黒龍様のお気に入りはー………

蒼葉縁

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本音を言えば
アルガード様が好きなのだ
だけど
本当の私を知って仕舞えば私はきっとこのお屋敷にすらいられなくなる
それが酷く怖い
愛する人のそばにいられるならそれでいいとさえ思った
だからこうして断り、隠し続けている
私は一人になった自室で本当の姿になった
この国で恐れられているもう一つの存在
それが私の本当の姿
レッドウルフ
またの名を
深紅の狼だ
「グルルッ」
私は少し唸り、黙り込む
尾は垂れ下がり、耳も垂れている
私は自分が嫌いだ
アルガード様に隠し事をしていることも
この姿になれると言うことも
全てが嫌になる
だけど
期待もしてしまう
アルガード様ならと期待なんてしてはいけないのに、だ
私はベットにふわりと乗り、月を見上げる
もう、覚悟を決めるしかないのだ
そう思った矢先、扉が吹き飛ぶ
(!?)
パラパラと埃が舞う中、現れたのは
「あ、アルガード様………」
アルガード様だった
普段は大人しい顔をしている
そんなアルガード様の今のお顔はとても悲しそうで、怒りを滲ませていた
私は目を逸らし、丸くなる
「エリオット」
低く、心地の良い声がした
私の耳は反応する
けれど向けなかった
怖くて震えてしまう
「………はい」
私は静かにそう言うと
「その姿は、深紅の狼か?」
ピクリと肩が震える
「………っ」
私は勢いよく飛び出した
が流石は王子
あっさりと捕まえられる
人の姿に戻って暴れても、逃げ出す事は叶わない
「離して下さい!」
「………」
涙目でも
暴れても
叩いても
執事としての誇りさえなくても
アルガード様は離してくれない
そして
強引に口付けをされる
「ん!?やめ、ん!!」
息が出来ない
苦しい
酸素を求めて口を開くと舌が入ってくる
逃げる私を捕まえてねっとりと吸われた
「んぅ、ん!」
くったりとする私から口を離す
その間には銀の糸が繋がれる
「ん………ふ、やっと大人しくなったな」
アルガード様はニヤリと笑い私を見つめた
私は息を必死に求めている
そして息が整い、静かになった
「………俺は」
「………」
ギュッと強く抱き締められる
「お前が好きなんだ」
目を見開く
けど
飽きられる
それは
「飽きるものか、捨てるものか」
まるで私の全てを知っているかのように
まるで私の頭の中の考えを見抜くかのように
私の求めている言葉を言われる
私は身をよじり、離れようとした
けど、そうさせまいと抱き締める力が強くなる
「離して下さい」
「嫌だ」
私は震えが止まった
もう
私は逃れられない
そう感じてしまった
覚悟があまりにも大きすぎて
怖くて
恐ろしくて
「っ、アルガード様」
ポロポロと涙が流れる
幾年、流してすらなかった涙が勝手に流れ落ちた
止まることのない涙をアルガード様は舐める
「!?」
「ふ、しょっぱいな」
私は赤くなる顔を下を向いて隠した
「答えは?くれるな?」
アルガード様の優しい手が私の頬を撫でる
「分かっているでしょう」
そっとその手に触れた
そして
互いに引き寄せられる唇
合わされる時間はまるで数秒の時のようで短い
「真っ赤だな」
アルガード様はクスクスと笑っている
私はムッとした顔をして
「そう言うアルガード様だって」
まるで幼い子供のような返答にまた笑うアルガード様
けど
それがとても愛しいのだ
そう思った
あの人が見ていたことも知らずに
「へぇ、結ばれたのね」
ぎりりと拳を握るイルファ様がいたことを
この時は知らなかった
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