僕は無表情病の妹のために世界で一番美しい花を探す旅に出た

ヤオサカ

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第1章:出会いと旅立ち2

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 思わぬ申し出に、トールは目を丸くする。  

「どうして?」  

 チイルは不敵な笑みを浮かべた。  

「面白そうだから。それに、一人じゃ心細いでしょ?」  

 おばあさんは驚いた顔をしていたが、チイルは気にした様子もなくトールを見つめていた。  

「……そんな簡単な旅じゃないよ」  

 トールは真剣な目で言ったが、チイルは肩をすくめた。  

「知ってるよ。でも、あたしも旅に出たかったんだ。あんたと行くの、悪くないと思うし」  

 トールはしばらく考えたが、ひとりで旅をするよりも頼もしい仲間がいる方が心強い。  

「……わかった。一緒に行こう」  

 

 
 雨が止んだ翌日、トールとチイルは村の広場に立っていた。  

「さて、まずは何が必要かリストアップしようか」  

 チイルは腕を組みながら言う。彼女はしっかり者で、考えをまとめるのが得意そうだった。  

「食料、水、地図……それから、旅の心得も聞いておきたいね」  

 トールは頷きながら、村の人々に話を聞くことにした。  

 村の鍛冶屋で丈夫なナイフを受け取り、薬草を扱う店では簡単な応急処置の薬を分けてもらった。村の猟師は獣の追跡方法を教えてくれたし、旅をしたことのある老人は夜の森で迷わない方法を伝えてくれた。  

「この村の人たち、みんな優しいね」  

 トールが言うと、チイルは鼻を鳴らした。  

「当たり前よ。田舎の村はみんな助け合いながら生きてるんだから」  

 夕方になると、おばあさんが特製のかぼちゃスープを作ってくれた。甘くて、少しスパイスが効いている。  

「旅に出る前のごちそうだよ。いっぱい食べなさい」  

 おばあさんが優しく微笑む。  

「ありがとう、すごく美味しい!」  

 トールが嬉しそうにスープをすすると、隣でチイルもパンをかじっていた。  

「お隣のルシアさんが作ったパンよ。あたし、これが大好きなんだ」  

 チイルがそう言った後、少し間を置いて口を開く。  

「……あたしね、お母さんを早くに亡くしたの」  

 トールは驚いて彼女を見た。  

「母さん、あたしを産んでからずっと体が弱くて、7歳の時に亡くなったの。父さんは出稼ぎに行って、そのまま帰ってこないしね」  

 彼女の口調は淡々としていたが、その奥には寂しさがあった。  

「……それから、おばあちゃんと村のみんなと暮らしてきたの。だから、ここはあたしの大事な場所なんだ」  

「そうだったんだ……」  

 トールは静かに頷く。  

「トールは?」  

「僕は……妹を助けなきゃいけないんだ。どんなに遠くても、あの花を見つける」  

 チイルはしばらく黙っていたが、やがて小さく笑った。  

「じゃあさ、あたしも父さんを探しに行くよ。生きてるか分かんないけど、見つけられたら、おばあちゃんと三人で暮らしたい」  

 彼女の瞳は力強かった。  

「……そうだね。僕も、一緒に探すよ」  

 トールがそう言うと、チイルは満足げにうなずいた。  

「よし、それじゃ約束ね。お互い、目的を果たすまで絶対に諦めないこと」  

 二人は拳をぶつけ合い、誓いを立てた。  

 そして、旅立ちの日の朝——  

「気をつけてね、トール。チイルも、無茶しすぎないようにね」  

 おばあさんは二人にリュックを持たせながら優しく微笑んだ。  

「大丈夫、おばあちゃん!」  

 チイルは元気よく答えた。  

「……ありがとう、おばあさん」  

 トールも深くお辞儀をする。  

 村のみんなに見送られながら、二人は歩き出した。  

 そして、少年と少女の旅が本格的に始まった——。
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