76 / 94
第4幕 無駄なアナログ感は正確に伝わるだろう
第2章 財閥家のツアーと冬はこれ④
しおりを挟む
侑斗達四人が、目標枚数の形代の数の完成まで見えてきた頃だった。
「はあ……何とか終わりそうね」
「そういや、侑斗、お前の親父さんに挨拶しなくていいか?
俺の母さんが田舎からサツマイモを沢山貰ったから、侑斗の家に持っていけって言われたんだけど」
「さっきの使用人女性の件で、私もすっかり忘れてたわ。
焼き菓子持ってきたわよ」
早馬と遥が、サツマイモと焼き菓子を侑斗の前に差し出すと、
「気を使わなくていいよかったのに。手伝いだけでも十分助かる。
あいにく親父は、今日は系列会社の取締役会でいない。
でも、ありがとう。あとで皆で食べよう」
遠慮がちに言いながらも、侑斗は差し入れの包みを大事そうに膝元へ置いた。
外は、さっきまでの雪がいつのまにか止み、冬の日差しが縁側まで伸びている。
「ねぇ、私、焼き芋したいな」
「いいな、それ! 侑斗、あの広い庭で出来ないか?」
侑斗は、庭の方を見てから少しだけ考えるそぶりを見せるとこう言った。
「……ああ、そうだな。まあ、俺達もそこまで子供でもないし、大丈夫だろう」
「ブロッサムも食べるだろ?
向こうじゃ、ジャガイモやベイクドポテトが主流と聞くが、サツマイモも悪くないぞ」
早馬が、サルヴァトーレに話しかけると、
「なんだ、この土まみれの物体は?」
早馬が笑いながら差し出す。
「見たことないか? 日本のサツマイモだ。焼き芋にすると甘くて美味いんだ」
遥もニヤリとする。
「最中より絶対に食べやすいわよ、サルヴァ。
砂糖や飴も材料に使ってないしね」
いつの間にか遥も、サルヴァトーレを愛称で呼んでいた。
サルヴァトーレは、まだほんのり土の匂いが残る芋を手のひらで転がしながら、興味と困惑の入り混じった目で三人を見た。
「……ジャガイモならいくらでも食べたが、これはまるでそのまま畑から掘り出してきたみたいじゃないか。
これが日本の“ハーヴェストフェスティバル”か。
さぞ盛大なんだろうな。……土の味まで楽しむのか?」
「それが良いんだよ。焼き芋は“素材の味”だからさ。
飴も砂糖もバターもいらない、ただ芋だけで勝負――これが最高なんだ」
「……まあ、一応合理的ではあるな」
遥が吹き出す。
「ふふ、何その評価基準」
侑斗も笑いながら、こう言った。
「まあ、最中よりは期待しろ。
今度こそ騙されたと思って一度食べてみてくれ。きっと気に入るよ」
サルヴァは相変わらずそっけなく、
「期待はしない」
と答えた。
そんな他愛のない会話が、歴史ある離れの空気を、ほんの少しだけ柔らかくしていた。
「はあ……何とか終わりそうね」
「そういや、侑斗、お前の親父さんに挨拶しなくていいか?
俺の母さんが田舎からサツマイモを沢山貰ったから、侑斗の家に持っていけって言われたんだけど」
「さっきの使用人女性の件で、私もすっかり忘れてたわ。
焼き菓子持ってきたわよ」
早馬と遥が、サツマイモと焼き菓子を侑斗の前に差し出すと、
「気を使わなくていいよかったのに。手伝いだけでも十分助かる。
あいにく親父は、今日は系列会社の取締役会でいない。
でも、ありがとう。あとで皆で食べよう」
遠慮がちに言いながらも、侑斗は差し入れの包みを大事そうに膝元へ置いた。
外は、さっきまでの雪がいつのまにか止み、冬の日差しが縁側まで伸びている。
「ねぇ、私、焼き芋したいな」
「いいな、それ! 侑斗、あの広い庭で出来ないか?」
侑斗は、庭の方を見てから少しだけ考えるそぶりを見せるとこう言った。
「……ああ、そうだな。まあ、俺達もそこまで子供でもないし、大丈夫だろう」
「ブロッサムも食べるだろ?
向こうじゃ、ジャガイモやベイクドポテトが主流と聞くが、サツマイモも悪くないぞ」
早馬が、サルヴァトーレに話しかけると、
「なんだ、この土まみれの物体は?」
早馬が笑いながら差し出す。
「見たことないか? 日本のサツマイモだ。焼き芋にすると甘くて美味いんだ」
遥もニヤリとする。
「最中より絶対に食べやすいわよ、サルヴァ。
砂糖や飴も材料に使ってないしね」
いつの間にか遥も、サルヴァトーレを愛称で呼んでいた。
サルヴァトーレは、まだほんのり土の匂いが残る芋を手のひらで転がしながら、興味と困惑の入り混じった目で三人を見た。
「……ジャガイモならいくらでも食べたが、これはまるでそのまま畑から掘り出してきたみたいじゃないか。
これが日本の“ハーヴェストフェスティバル”か。
さぞ盛大なんだろうな。……土の味まで楽しむのか?」
「それが良いんだよ。焼き芋は“素材の味”だからさ。
飴も砂糖もバターもいらない、ただ芋だけで勝負――これが最高なんだ」
「……まあ、一応合理的ではあるな」
遥が吹き出す。
「ふふ、何その評価基準」
侑斗も笑いながら、こう言った。
「まあ、最中よりは期待しろ。
今度こそ騙されたと思って一度食べてみてくれ。きっと気に入るよ」
サルヴァは相変わらずそっけなく、
「期待はしない」
と答えた。
そんな他愛のない会話が、歴史ある離れの空気を、ほんの少しだけ柔らかくしていた。
10
あなたにおすすめの小説
悪の策士のうまくいかなかった計画
迷路を跳ぶ狐
BL
いつか必ず返り咲く。それだけを目標に、俺はこの学園に戻ってきた。過去に、破壊と使役の魔法を研究したとして、退学になったこの学園に。
今こそ、復活の時だ。俺を切り捨てた者たちに目に物見せ、研究所を再興する。
そのために、王子と伯爵の息子を利用することを考えた俺は、長く温めた策を決行し、学園に潜り込んだ。
これから俺を陥れた連中を、騙して嵌めて蹂躙するっ! ……はず、だった……のに??
王子は跪き、俺に向かって言った。
「あなたの破壊の魔法をどうか教えてください。教えるまでこの部屋から出しません」と。
そして、伯爵の息子は俺の手をとって言った。
「ずっと好きだった」と。
…………どうなってるんだ?
灰かぶり君
渡里あずま
BL
谷出灰(たに いずりは)十六歳。平凡だが、職業(ケータイ小説家)はちょっと非凡(本人談)。
お嬢様学校でのガールズライフを書いていた彼だったがある日、担当から「次は王道学園物(BL)ね♪」と無茶振りされてしまう。
「出灰君は安心して、王道君を主人公にした王道学園物を書いてちょうだい!」
「……禿げる」
テンション低め(脳内ではお喋り)な主人公の運命はいかに?
※重複投稿作品※
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
マネージャー~お前を甲子園に連れて行ったら……野球部のエース♥マネージャー
夏目碧央
BL
強豪校の野球部に入った相沢瀬那は、ベンチ入りを目指し、とにかくガッツを認めてもらおうと、グランド整備やボール磨きを頑張った。しかし、その結果は「マネージャーにならないか?」という監督からの言葉。瀬那は葛藤の末、マネージャーに転身する。
一方、才能溢れるピッチャーの戸田遼悠。瀬那は遼悠の才能を羨ましく思っていたが、マネージャーとして関わる内に、遼悠が文字通り血のにじむような努力をしている事を知る。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる