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学校の門をくぐり、スイスイと人の波を避けて入る
そして職員室に入り、先生の名前をチラリと見て覚えた
「木枯先生さん?」
私は首を傾げ、木枯先生を見つめる
「ん?おぉ!君が紅月さん?」
木枯先生は怯えることなく私を見た
そして
微かに感じる痛みに耐えている匂い
「…」
私はじっと木枯先生を見る
「どうしたのかね?」
木枯先生は焦ったように私に声を掛けた
「指、大丈夫?」
目を見開く木枯先生
そりゃ怖いだろう
見抜かれたのならば
怖がられるか気味悪がられるかどちらかだろう
人とはそう言うものだ
私はふいっと顔を背け、歩き出す
「家庭科室、何処?」
このまま居続けるのも不安だし迷惑だろう
私は鍵を探していると歩く音が聞こえた
それも先程の木枯先生の音
「君は、話に聞いていた通り素晴らしいね!」
私の肩に手を置いて笑う木枯先生
キョトンとする
その言葉に嘘の匂いはない
寧ろ、尊敬の匂いがした
私は肩に置かれた手を払い、木枯先生を見る
「家庭科室はね、はい!君専用だよ」
木枯先生のポッケから出る鍵を拾い、歩き出した
後ろから付いてくる木枯先生に私は呆れた声で問う
「入学式に出るんじゃないのか?」
そう聞くと木枯先生は吃驚するようなことを言った
「君が出ないのなら私だって出なくて良い」
………は?
「君の方が興味があるからね」
私は溜息を吐く
厄介な人に好かれたものだ
私は家庭科室の鍵を開けて食器などを眺める
「…」
静かにすぎる時間
感じる熱い視線
「すまないが、これから食材を買いに行きたいのだが」
これで離れられるだろう…やれやー
「あぁ!食材ならここから使ってくれ!」
………
「準備がいいんだな、凄く戸惑う」
施設から連絡が入った
私はヘッドホンを外して携帯に耳を当てる
そして聞こえてきたのは衝撃的な発言
「椿、君はその学校の住人だよ!」
「意味が分からないが、取り敢えず殴らせてくれないか」
ミシリと音を立てる携帯
木枯先生はそれ見てあはは、と苦笑している
要は、だ
施設の荷物は全てこの家庭科室に置くようになった
つまり
施設の居場所はなく、新たな居場所の家はここだと言う
寮生活=家と言うことだ
「そんな話は一つと聞いていなかったが?」
青筋を立てつつも私は静かに問う
「すまん!」
一言で終わらせる院長に怒りを通り越した溜息を吐いた
「まぁ、また会いに来てくれ」
「了解!!」
その言葉は嘘の匂いがする
知っていた
私は院長が病気を患っていることを
そしてそれは治らない事も
だから
子供たちがいなくなっていたのは新しい施設への移動
そしてスタッフさんの減りもそれが関係している
つまり残るは私のことだ
「………院長」
ならば私が言えることはただ一つ
「ん?」
「ーーーー…ボソ」
………ーーーーありがとう
感謝の言葉だ
素直ではないし、いつも誤魔化すが
この時だけは自分でも笑っていた気がした
電話の奥で泣く声
そして
「気にするな」
との言葉
院長はいつも嘘の匂いと優しさの匂いを漂わせている
優しくていい意味での嘘つき
お世話になった
そう言うと
電話は切れた
「………」
木枯先生はいつの間にか家庭科室から居なくなっている
きっと気を使わせたのだろう
この涙を見ないために
「っ」
私は今日、晴れた空の下
院長との別れを告げた
そして
数日後
院長が空へと旅立ったことを知る
そして職員室に入り、先生の名前をチラリと見て覚えた
「木枯先生さん?」
私は首を傾げ、木枯先生を見つめる
「ん?おぉ!君が紅月さん?」
木枯先生は怯えることなく私を見た
そして
微かに感じる痛みに耐えている匂い
「…」
私はじっと木枯先生を見る
「どうしたのかね?」
木枯先生は焦ったように私に声を掛けた
「指、大丈夫?」
目を見開く木枯先生
そりゃ怖いだろう
見抜かれたのならば
怖がられるか気味悪がられるかどちらかだろう
人とはそう言うものだ
私はふいっと顔を背け、歩き出す
「家庭科室、何処?」
このまま居続けるのも不安だし迷惑だろう
私は鍵を探していると歩く音が聞こえた
それも先程の木枯先生の音
「君は、話に聞いていた通り素晴らしいね!」
私の肩に手を置いて笑う木枯先生
キョトンとする
その言葉に嘘の匂いはない
寧ろ、尊敬の匂いがした
私は肩に置かれた手を払い、木枯先生を見る
「家庭科室はね、はい!君専用だよ」
木枯先生のポッケから出る鍵を拾い、歩き出した
後ろから付いてくる木枯先生に私は呆れた声で問う
「入学式に出るんじゃないのか?」
そう聞くと木枯先生は吃驚するようなことを言った
「君が出ないのなら私だって出なくて良い」
………は?
「君の方が興味があるからね」
私は溜息を吐く
厄介な人に好かれたものだ
私は家庭科室の鍵を開けて食器などを眺める
「…」
静かにすぎる時間
感じる熱い視線
「すまないが、これから食材を買いに行きたいのだが」
これで離れられるだろう…やれやー
「あぁ!食材ならここから使ってくれ!」
………
「準備がいいんだな、凄く戸惑う」
施設から連絡が入った
私はヘッドホンを外して携帯に耳を当てる
そして聞こえてきたのは衝撃的な発言
「椿、君はその学校の住人だよ!」
「意味が分からないが、取り敢えず殴らせてくれないか」
ミシリと音を立てる携帯
木枯先生はそれ見てあはは、と苦笑している
要は、だ
施設の荷物は全てこの家庭科室に置くようになった
つまり
施設の居場所はなく、新たな居場所の家はここだと言う
寮生活=家と言うことだ
「そんな話は一つと聞いていなかったが?」
青筋を立てつつも私は静かに問う
「すまん!」
一言で終わらせる院長に怒りを通り越した溜息を吐いた
「まぁ、また会いに来てくれ」
「了解!!」
その言葉は嘘の匂いがする
知っていた
私は院長が病気を患っていることを
そしてそれは治らない事も
だから
子供たちがいなくなっていたのは新しい施設への移動
そしてスタッフさんの減りもそれが関係している
つまり残るは私のことだ
「………院長」
ならば私が言えることはただ一つ
「ん?」
「ーーーー…ボソ」
………ーーーーありがとう
感謝の言葉だ
素直ではないし、いつも誤魔化すが
この時だけは自分でも笑っていた気がした
電話の奥で泣く声
そして
「気にするな」
との言葉
院長はいつも嘘の匂いと優しさの匂いを漂わせている
優しくていい意味での嘘つき
お世話になった
そう言うと
電話は切れた
「………」
木枯先生はいつの間にか家庭科室から居なくなっている
きっと気を使わせたのだろう
この涙を見ないために
「っ」
私は今日、晴れた空の下
院長との別れを告げた
そして
数日後
院長が空へと旅立ったことを知る
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