完 小指を握って呼びかけて

水鳥楓椛

文字の大きさ
7 / 17

後悔

しおりを挟む
◻︎◇◻︎

「———ん、———ゃん、………———優花ちゃん?」

 肩を優しく叩かれながら呼びかけられ、優花はぼーっとしていた意識を浮上させる。

「どーしたの、あおい、く、ん………?」

 優花の視線の先には、洒落た軍服を身に纏った漆黒の髪に海色の瞳を持つ彫りの深い美丈夫と中世ヨーロッパを彷彿とさせる家具たち。

「え、あ、」

 自分を見下ろすと、そこには水色の豪奢なドレスとレースの手袋、そして“前世では”身につけたことがないような、大粒の宝石たち。

(どう、して………、)

 信じられない思いで、優花は、否、ユティカは呆然とのろのろと、榛の瞳を目の前に佇むアオライトに向ける。
 さくら色のくちびるがわななき、大粒の真珠が大きな瞳からいくつもいくつもこぼれ落ちる。くちびるは無意識のうちに、前世から心に刻みつけられている愛おしい人の名を呼ぶ。

「あおい、くん………っ、」

 情けない声に、アオライトは、蒼みたいに、眉を下げて、優しく、くしゃっと笑う。

「………ちゃんと『助けて』って言えて偉かったね、優花。怖い場面であんなふうに堂々と振る舞えるようになっていて、僕はとっても感激しちゃったよ。………もう、君は僕に守られているだけのお姫さまじゃないんだね」

 人を安心させる独特の話し方に、優しさの滲み出る言葉選びに、優花は涙を止められない。涙と共に、今まで抱き続けてきた大きな思いまでも、ダイナミックにぶちまけてしまう。

「………ずっと、っ、ずっと、こう、かい、………して、たのっ。わたしがもっと………、もっと、せっきょく、てきにっ、うごけてたらって、………そ、そした、ら、っみんな、たす、たすかった、っ、んじゃ、ないかっ、て………っ!!だか、らっ!もう、まも、られた、まま、っ、じゃ、い、いやで、がん、ばったのっ。で、でも、っ、じょうず、でき、………っなくてっ———、」

 ———わたしが、もっと頑張れていれば、

 ———わたしが、もっと積極性を持ち合わせていれば、

 ———わたしが、もっと早く動けていれば、

 ———わたしが、もっと早く気がついていれば、

 ———わたしが、おばあさんに覆い被さるのではなく、無理矢理にでも引きずっていれば、

 ———わたしが、わたしがわたしが、わたしがわたしがわたしがわたしがわたしがわたしがわたしがわたし!!

 ———もっとっ!!

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
次話、13時更新です!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

前世で私を捨てた皇太子が、今世ではなぜか執着してきます。でも私は静王妃なので『皇叔母様』と呼ばせます

由香
恋愛
沈薬は前世、皇太子の妃だった。 だが彼の寵愛は側室へ移り、沈薬は罪もなく冷宮へ送られ――孤独の中で死んだ。 そして目を覚ますと、賜婚宴の日に戻っていた。 二度目の人生。 沈薬は迷わず皇太子ではなく、皇帝の弟である静王を選ぶ。 ただしその夫は、戦で重傷を負い昏睡中だった。 「今世は静かに生きられればそれでいい」 そう思っていたのに―― 奇跡的に目覚めた静王は、沈薬を誰よりも大切にしてくれた。 さらにある日。 皇太子が前世の記憶を思い出してしまう。 「沈薬は俺の妃だった」 だが沈薬は微笑んで言う。 「殿下、私は静王妃です」 今の関係は―― 皇叔母様。 前世で捨てた女を取り戻そうとする皇太子。 それを静かに守る静王。 宮廷を揺るがす執着と溺愛の物語。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

手作りお菓子をゴミ箱に捨てられた私は、自棄を起こしてとんでもない相手と婚約したのですが、私も含めたみんな変になっていたようです

珠宮さくら
恋愛
アンゼリカ・クリットの生まれた国には、不思議な習慣があった。だから、アンゼリカは必死になって頑張って馴染もうとした。 でも、アンゼリカではそれが難しすぎた。それでも、頑張り続けた結果、みんなに喜ばれる才能を開花させたはずなのにどうにもおかしな方向に突き進むことになった。 加えて好きになった人が最低野郎だとわかり、自棄を起こして婚約した子息も最低だったりとアンゼリカの周りは、最悪が溢れていたようだ。

婚約破棄ですか。ゲームみたいに上手くはいきませんよ?

ゆるり
恋愛
公爵令嬢スカーレットは婚約者を紹介された時に前世を思い出した。そして、この世界が前世での乙女ゲームの世界に似ていることに気付く。シナリオなんて気にせず生きていくことを決めたが、学園にヒロイン気取りの少女が入学してきたことで、スカーレットの運命が変わっていく。全6話予定

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

処理中です...