンド達にも散々言われた"次期王位継承者との婚姻条件に相応しくない"という話だろう。王子達との話し合いでアレなのだから、国王達からしたらアテナの存在は見過ごせない"異物"に違いない。
紅茶の湯気が燻る。自分の心音が体内に響き、手に汗が滲んだ。
国王は"国"の頂点であり、彼らが白と言えば黒も白になる。アテナとザードの仲を認めない──どころか五つ国から出て行けと下し、国外追放を強制実行する事も可能なのだ。
今まではレオの優しさで見逃してもらっていた…のかもしれない。
アテナは俯いて、目をギュッと瞑った。
「…そうだね」
先程までの軽い声色ではなく、静かで淡々とした創王リーフの言葉にアテナの肩はビクリと跳ねた。
俯いて目を瞑っている為見えないが、他の国王達の視線も痛いほどに感じる。
──まるで処刑される罪人のようだ。
「アテナちゃん」
「は…はい…」
「ザード君の事、どの位好きか歌で表現してみて」
「……え?はい?」
「踊りでも良いよ」
歌!?踊り??!!
あまりに突拍子もなく、そして驚き過ぎて目を開けて顔を上げると、ニコニコと微笑むリーフがアテナを覗き込んでいた。
「恥ずかしがらずに恋バナしよーよ☆あ、いきなりじゃ話しにくい?じゃあ僕からするね!僕の奥さんのアイカはねぇ美人で可愛くてツンデ」
「もう黙ってろ、バカ草。話が進まない」
「ほれ、菓子と茶や」
困惑するアテナに身を乗り出して熱弁し始めようとしたリーフは、ヒイラギによって襟首を掴まれ椅子に座らされた。ラルゴはそこへすかさずチーズケーキと紅茶(アテナに出されていた)をスライドさせ──見事な連携だ。
レオは一連の連携を横目に溜め息を吐いた。
「アテナ、お前をここに連れて来た理由は、お前自身の気持ちを聞きたかったからだ。ザードは……昔から人の話を聞かずに一人で突き進む癖があってな…今回の事もアイツの一方的な気持ちで動いているのではないかと心配になった……聞かせてくれ。お前の本当の気持ちを」
「レオ様…」
レオの表情は"一国の王"ではなく"ザードの父親"であり、国の未来よりもザードの心配をしているように感じられた。
──レオだけではない。
執務室に入って、国王達から感じる雰囲気は"アテナとザードの未来"を純粋に案じているものだ。
先程、フェルナンドは「王とは人である前に国を支える柱でなければならない」と言っていた。確かにそうなのかもしれない。そうあらねばならない。
しかし、目の前の王たちは"国王である前に人"であってくれたようだ。
「私は…」
アテナはゆっくりと、言葉を選ぶように言った。
「私はザード様の事が好きです。認められなくても…この気持ちだけは本当です」
「…その言葉に嘘偽りはないな」
「はい」
その言葉を聞き、一息吐くとレオは深く頷き、微笑んだ。言葉にはしないが安堵しているようだ。他の二人の王も同様の様子で息を吐いている。残りの何の反応もしていないリーフは話を聞いているのかいないのか、ケーキを優雅に食べている。
ポカンとしているアテナの横、麦わら帽子を顔に乗せていた男性──恐らく農国王がのそりと身を起こした。
黒い短髪に細い目、土で汚れている作業着…特徴も少なく印象に残り難い顔立ちと相まって、どこにでもいる民間人にしか見えない。こちらもあの農民スタイルなサルゴンの父親と言われて納得出来る。
「…用事、ですか…」
驚きの感覚というものがマヒしてきているのか、"国王"というとんでもない相手の事よりも"用事"という発言が引っかかった。
──恐らく、否、確実に先程フェルナンド達にも散々言われた"次期王位継承者との婚姻条件に相応しくない"という話だろう。王子達との話し合いでアレなのだから、国王達からしたらアテナの存在は見過ごせない"異物"に違いない。
紅茶の湯気が燻る。自分の心音が体内に響き、手に汗が滲んだ。
国王は"国"の頂点であり、彼らが白と言えば黒も白になる。アテナとザードの仲を認めない──どころか五つ国から出て行けと下し、国外追放を強制実行する事も可能なのだ。
今まではレオの優しさで見逃してもらっていた…のかもしれない。
アテナは俯いて、目をギュッと瞑った。
「…そうだね」
先程までの軽い声色ではなく、静かで淡々とした創王リーフの言葉にアテナの肩はビクリと跳ねた。
俯いて目を瞑っている為見えないが、他の国王達の視線も痛いほどに感じる。
──まるで処刑される罪人のようだ。
「アテナちゃん」
「は…はい…」
「ザード君の事、どの位好きか歌で表現してみて」
「……え?はい?」
「踊りでも良いよ」
歌!?踊り??!!
あまりに突拍子もなく、そして驚き過ぎて目を開けて顔を上げると、ニコニコと微笑むリーフがアテナを覗き込んでいた。
「恥ずかしがらずに恋バナしよーよ☆あ、いきなりじゃ話しにくい?じゃあ僕からするね!僕の奥さんのアイカはねぇ美人で可愛くてツンデ」
「もう黙ってろ、バカ草。話が進まない」
「ほれ、菓子と茶や」
困惑するアテナに身を乗り出して熱弁し始めようとしたリーフは、ヒイラギによって襟首を掴まれ椅子に座らされた。ラルゴはそこへすかさずチーズケーキと紅茶(アテナに出されていた)をスライドさせ──見事な連携だ。
レオは一連の連携を横目に溜め息を吐いた。
「アテナ、お前をここに連れて来た理由は、お前自身の気持ちを聞きたかったからだ。ザードは……昔から人の話を聞かずに一人で突き進む癖があってな…今回の事もアイツの一方的な気持ちで動いているのではないかと心配になった……聞かせてくれ。お前の本当の気持ちを」
「レオ様…」
レオの表情は"一国の王"ではなく"ザードの父親"であり、国の未来よりもザードの心配をしているように感じられた。
──レオだけではない。
執務室に入って、国王達から感じる雰囲気は"アテナとザードの未来"を純粋に案じているものだ。
先程、フェルナンドは「王とは人である前に国を支える柱でなければならない」と言っていた。確かにそうなのかもしれない。そうあらねばならない。
しかし、目の前の王たちは"国王である前に人"であってくれたようだ。
「私は…」
アテナはゆっくりと、言葉を選ぶように言った。
「私はザード様の事が好きです。認められなくても…この気持ちだけは本当です」
「…その言葉に嘘偽りはないな」
「はい」
その言葉を聞き、一息吐くとレオは深く頷き、微笑んだ。言葉にはしないが安堵しているようだ。他の二人の王も同様の様子で息を吐いている。残りの何の反応もしていないリーフは話を聞いているのかいないのか、ケーキを優雅に食べている。
0
あなたにおすすめの小説
婚活嫌いのパイロットは約束妻に恋をする
円山ひより
恋愛
湯沢蕗(ユザワ フキ) 28歳
スターブルー・ライト航空株式会社 グランドスタッフ
×
向琉生(ムカイ ルイ) 32歳
スターブルー航空株式会社 副操縦士
「ーーじゃあ、俺と結婚しようか」
さらりと言われた言葉。
躊躇いのないプロポーズが私の心を乱す。
「大切にすると約束する」
指先に落とされた、彼の薄い唇の感触に胸が詰まった。
私は祖母の遺言に則って実家のカフェを守るため、あなたは広報動画出演の影響による数々の迷惑行為対策と縁談よけに。
お互いの利益のための契約結婚。
『――もう十分がんばっているでしょう』
名前も知らない、三年前に偶然出会った男性。
孤独と不安、さみしさ、負の感情に押しつぶされそうになっていた私を救ってくれたーーきっと、訓練生。
あの男性があなたであるはずがないのに。
どうして、同じ言葉を口にするの?
名前を呼ぶ声に。
触れる指先に。
伝わる体温に。
心が壊れそうな音を立てる。
……この想いを、どう表現していいのかわからない。
☆★☆★☆★☆
こちらの作品は他サイト様でも投稿しております。
皇宮女官小蘭(シャオラン)は溺愛され過ぎて頭を抱えているようです!?
akechi
恋愛
建国して三百年の歴史がある陽蘭(ヤンラン)国。
今年16歳になる小蘭(シャオラン)はとある目的の為、皇宮の女官になる事を決めた。
家族に置き手紙を残して、いざ魑魅魍魎の世界へ足を踏み入れた。
だが、この小蘭という少女には信じられない秘密が隠されていた!?
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された皇后を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
皇帝陛下の寵愛は、身に余りすぎて重すぎる
若松だんご
恋愛
――喜べ、エナ! お前にも縁談が来たぞ!
数年前の戦で父を、病で母を亡くしたエナ。
跡継ぎである幼い弟と二人、後見人(と言う名の乗っ取り)の叔父によりずっと塔に幽閉されていたエナ。
両親の不在、後見人の暴虐。弟を守らねばと、一生懸命だったあまりに、婚期を逃していたエナに、叔父が(お金目当ての)縁談を持ちかけてくるけれど。
――すまないが、その縁談は無効にさせてもらう!
エナを救ってくれたのは、幼馴染のリアハルト皇子……ではなく、今は皇帝となったリアハルト陛下。
彼は先帝の第一皇子だったけれど、父帝とその愛妾により、都から放逐され、エナの父のもとに身を寄せ、エナとともに育った人物。
――結婚の約束、しただろう?
昔と違って、堂々と王者らしい風格を備えたリアハルト。驚くエナに妻になってくれと結婚を申し込むけれど。
(わたし、いつの間に、結婚の約束なんてしてたのっ!?)
記憶がない。記憶にない。
姉弟のように育ったけど。彼との別れに彼の無事を願ってハンカチを渡したけれど! それだけしかしてない!
都会の洗練された娘でもない。ずっと幽閉されてきた身。
若くもない、リアハルトより三つも年上。婚期を逃した身。
後ろ盾となる両親もいない。幼い弟を守らなきゃいけない身。
(そんなわたしが? リアハルト陛下の妻? 皇后?)
ずっとエナを慕っていたというリアハルト。弟の後見人にもなってくれるというリアハルト。
エナの父は、彼が即位するため起こした戦争で亡くなっている。
だから。
この求婚は、その罪滅ぼし? 昔世話になった者への恩返し?
弟の後見になってくれるのはうれしいけれど。なんの取り柄もないわたしに求婚する理由はなに?
ずっと好きだった彼女を手に入れたかったリアハルトと、彼の熱愛に、ありがたいけれど戸惑いしかないエナの物語。
悪役令嬢、心理学無双で氷の騎士様の心を溶してみせます
希羽
恋愛
公爵令嬢セラフィナは、ある日、自分が前世でハマっていた乙女ゲームの「悪役令嬢」に転生したことを思い出す。目の前に迫るは、皇太子からの婚約破棄と、その先にある破滅の運命。
しかし、彼女は絶望しなかった。むしろ、歓喜に打ち震える。
なぜなら、婚約破棄は、ゲームで最推しだった「氷の騎士団長ケイン」に自由にアプローチできる最高のチャンスだから!
元・心理科学者だった彼女は、その知識を総動員し、推しの心を科学的に攻略するという、前代未聞の壮大な「実験」を開始する。
「単純接触効果」でストーカーと誤解され、「類似性の法則」で付け焼き刃がバレ、「吊り橋効果」は不発に終わる…。数々の実験は空回りするばかり。しかし、その奇妙で予測不能な行動は、鉄壁だったはずの氷の騎士の心を、少しずつ、そして確実に揺さぶり始めていた。
これは、最強の頭脳を持つ悪役令嬢が、恋という名の最大の謎に挑み、自らの手で最高のハッピーエンドを証明する、痛快な逆転ラブコメディ。
田舎暮らしの貧乏令嬢、幽閉王子のお世話係になりました〜七年後の殿下が甘すぎるのですが!〜
侑子
恋愛
「リーシャ。僕がどれだけ君に会いたかったかわかる? 一人前と認められるまで魔塔から出られないのは知っていたけど、まさか七年もかかるなんて思っていなくて、リーシャに会いたくて死ぬかと思ったよ」
十五歳の時、父が作った借金のために、いつ魔力暴走を起こすかわからない危険な第二王子のお世話係をしていたリーシャ。
弟と同じ四つ年下の彼は、とても賢くて優しく、可愛らしい王子様だった。
お世話をする内に仲良くなれたと思っていたのに、彼はある日突然、世界最高の魔法使いたちが集うという魔塔へと旅立ってしまう。
七年後、二十二歳になったリーシャの前に現れたのは、成長し、十八歳になって成人した彼だった!
以前とは全く違う姿に戸惑うリーシャ。
その上、七年も音沙汰がなかったのに、彼は昔のことを忘れていないどころか、とんでもなく甘々な態度で接してくる。
一方、自分の息子ではない第二王子を疎んで幽閉状態に追い込んでいた王妃は、戻ってきた彼のことが気に入らないようで……。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる