僕は無表情病の妹のために世界で一番美しい花を探す旅に出た

緑豊かな小さな村で、ひときわ明るい笑顔を振りまいていた少女、エミリヤ。村人たちは、その無邪気な笑い声と、誰にでも分け隔てなく優しい心を持つ彼女を、まるで自分たちの娘のように愛していた。しかし、そんな穏やかな日々は、ある日突然終わりを告げる。いつものように元気いっぱいで森へ遊びに行ったエミリヤが、夕暮れ時に一人で帰ってきたとき、その顔から、あの愛らしい笑顔はすっかり消え失せていたのだ。

エミリヤの瞳は虚ろで、何を語りかけても反応がない。心配した両親や村人たちが懸命に話しかけるも、彼女の表情は石のように固まったまま。まるで、魂が抜け落ちてしまったかのように、感情の欠片すら見られない。村の医者が診察するも、原因は全く分からず、ただ「無表情病」という聞いたこともない病名が告げられた。それは、感情を表に出すことができなくなる奇病であり、進行すると精神が徐々に蝕まれ、耐え難い不安感に苛まれるという恐ろしいものだった。最悪の場合、その苦しみに耐えかねて自ら命を絶ってしまう者もいると聞き、村人たちの間に深い悲しみと不安が広がった。

エミリヤの兄である10歳の少年トールは、妹の変わり果てた姿を目の当たりにし、幼いながらも深い悲しみに打ちひしがれていた。いつも一緒に遊んでいた妹の笑顔が二度と見られないかもしれない。そんな絶望的な状況に、小さな胸は張り裂けそうだった。しかし、彼はただ悲しみに暮れているだけではなかった。エミリヤを救いたい。あの笑顔をもう一度見たい。その強い想いが、トールの心を突き動かしていた。

そんな中、村の古老から、遠い秘境にのみ咲くという、世界で一番美しい花の話を聞く。その花は、見る者の心を癒し、どんな病も治してしまう不思議な力を持っているという言い伝えがあった。まるで希望の光が差し込んだように、トールの心は熱く燃え上がった。「そうだ、あの花を探しに行こう。きっと、あの花ならエミリヤを救える!」

両親や村人たちは、まだ幼いトールの身を案じ、危険な旅に出ることに強く反対した。しかし、トールの決意は固かった。「僕がエミリヤを笑顔にするんだ!」その強い眼差しに、周囲は彼の覚悟を悟り、ついに旅立ちを許した。
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