やっぱ男って最高!

下村美世

文字の大きさ
2 / 8
一章 「最も天使に近い悪魔」

第2話

しおりを挟む
 太一に家を追い出され、行くあてのない私は公園に行くことにした。
 公園にいけば、男が群れている。

 そして、ナンパがくるかもしれない!
 

  私は浮き足立ちながらも、内心引っかかっていた。

 もちろん、太一のことで。
 

…中学2年まで、太一とはごく一般的な幼馴染の距離感を保っていて、会えば挨拶する程度の仲だった。

 それなのに、何故あんなクソヤンデレになってしまったのか。
 私はヤンデレは勘弁だ。

 誰か一人の者になんてなれないし、ならない。

 ビッチとヤンデレって、すごい相性悪いと思うんだよね。

 思い当たる節はある。きっと太一は私に恩情を感じているのだ。あの時の、あの事件のせいで。
 
 太一、あんた勘違いしてるよ。
 私は感謝されるような人間じゃないよ。

 あんたは私に恋してるんじゃない。
 私への感謝を恋情だと勘違いしてるだけ。

 だからあんたは恋愛対象外なのよ。幼馴染という理由より、本当はそっちの方が大きいかも。

 
「…ったく、太一の奴」

 勘違いなら早く気付けや太一。

 ロングため息をつき終わった時、気づけば公園にたどり着いていた。


 辺りはすっかり夕焼けに包まれ、赤々とした光が公園を覆っていた。

 
「…男はいねがー!?…いねぇし」


 公園には誰もいなかった。

 赤色の景色に、私は一人ポツンと佇んだ。

 はー、今日はついてないなぁ!

 ブランコや滑り台、シーソー、広場などで構成されているこの公園はナンパの聖地として有名である。

 私が小学生のころ、最寄の公園ではなくここを好んで遊んでいたのは、ずばりそういうわけである。

 …こう思うと、私って本当にビッチのクズなんだなぁ。


「男どころか人っ子ひとりいないって。過疎りすぎでしょ。良い子は暗くなる前に帰るってか」


 だらだらとブランコまで歩くと、腰を下ろす。

 誰かがいたずらで、ブランコをぶら下げるチェーンを柱にぐるぐる巻きにしてくれたおかげで、鏡花はバランスを崩して盛大に転げ落ちた。


「きゃっ!…いて…」

 顔とか傷ついてないよね!?

 鏡で確認したけど大丈夫そうだ。
 命より顔が大事だから、顔が傷ついてたら私は発狂していた。


「ふっ。俺ならもっと優雅にブランコに乗れるぜ」


 背後から突然声をかけられて、鏡花は情けない声を上げる。


「ぬわっ!だ、誰よ?


 そこに立っていたのは、サラサラの耳元でカットした茶髪に、切れ長の大きな瞳。きゅっと結んだ唇をした、とっても綺麗な顔立ちの男。

 それに加え、身長が高くて細身という、まるで女子にモテるためだけに生まれたような男だった。


 私と同じ高校の制服を着ているし、青のネクタイなので、学年が同じであるらしい。

 太一が精悍な男前だとすると、こいつは甘いマスクの、アイドルのようなイケメンである。

 どちらにしろ、鏡花の好みとしては論外だが。

「俺か?俺は宮木秀(みやき しゅう)だ。書きは、王宮の宮に、woodの木に、優秀の秀だ」


鏡花が他人の名前を、しかも漢字まで(英語混ざっていたが)すぐにインプットしたのは生まれて初めてだ。

 超ご丁寧に自己紹介をいただいたところで、宮木秀は鏡花に向き直る。

「お前の名前は知っているぜ。久住鏡花(くすみ きょうか)っていうんだよな?」

「…はい。久住でございます。」

「噂は聞いてるぜ?告れば必ず引き受けるんだろ?」

「はい!当然でございます!」

「何故、告白を全て受けるのだ?久住よ」

 さりげなく馴れ馴れしく呼び捨てられているが、男なので許したる。


 んー、何故か。
 それは、1つに決まってる。


 鏡花が生まれてからずっと、持ち続けてきた真理。


「そこに、男があるから。」

鏡花は拳をぎゅっと握りしめた。

「私は、クズなんです。昔っから男が大好きでたまらんのです。しかも、ブス専なんです!」

「えっ」

宮木秀は、まるでゴミを見るような目をした。


「じゃあ、俺のこと、 ものすごい嫌いじゃないか?」


 いやまあ、確かに私的に顔は好みではないけどさ。
 どこから湧いてくるのよ、その自信。


「俺の顔に、惚れない女はいないんだぜ…?」

 あ、大分この人末期ですわ。
 秀は腰を落とし、鏡花の頬を手でなぞった。


「久住。お前の顔はとても綺麗だ。俺に、ギリふさわしいと思う。この学校で唯一ね!」

「あんたさ」

私は呆れる。 

「何が言いたいの?」

「要するに、俺と付き合え」


 今日はハッピーディだな。ポイント5倍デー並みのお得感。

 3人もの男子に(太一含む)思いを告げられた。

 でも、やっぱりどうしても顔が綺麗な男が無理なのだ。…どうしても。


「私12股くらい平気でするクズだからやめときな。」

「それは由々しき問題だな。なら、すべての男と別れて俺と付き合え」

 いやいや!

 そっちの方が由々しき問題でございますけど!?

「あのね!私より綺麗で可愛い子なんて沢山いるんだから、その子探して付き合えばいいじゃん」

「そうか?少なくとも、俺が見てきた女の中では、飛び抜けて綺麗な容姿をしていると思う。久住は自覚しているのかわからないけれど」


「じゃあ。私帰りますわ」


 私は踵を返して歩き始める。
 極力クールな面を保とうとするけど、実を言うと先ほどぶつけた足がとても痛い。

 秀は私を地面に押し倒そうと思って、足首を掴んだらしいが、私はかわした。

 逆に宮木秀の手首を掴んでやった。

「なっ!?」

「さっき別の奴にそれやられたばっかりだからね。学習したんだよ」

 ググ…と力を込めた。


「えっ!お前、握力半端ねえ…!」

「現役テニス部で、毎日ラケット持ってますからね」

「い、痛い痛い!ギブ!ギブ!」

 鏡花はすぐに手を放してあげた。

「じゃあね。宮木くん。気をつけておかえりあそばせ」


 握力の強い天使は、今度こそ公園から出て行った。
 しばらく、鏡花の姿を見ていた秀は、こうつぶやいた。

「…俺のテクニックが通用しないなんて…。あの女、一体…!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

駆け出しご当地アイドルがヤクザに一目惚れされた話

一ノ瀬ジェニファー
恋愛
ド田舎の道の駅で、持ち歌もグッズもないまま細々と活動を続けるご当地アイドル・桜あかり(16)。 夢は大きく武道館!……と言いたいところだけど、今はレジ打ちもこなす「なんでもできるマルチな地底アイドル」。 そんな彼女に、ある日転機が訪れる。 地元の道の駅がテレビで紹介され、あかりの笑顔が全国放送で流れたのだ。 その映像を東京で目にしたのが、幸村 静(ゆきむら しずか)。 見た目は完璧、物腰も柔らか──けれどその正体は、裏の世界の男だった。 「会いたいから」というシンプルすぎる理由で、あかりに会いに片道10時間を車で会いに来た。 謎のヲタク知識もを引っ提げて、推し活(という名の執着)が始まる……! これは、アイドルを夢見る少女と、厄介オタクなヤクザの、ピュアで不穏でちょっと笑える物語。

No seek, no find.

優未
恋愛
経理部で働くアマラは結婚相手を探して行動を始める。いい出会いがないなと思う彼女に声をかけてきたのは、遊び人の噂もある騎士オーガスタで―――。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

処理中です...