女だからと舐めるなよ

月の蛍

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アルス様を守ると俺は誓った
そして
アルス様は俺に守られてくれると言ってくれた
だが
この学校はそう甘くない
俺を狙う者ともが多い上にアルス様を狙うものも多い
だから
こうして闘技場がある
「これより、アルベルト・デライストと」 
俺は剣を構える
「ゼイク・アーガストの試合を決行する!!」
敵を倒すために
「勝者は互いの騎士をもらうことが出来る!」
そんなこと
「それではレディーファイ!」
許されることではない!
互いの剣が混じり合う
刃と刃が音を立てて交じり合う
俺はそれでも怯むことなく
力を使うことなく難なく避ける
相手のゼイクは息を荒くして無我夢中で剣を振っているのだ
弱い
俺は横に剣を引き、上に上げる
ゼイクの剣が弾かれくるくると空を舞い、地面に突き刺さった
「勝者はアルベルト・デライスト!!!」
俺は剣を納め、一礼をする
「くそ!ゼイク!何をしている!」
ゼイクの主は自分で戦わないくせにあーだのこーだの言っていた
ゼイクは頭を下げて、泣いている
俺はそっと片目に触れ、口を固く結んだ
「お疲れ様」
そう言って俺にタオルをかけるアルス様に頭を下げる
「有難きお言葉ですよ、アルス様」
顔を上げて微笑むとアルス様は満足していた
「本当に優秀ね」
「滅相もございま………!?」
アルス様を後ろに下がらせ、片手で剣を引き抜く
ガキイィンと剣が鳴る
「あは、流石~」
男はニヤリと笑う
「貴様!何をする!」
俺は剣を構える
アルス様は何かに気が付くと俺を制した
「辞めなさい!」
「っ、!?ですが!」
アルス様を見ると真剣な顔をしている
俺はその顔を見て静かに剣を納めた
男はつまらなそうに肩に剣を乗せる
「え~?剣しまうのー?」
ギロリと睨むと男は嬉しそうに笑っていた
「あは、良いねぇその顔ー」
「っ!!」
剣を引き抜きそうになるがなんとか踏みとどまる
アルス様が俺の横を通り過ぎると男に一礼した
「お初にお目にかかります、レイセルト王子殿下」
「っ、………」
アルス様を見て頭を下げる
レイセルト王子殿下と呼ばれた男は不思議そうに俺を見ていた
「なんでお前も頭下げるのー?」
俺はギリと拳を握る
「アルベルトは私の騎士ですので」
アルス様の言葉に少し嬉しいが反面嫌だった
何故こんな男に敬語なのだと
腹が立つ
俺は頭を下げたままでいると
「頭上げろ」
と低い声がした
アルス様は俺に頭を上げろと言う
なので
俺が頭を上げるとあの男は満足して嬉しそうにしている
「じゃあさ~俺と戦おうよー」
男の言葉に全員がざわつく
「!?」
流石のアルス様も吃驚していた
「は?」
俺は俺で呆れた声を出す
男はアルス様を押し除けて俺の所に来るが倒れそうになるアルス様の元へ走り、その身体を支える
男はキョトンとしていたがニコニコと笑った
「あは、おもしろ~」
その態度にブチ切れそうになる
「貴様!良い加減に!」
拳を握るとアルス様の言葉に目を見開いた
「辞めなさい、彼は私の婚約者よ」
は?
…………婚約者?
こんな男が
アルス様の?
「だから、鎮まりなさい」
「……………御意」
アルス様に一礼してアルス様の後ろにつく
男は不機嫌そうだ
「戦わねぇの?」
男の言葉にアルス様が声をかけた
「試合は終わりましたので」
アルス様の言葉に被せるように
「俺がしたいんだよ」
と言った
俺は苛立ちに身を任せないようにする
落ち着くことに集中した
男はニヤリと笑い
「あんた?アルスって」
と急にアルス様に話しかけ始めた
「イースト家の呪われた姫って」
………っ!!?
明らかに俺を煽る言い方をしていた
アルス様を見て目を見開く
拳を握っているアルス様だったからだ
俺はそっとアルス様の拳に手を添えて、口付けを落とす
「大丈夫ですよ、アルス様」
アルス様は俺を見て微笑んだ
そして
「試合をしましょう」
そう言った
男は嬉しそうに笑う
俺はアルス様を見る
「あの男を黙らせなさい」
その言葉に
俺は微笑み
「御意」
そう答えた
試合場に立ち
剣を構える
「レディーファイ!」
男の姿が消える
だが
こんなもの造作もない
後ろからくると思わせて横から
剣を弾き飛ばす
だが
男の膝が飛んできた
俺はそれを避けて後ろに飛ぶ
「すごぉ!避けた!!」
キラキラと笑う男に少し嫌な予感がした
再び剣を手にした男が走ってくる
「遊びーまーしょーう?」
剣を構え、目を閉じる
呼吸音が乱れていた
「貴様止まれ!!」
「は?」
俺は男を引き寄せた
男が目を見開く
俺の片手の剣に刺さる長い鉄槍に剣にヒビが入る
脚に力を入れて衝動に耐えた
男に傷ひとつない
一応アルス様の婚約者だ
守ることもいつかあるかも知れない
「大丈夫か?」
俺は男を離して、剣を見つめる
「………」
男からの返事がない
「おい?きさ「惚れた」は?」
突然の告白に呆れる
その一方でアルス様は珍しく嬉しそうにしていた
(作戦通りですね!)
そんなことすら知らない俺は男を睨んだ
「戯言はいい、とっとと帰れ」
俺は歩き出す
後ろから走ってくる音がした
そして背後に感じる衝撃
「ぎゅー!!」
「はぁ?!離れろ!」
困りました
アルス様はニコニコとしている
男に惚れられました
どうしましょうか?
亡き家族たち
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