完 小指を握って呼びかけて

「今この瞬間を以て、私、レオナルド・ラルスト・オーギストは、ユティカ・フィオナ・グラツィーニ公爵令嬢との婚約を破棄する!!」

 華々しい有終の美を飾るはずであった王立学園の卒業パーティーの終盤で、事件は起きた。

 レオナルド・ラルスト・オーギスト王太子の言葉に、公爵令嬢ユティカ・フィオナ・グラツィーニは困ったように眉を下げ、理由を尋ねる。すると、レオナルドの口からこんな言葉が飛び出した。

「お前が、私を“愛さない”からだ」

 愛に狂ったレオナルドは、項垂れてしまったユティカにナイフを向ける。

 小指を握りしめたユティカは、「助けて」と希う。
 前世の大切な人に教えてもらったおまじない。
 今は誰も叶えてくれないおまじない。

 この声は誰かに届くのだろうか———。

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