完 小指を握って呼びかけて

水鳥楓椛

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番外編① アオライト・グレン・ラインバード

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 このまま隠れて息を殺しながらも平和に過ごせるだろうと思った矢先に、《最悪》は起こった。

 13歳の春の出来事だった。

 アオライトが最も愛する、前世で愛する人に永遠を誓った春に、暖かな陽気が幸せを運ぶ春に、アオライトは父帝から呼び出しを喰らい、そしてとある命令を下された。

「東の国グラナス王国が叛旗を翻した。———皆殺しにしてこい」

 ボロを纏い、穏やかに微笑んでいたアオライトにそう命じた父帝は、アオライトに軍服と剣、軍馬、そして20名の騎士をアオライトに渡し、問答無用でアオライトを戦場へと送り込んだ。

 戦場は、前世で知っていたよりも、今世で伝え聞いていたよりも、ずっとずっと悲惨で、凄惨で、救いようがない場所だった。救いがない場所だった。

 アオライトはぼーっとしていた。
 指揮もせず、初めて立った戦場に、命のやり取りの場に、平然を失い、呆然としていた。

 仲間が、部下が、あっという間に死んでいった。

 頭から全身に血を被った。
 服や鎧が重くなった。

 それから先は覚えていない。

 気がついたら被っていた血がなおのこと増えていて、自分の剣にもべっとりと錆がついていた。
 手にできた豆や特有の切り傷を見て、アオライトは前世で習っていた居合いがとても役に立ったのだと悟った。

 それからの日々は、もっと地獄だった。
 アオライトに戦いの天賦の際があると気がついた父帝は、アオライトを次々と戦場に送り込んでいった。

 全身を血で穢して、いくつもの罪を重ねた。

 尾ひれがついた?噂が出回り、怖がられるようになったのはいつからだっただろうか。纏わりついてくる鬱陶しい女どもに優しく接することができなくなり、当たり散らすようになってしまったにはいつからだろうか。

(あぁ、最悪だ)

 優しい自分ではなくなってしまった。
 重水無垢な自分では無くなってしまった。

 死後の世界で優花に逢うのが、無性に、———怖くなった。

 そもそも、幾重にも罪を重ねたアオライトは地獄行きだろうから、天国行きの優花には会えないかもしれない。

*************************

読んでいただきありがとうございます🐈🐈🐈

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