菓子と魔王と甘き恋

蒼葉縁

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入学式から一週間経った
長くも短い時間の中
私は一人ボウルの中にある生地を練っていた
今日のお菓子はタルト・タタンを作る予定である
久々のお菓子だからこそやる気が出ているのだ
しかしながら気になることが一つある
この学校には魔王がいるらしい
学年は私と同じ一年でありながら魔王と恐れられている
大変興味深く、どうでもいい話だ
魔王というものを見たことがないから気になるというだけでその人自体はどうでもいい
人嫌いな私のことだ
すぐ飽きるだろう
私は欠伸を一つして生地を置くと同時に家庭科室の鍵を掛けてある扉が吹き飛んだ
「………」
そう
吹き飛んだのだ
ゾロゾロと入ってくる男共
煩い足音にヘッドホン越しでも煩い
私はギロリと男共を睨む
先程のせいで生地が埃に塗れ、とても食べられる状態ではない
果実も全て無駄になった
「どこの誰だか知らないがノックすら出来ないのか低脳が」
男共は私の拳を受けて気絶
チラリと吹き飛んだであろう扉の方を見る
その扉に寄りかかるように倒れている男
私はじっと男を見る
手当て箱を持って来て、血の匂いがするところに消毒・薬・包帯を巻く
そして枕と布団を用意して男を寝かせる
他の男共は廊下に放り投げた
そして扉をどうするかと悩んでいると気配がしてしゃがみ込む
ブンと頭の合った位置に風が巻き起こる
先程の彼の回し蹴りだった
ならばお返しにと思い私は彼の上を飛び壁を蹴りかかと落としをお見舞いする
「グ!?」
布団に落ちる彼に私は溜息を吐く
「はぁ、怪我人は黙って寝てろ」
騒がしい男や人は嫌いなんだ
そう呟きながら
男は傷口を見て、吃驚していた
「何だ、処置がおかしいか」
私は洗っていたボウルの続きを始める
そして
タルト・タタンを焼きつつシュークリームの生地も作り始めた
「処置がおかしいわけない、寧ろ凄えよ」
呆然としている彼に私は溜息を吐く
「誰だって出来るだろ」
生憎、私だって本で見ただけなんだから
合っているかすらわからないんだ
タルトの焼ける匂いと音がする
私はそれを冷ましている間にシュークリームの生地をオーブンに入れた
カスタードを作ろうと小麦粉を手に取る
手にあるのは二種類の薄力粉
一つは割とサラサラで口当たりがいい
二つ目はサラサラだが口当たりはだいぶ粗く少しざらついている
「………タルトがザクザクとしているとするならば一つ目か」
測り終えた薄力粉をしまう
卵と生クリーム、バニラエッセンスと割と味と良い質もいい上等なものが出来た
シュー生地が焼けたが一つだけ失敗している
これは小さかったのだろう
「完成だな」
お皿に一切れのタルト・タタンと二つのシュークリームを載せて彼に渡す
「良いのか?」
キラキラとした目を向ける彼に私は溜息を再び吐く
「そんな目で見られていたらあげなくてはいけないだろ」
先ほどからの熱い視線
喉のなる音
そりゃ渡さない方が酷だろう
彼の口に運ばれるタルト
「さて、頂くとしようか」
私もタルトを食べて少し考える
「んー…もう少し砂糖多めでも良かったな」
カタンとお皿を置いてシュークリームを口に入れる
「これは合格だな」
彼は先ほどから静かだ
不思議に思いそちらを振り向くと
彼は
口をぽかんと開けて固まっていた
「………何がしたいんだお前」
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