幼馴染に浮気されて落ち込んでいたら、ストーカー生徒会副会長に溺愛されました。

ヤオサカ

文字の大きさ
5 / 8

第5話「偽りの恋と、囁かれる所有宣言」

しおりを挟む
「松永雅は俺と付き合っている。」
 
 福村龍臣が放ったその言葉は、昇降口にいた生徒たちの間で静かな衝撃を呼び、瞬く間に広がっていった。

「えっ、ちょっと待って……何それ?」
「福村先輩とあの子が付き合ってるって……?」
「そんな話聞いたことないんだけど!」
 
ひそひそとした声が飛び交い、雅に向けられる視線が増えていく。
雅は混乱しながら龍臣を見上げた。

「……どういうことですか?」
 
自分の意志とは関係なく、龍臣の言葉だけで状況が一変してしまった。

「今言った通りだよ。」

 龍臣は穏やかに微笑みながら雅の目を真っ直ぐに見つめる。

「君がこんなことで傷つくのは許せないからな。」
「そんな……」
 
 雅は否定したかった。でも、何をどう言えばいいのかわからない。
龍臣の言葉は、この場の空気を支配していた。

 
 次の日、学校の雰囲気は一変していた。
「ねぇ、昨日の話、本当なの?」
「福村先輩と松永雅って子が付き合ってるって噂が広まってるけど……。」
「五十嵐君の幼馴染がしつこく邪魔してたっていうの、勘違いだったの?」
 
 雅は廊下を歩きながら、周囲からの視線を感じた。
 
昨日までとは違う――昨日までは**「拓哉に執着している厄介な幼馴染」だったのに、今日は「福村龍臣の彼女」**になっていた。
 こんなに簡単に、人の見る目は変わるものなの?
 雅は、戸惑いながらも、龍臣の言葉がどれほど強い影響を持っていたのかを実感していた。

 さらに、新しい噂が広まっていた。
「ねえ、聞いた? 五十嵐って、理央だけじゃなくて、他の子にも手を出してたらしいよ。」
「マジ?松永さんが巻き込まれただけだったの?」
「それなら、彼女がかわいそうじゃん……。」
 
クラスメイトの一人が、雅に話しかける。
「大変だったね……松永さん。あんなこと言われて、本当に気の毒だったね。」
 
今まで冷たい視線を向けられていたクラスメイトが、雅に同情の目を向けるようになっていた。

(なんなの、これ……。)
 
 昨日までは攻められる立場だったのに、今日は違う。
さらには拓哉の本性が暴かれ、雅は「ただ巻き込まれただけ」になっていた。
それが嬉しいわけではない。むしろ、虚しさすら感じる。自分も好きな人に騙されていたなんてショックだった。
 
 ただ一つ言えることは、昨日の龍臣の言葉がすべてを変えたということだった――。

 
 昼休み、校舎裏。
雅はひとりで弁当を広げる。
誰にも話しかけられず、静かな時間を過ごしたかった。
でも、その時間は長くは続かなかった。

「――隣、いいか?」
 
落ち着いた声が響き、雅が顔を上げると、そこには龍臣がいた。
「……なんで来たんですか?」
「君がひとりでいたから。」

 龍臣は何事もなかったかのように雅の隣に座る。
 雅は目をそらしながら問いかけた。

「……昨日の話、どうしてあんなことをしたんですか?」
 
龍臣は箸を止めて雅を見つめた。

「君を守るためだよ。」
「……守る?」
 
雅は理解できなかった。

君がいくら否定しても、誰も聞かなかっただろう?でも、俺が『君と付き合っている』と言えば、君はもう五十嵐に執着してる幼馴染じゃなくなる。」
 
雅は息をのむ。

(そんなことのために……?)

「俺は君を傷つけるやつが許せない。」
 
龍臣の言葉は静かだったが、どこか強い意志を感じた。

「……でも、私は……。」
 
雅は、もう拓哉ことは好きではなくなっていたけれど、長い間好きでいた人を忘れるには時間が必要だった。

「……まだ、忘れられないの?」
 
龍臣の声に、雅は息をのむ。

「そうではないけれど……。」
 
そう答えた雅に、龍臣は静かに微笑んだ。

「いいさ。時間はある。」
「……何が言いたいんですか?」
「君はもう、俺のものだ。」
 
雅はその言葉に驚いた。

「なっ……!」
「昨日の宣言で、君は俺の恋人になった。それはもう、覆らないよ。」
 
雅の心臓が、大きく跳ねた。

(何……この人……。)
 

 新しい関係が、ここから始まってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

英雄魔術師様とのシークレットベビーが天才で隠し通すのが大変です

氷雨そら
恋愛
――この魔石の意味がわからないほど子どもじゃない。 英雄魔術師カナンが遠征する直前、フィアーナと交わした一夜で授かった愛娘シェリア。フィアーナは、シェリアがカナンの娘であることを隠し、守るために王都を離れ遠い北の地で魔石を鑑定しながら暮らしていた。けれど、シェリアが三歳を迎えた日、彼女を取り囲む全ての属性の魔石が光る。彼女は父と同じ、全属性の魔力持ちだったのだ。これは、シークレットベビーを育てながら、健気に逞しく生きてきたヒロインが、天才魔術師様と天才愛娘に翻弄されながらも溺愛される幸せいっぱいハートフルストーリー。小説家になろうにも投稿しています。

『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』

星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】 経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。 なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。 「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」 階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。 全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに! 「頬が赤い。必要だ」 「君を、大事にしたい」 真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。 さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!? これは健康管理?それとも恋愛? ――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。

定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました

藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。 そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。 ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。 その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。 仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。 会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。 これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。

譲れない秘密の溺愛

恋文春奈
恋愛
憧れの的、国宝級にイケメンな一条社長と秘密で付き合っている 社内一人気の氷室先輩が急接近!? 憧れの二人に愛される美波だけど… 「美波…今日充電させて」 「俺だけに愛されて」 一条 朝陽 完全無欠なイケメン×鈴木 美波 無自覚隠れ美女

不埒な一級建築士と一夜を過ごしたら、溺愛が待っていました

入海月子
恋愛
有本瑞希 仕事に燃える設計士 27歳 × 黒瀬諒 飄々として軽い一級建築士 35歳 女たらしと嫌厭していた黒瀬と一緒に働くことになった瑞希。 彼の言動は軽いけど、腕は確かで、真摯な仕事ぶりに惹かれていく。 ある日、同僚のミスが発覚して――。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

狼隊長さんは、私のやわはだのトリコになりました。

汐瀬うに
恋愛
目が覚めたら、そこは獣人たちの国だった。 元看護師の百合は、この世界では珍しい“ヒト”として、狐の婆さんが仕切る風呂屋で働くことになる。 与えられた仕事は、獣人のお客を湯に通し、その体を洗ってもてなすこと。 本来ならこの先にあるはずの行為まで求められてもおかしくないのに、百合の素肌で背中を撫でられた獣人たちは、皆ふわふわの毛皮を揺らして眠りに落ちてしまうのだった。 人間の肌は、獣人にとって子犬の毛並みのようなもの――そう気づいた時には、百合は「眠りを売る“やわはだ嬢”」として静かな人気者になっていた。 そんな百合の元へある日、一つの依頼が舞い込む。 「眠れない狼隊長を、あんたの手で眠らせてやってほしい」 戦場の静けさに怯え、目を閉じれば仲間の最期がよみがえる狼隊長ライガ。 誰よりも強くあろうとする男の震えに触れた百合は、自分もまた失った人を忘れられずにいることを思い出す。 やわらかな人肌と、眠れない心。 静けさを怖がるふたりが、湯気の向こうで少しずつ寄り添っていく、獣人×ヒトの異世界恋愛譚。 [こちらは以前あげていた「やわはだの、お風呂やさん」の改稿ver.になります]

処理中です...