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番外編② レオナルド・ラルスト・オーギスト
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噴水の端っこに座って足をぷらぷらと揺らしている彼女からは、今まであった少女たちのようなうざったらしい香りはしなくて、それどころか野花のような自然で優しい香りが漂っていた。
地味な焦茶色の巻き毛も、ぱっちりと大きな榛色の瞳も、特筆するところはないにしても綺麗に整った顔立ちも、素朴な微笑みも、レオナルドの心を大きく揺さぶった。
「あ、あの!」
「なぁに?」
勇気を出して話しかけたレオナルドのことを不思議そうに見つめながらこてんと首を傾げる仕草も、何もかもが愛らしくて、愛おしくて、胸がどくんと高鳴った。
本能が告げていた。
彼女はレオナルドの妻になるべくして生を受けた特別な相手なのだと。“運命”の相手なのだと。
「わ、私はレオナルド。君の婚約者候補だ」
「………………そっか」
「君、名前は?」
「ユティカよ」
「ついてきて。君を、父上に報告しなくっちゃ」
眉を下げて微笑むユティカの愛らしさにレオナルドは胸を撃ち抜かれ、彼女が何も言わないのをいいことに、無理やりに引っ張って父王の元へとユティカを連れていった。
婚約はとんとん拍子に決まっていって、レオナルドはとても幸せな気分だった。
彼女と愛し愛される関係になれるのだと、信じて疑っていなかった。
だって、王太子である、この国で3番目に尊い存在であるレオナルドは、愛されて当然の、人々に愛される敬われ、尊ばれるために生まれてきた、そんな人間なのだから。
しかし、そんな日々は、夢見た日々は、一向にやってこない。
それどころか、彼女の曖昧な笑みが心を隠すための仮面だと気がついた時、自分と同じ教育を受けるに連れて純粋無垢な笑みや仕草が消えてきている吐息がついた時、レオナルドは自分の愚直さが招いた最悪に、何度も何度も取り返しのつかない後悔した。
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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈
地味な焦茶色の巻き毛も、ぱっちりと大きな榛色の瞳も、特筆するところはないにしても綺麗に整った顔立ちも、素朴な微笑みも、レオナルドの心を大きく揺さぶった。
「あ、あの!」
「なぁに?」
勇気を出して話しかけたレオナルドのことを不思議そうに見つめながらこてんと首を傾げる仕草も、何もかもが愛らしくて、愛おしくて、胸がどくんと高鳴った。
本能が告げていた。
彼女はレオナルドの妻になるべくして生を受けた特別な相手なのだと。“運命”の相手なのだと。
「わ、私はレオナルド。君の婚約者候補だ」
「………………そっか」
「君、名前は?」
「ユティカよ」
「ついてきて。君を、父上に報告しなくっちゃ」
眉を下げて微笑むユティカの愛らしさにレオナルドは胸を撃ち抜かれ、彼女が何も言わないのをいいことに、無理やりに引っ張って父王の元へとユティカを連れていった。
婚約はとんとん拍子に決まっていって、レオナルドはとても幸せな気分だった。
彼女と愛し愛される関係になれるのだと、信じて疑っていなかった。
だって、王太子である、この国で3番目に尊い存在であるレオナルドは、愛されて当然の、人々に愛される敬われ、尊ばれるために生まれてきた、そんな人間なのだから。
しかし、そんな日々は、夢見た日々は、一向にやってこない。
それどころか、彼女の曖昧な笑みが心を隠すための仮面だと気がついた時、自分と同じ教育を受けるに連れて純粋無垢な笑みや仕草が消えてきている吐息がついた時、レオナルドは自分の愚直さが招いた最悪に、何度も何度も取り返しのつかない後悔した。
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