黒龍様のお気に入りはー………

蒼葉縁

文字の大きさ
2 / 6

2

しおりを挟む
本音を言えば
アルガード様が好きなのだ
だけど
本当の私を知って仕舞えば私はきっとこのお屋敷にすらいられなくなる
それが酷く怖い
愛する人のそばにいられるならそれでいいとさえ思った
だからこうして断り、隠し続けている
私は一人になった自室で本当の姿になった
この国で恐れられているもう一つの存在
それが私の本当の姿
レッドウルフ
またの名を
深紅の狼だ
「グルルッ」
私は少し唸り、黙り込む
尾は垂れ下がり、耳も垂れている
私は自分が嫌いだ
アルガード様に隠し事をしていることも
この姿になれると言うことも
全てが嫌になる
だけど
期待もしてしまう
アルガード様ならと期待なんてしてはいけないのに、だ
私はベットにふわりと乗り、月を見上げる
もう、覚悟を決めるしかないのだ
そう思った矢先、扉が吹き飛ぶ
(!?)
パラパラと埃が舞う中、現れたのは
「あ、アルガード様………」
アルガード様だった
普段は大人しい顔をしている
そんなアルガード様の今のお顔はとても悲しそうで、怒りを滲ませていた
私は目を逸らし、丸くなる
「エリオット」
低く、心地の良い声がした
私の耳は反応する
けれど向けなかった
怖くて震えてしまう
「………はい」
私は静かにそう言うと
「その姿は、深紅の狼か?」
ピクリと肩が震える
「………っ」
私は勢いよく飛び出した
が流石は王子
あっさりと捕まえられる
人の姿に戻って暴れても、逃げ出す事は叶わない
「離して下さい!」
「………」
涙目でも
暴れても
叩いても
執事としての誇りさえなくても
アルガード様は離してくれない
そして
強引に口付けをされる
「ん!?やめ、ん!!」
息が出来ない
苦しい
酸素を求めて口を開くと舌が入ってくる
逃げる私を捕まえてねっとりと吸われた
「んぅ、ん!」
くったりとする私から口を離す
その間には銀の糸が繋がれる
「ん………ふ、やっと大人しくなったな」
アルガード様はニヤリと笑い私を見つめた
私は息を必死に求めている
そして息が整い、静かになった
「………俺は」
「………」
ギュッと強く抱き締められる
「お前が好きなんだ」
目を見開く
けど
飽きられる
それは
「飽きるものか、捨てるものか」
まるで私の全てを知っているかのように
まるで私の頭の中の考えを見抜くかのように
私の求めている言葉を言われる
私は身をよじり、離れようとした
けど、そうさせまいと抱き締める力が強くなる
「離して下さい」
「嫌だ」
私は震えが止まった
もう
私は逃れられない
そう感じてしまった
覚悟があまりにも大きすぎて
怖くて
恐ろしくて
「っ、アルガード様」
ポロポロと涙が流れる
幾年、流してすらなかった涙が勝手に流れ落ちた
止まることのない涙をアルガード様は舐める
「!?」
「ふ、しょっぱいな」
私は赤くなる顔を下を向いて隠した
「答えは?くれるな?」
アルガード様の優しい手が私の頬を撫でる
「分かっているでしょう」
そっとその手に触れた
そして
互いに引き寄せられる唇
合わされる時間はまるで数秒の時のようで短い
「真っ赤だな」
アルガード様はクスクスと笑っている
私はムッとした顔をして
「そう言うアルガード様だって」
まるで幼い子供のような返答にまた笑うアルガード様
けど
それがとても愛しいのだ
そう思った
あの人が見ていたことも知らずに
「へぇ、結ばれたのね」
ぎりりと拳を握るイルファ様がいたことを
この時は知らなかった
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

あなたがそのつもりなら

素亭子
恋愛
リリアーナはランス侯爵からの求婚をうけて結婚したが、わずか一年で夫は愛人を持った。リリアーナの仕返しの話です

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

処理中です...