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第四話
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あれから、上祢くんと話すようになった。何と帰る方角も一緒だったため、時々一緒に帰るようにもなった。
その日の授業の話や課題の話、お互いのことを話す時もある。
おかげで上祢くんのことをたくさん知れた。誕生日と血液型と好きな食べ物、趣味、好きな本のタイトル、休日の過ごし方などなど。それとなく訊いては、言われたことを頭の中にメモをする。好きな人のことを知れるだけで幸せなのに、こうして一緒に帰っていることが夢のようだった。
歩幅を合わせてくれるところも好きだし、笑った顔も子どもっぽくて可愛い。どんどん好きな気持ちが溢れてくる。
時折、上祢くんは何もないところを視ている。わたしが「いるの?」と訊けば「いる」と返ってくる。
何がと言えばあやかしがである。
あやかしについて話すことも多い。あやかしについて話すことができる相手が増えたからか、上祢くんはとても嬉しそうだ。話を聞くことしかできないけれど、少しでも上祢くんの役に立てているのだと思うとわたしも嬉しい。
わたしはつね吉以外のあやかしはまだ視たことはない。けれど、話を聞いているだけで厄介そうだなとは思っている。
「あやかしと出会っても関わらないようにすること」
上祢くんからは何度もそう言われている。まあ、自分から関わろうと思わないけど。
――つね吉と関わっているからはっきりとは言えないけどね……。
人知れず苦笑いを零す。あやかしと関わるなと言われる前にあやかしと出会ってしまったのだから仕方がない。
今日も上祢くんが出会ったあやかしの話をしながらコンビニに寄り道をした。好きな人と食べるアイスは最高の味だった。
「はー、幸せ……」
自室にて幸せを噛み締める。少しでも上祢くんによく見られたくて、髪のお手入れはしっかりとしている。
ヘアトリートメントをつけていると、今では専用となったクッションの上で寝転がっているつね吉が「よくやるね」と見つめて来た。
「髪は女の命なんだよ?あ、つね吉もトリートメントしてあげようか?」
「しなくていい」
「そうだよね。何もしなくてもつね吉の毛は綺麗だもんね……」
狐を羨むなんて愚かなことだが、その柔らかな毛は触っていて気持ちが良いのだ。
「月乃はお気楽だなぁ……。今までの主人の中でこんなのんびりしている奴なんて見たことないよ。時代かなぁ……」
「つね吉って結構年寄りくさいこと言うよね」
くしで髪を整え終えてつね吉の近くに行く。
「上祢のこともぼくを使ってくれればいいのに」
「人伝じゃなくて自分で本人に訊きたいっていう乙女心がわからないかなぁ」
「わからないね。全く、ぼくが活躍する機会がないじゃないか」
そう言ってつね吉は不貞腐れた。ぱしっぱしっと乱暴そうに尻尾でクッションを叩いている。
わたしはその頭を優しく撫でる。
「一緒にいてくれるだけでいいよ」
小さな体を持ち上げて膝の上に乗せる。背中のもふもふに思い切り顔を埋めて、その柔らかさと日向のような匂いを嗅ぐ。
「これぞ猫吸いならぬ狐吸い……」
「嗅がないで!」
流石に嫌だったのか思い切り顔を蹴られた。うう……地味に効いた……。
その日の授業の話や課題の話、お互いのことを話す時もある。
おかげで上祢くんのことをたくさん知れた。誕生日と血液型と好きな食べ物、趣味、好きな本のタイトル、休日の過ごし方などなど。それとなく訊いては、言われたことを頭の中にメモをする。好きな人のことを知れるだけで幸せなのに、こうして一緒に帰っていることが夢のようだった。
歩幅を合わせてくれるところも好きだし、笑った顔も子どもっぽくて可愛い。どんどん好きな気持ちが溢れてくる。
時折、上祢くんは何もないところを視ている。わたしが「いるの?」と訊けば「いる」と返ってくる。
何がと言えばあやかしがである。
あやかしについて話すことも多い。あやかしについて話すことができる相手が増えたからか、上祢くんはとても嬉しそうだ。話を聞くことしかできないけれど、少しでも上祢くんの役に立てているのだと思うとわたしも嬉しい。
わたしはつね吉以外のあやかしはまだ視たことはない。けれど、話を聞いているだけで厄介そうだなとは思っている。
「あやかしと出会っても関わらないようにすること」
上祢くんからは何度もそう言われている。まあ、自分から関わろうと思わないけど。
――つね吉と関わっているからはっきりとは言えないけどね……。
人知れず苦笑いを零す。あやかしと関わるなと言われる前にあやかしと出会ってしまったのだから仕方がない。
今日も上祢くんが出会ったあやかしの話をしながらコンビニに寄り道をした。好きな人と食べるアイスは最高の味だった。
「はー、幸せ……」
自室にて幸せを噛み締める。少しでも上祢くんによく見られたくて、髪のお手入れはしっかりとしている。
ヘアトリートメントをつけていると、今では専用となったクッションの上で寝転がっているつね吉が「よくやるね」と見つめて来た。
「髪は女の命なんだよ?あ、つね吉もトリートメントしてあげようか?」
「しなくていい」
「そうだよね。何もしなくてもつね吉の毛は綺麗だもんね……」
狐を羨むなんて愚かなことだが、その柔らかな毛は触っていて気持ちが良いのだ。
「月乃はお気楽だなぁ……。今までの主人の中でこんなのんびりしている奴なんて見たことないよ。時代かなぁ……」
「つね吉って結構年寄りくさいこと言うよね」
くしで髪を整え終えてつね吉の近くに行く。
「上祢のこともぼくを使ってくれればいいのに」
「人伝じゃなくて自分で本人に訊きたいっていう乙女心がわからないかなぁ」
「わからないね。全く、ぼくが活躍する機会がないじゃないか」
そう言ってつね吉は不貞腐れた。ぱしっぱしっと乱暴そうに尻尾でクッションを叩いている。
わたしはその頭を優しく撫でる。
「一緒にいてくれるだけでいいよ」
小さな体を持ち上げて膝の上に乗せる。背中のもふもふに思い切り顔を埋めて、その柔らかさと日向のような匂いを嗅ぐ。
「これぞ猫吸いならぬ狐吸い……」
「嗅がないで!」
流石に嫌だったのか思い切り顔を蹴られた。うう……地味に効いた……。
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