完 小指を握って呼びかけて

水鳥楓椛

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番外編① アオライト・グレン・ラインバード

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 戦場から帰り、自室のソファーに深く腰掛け自嘲の笑みを浮かべたアオライトに、戦争の英雄であるアオライトのことを邪魔に感じ始めた異母兄がとある紙を手渡してきた。

「………留学?」
「あぁ。こういうものは本来、将来国を背負うものがいくべき人間がいくものだ。しかし!噂に聞けば、彼の国には少々問題があるというではないか。僕のみに何かあった場合、この国未来に関わる!よって!貴様が行ってこい!!」
「………そうだな。そうしよう」

 戦争から、戦場から逃げられるのであれば、なんでもよかった。

 アオライトは異母兄の提案からたったの3日で準備を完璧に整え、15歳の誕生日にオーギスト王国へと王立学園留学のために旅立った。

 旅の途中、何度か刺客に襲われた。
 異母兄の差金だった。
 そんなに死んで欲しいと思われていたのかと驚くと同時に、何故戦場に追い出される前に殺してくれなかったのかという恨み節が募った。どうせなら、罪を重ねる前に殺して欲しかった。

 オーギスト王国に入ってからはとても静かな日々だった。
 毎日図書館で本を読んで、中庭で軽く剣の練習をして、様々な科目の授業を受ける。前世の大学のようなシステムを採択している学園で生活は、思っていたよりもずっとずっと自由で、のびのびとできた。

 そんな日々の中で、アオライトは優花らしき人を見つけた。

 前世からの癖を多く引き継いだ優花らしき人、ユティカ・フィオナ・グラツィーニ公爵令嬢は、ふとした拍子に優花を連想させた。
 ご飯を食べる時の表情、ちょっと変わった本の捲り方、首を傾げる角度、立ち止まった際に一瞬足首を浮かす仕草さえも一緒で、胸が高鳴った。

 しかし、彼女にはすでに婚約者がいた。

 婚約者である王太子レオナルド・ラルスト・オーギストは、ユティカを溺愛してた。
 彼女が幸せならば、身を引こうと思っていた。

 だが、彼はだんだんと、けれど、着実に壊れていった。
 そして、あろうことか優花を、否、ユティカを公の場で晒し者にし、傷つけた。
 前世での蒼との約束を無意識のうちに実行してしまうぐらいに、怖がらせた。

 アオライトは、ユティカが小指をギュッと握りしめて「助けて」と鈴の転がる可愛らしい音のような声で助けを求めてきた瞬間に、彼女が優花であると確信を得た。
 だから、身分を明かし、ユティカを攫った。

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読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈


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