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現在編1
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しおりを挟む指定されたレストランに行くと個室に通された。
約束の相手はもう到着しているみたいだ。
「遅かったな」
「僕も暇じゃないからね」
「女に貢がせるのに忙しいか」
「お金を早く返すためだよ」
僕がママ活でお小遣い稼ぎをするようになったのは、目の前の男のせいでもある。
十年前、ママが僕を忘れたことで、僕は家族から外された。
用済みになった僕は殺されると思っていた。
僕自身も殺されたいと思っていたんだけど、なぜか死ぬのは許されなかった。
なんだかんだあって家を出たものの、常に監視下にあった。
じっとりとした複数の視線がどうにも気持ち悪くて、もうほっといてくれと主張したところで最低の条件を与えられた。
これまで僕を育てるのにかかったお金を返済すれば、解放する。
それが僕が自由になるための条件だ。
馬鹿馬鹿しいけれど、それしか方法はないみたいだから、とりあえず地道にお金を作り出している。
僕は沙織ママから貰ったお金と他のママからのお金をまとめて、目の前の男、響に渡した。
黒いスーツに、黒縁眼鏡。
短めに切り揃えられた黒髪。
地味な色でまとまっているけれど、顔が良いから地味というよりも爽やかな印象を受ける。
まぁ第一印象が地味にしたって、爽やかにしたって、そんなものは仮面に過ぎない。
結構中身は鬼畜なのを知っている。ヤクザ紛いの取り立てをしているのを見たことがあった。
響は僕の従兄弟だ。全く繋がっていないけどね。
「これだけか」
響はお金を軽く数えて言う。
百万近いお金をこれだけだと?
僕が睨みつけると、響は鼻で笑った。
「身体を使えばもっと効率よく稼げるんじゃないか?」
「ママから貰った身体を傷つけたくないし」
「もうとっくに傷だらけだろ」
僕の身体には、一生消えない傷がある。
だけどそれは、ママの笑顔を守るために負った傷だから、僕の誇りだ。
ママが僕の存在を認識していない今、無駄に傷つきたくない。
痛いのは嫌いなんだ。
昔どんなに殴られても、切られても、結局慣れることはなかった。
「俺がパトロンになってやってもいいぞ」
響は僕の全身を舐めるように見て言う。
馬鹿じゃないのかと、今度は僕が鼻で笑ってやった。
「無理。死んだほうがまし」
「酷い言いようだな」
「大嫌いだもん」
「どうしたらお前は俺を好きになる?」
響は僕に近づいて、腰に手を回してきた。
響のことは嫌いだけれど、触れられて吐くほどじゃない。
響は他人に凶暴だけど、一応身内である僕をあんまり殴ったことはなかった。
その分、他の大嫌いな奴らよりも対応が甘くなっちゃう。
それに響は、利用価値がありそうだと前から思ってた。
響は僕を食いたいのを、隠そうとしていなかった。
上手い具合に虜にしておけば、他の奴らからの盾にできるかもしれない。
だからちょっとだけ好きにさせてあげようとじっとしてみる。
響は僕の首に顔を埋めてクンクンと犬みたいに匂いをかいでいた。
「ママを返してよ。そしたらたぶん、好きになるよ」
「無理だな」
「じゃあ僕も無理だ。もう離して」
「それも無理だ」
無理と言いながら、僕の耳に噛みつく響。
手は腰から下に移動していく。
まったく、油断ならない犬だ。
そんなことは許してないし、このまま抱かれるつもりはないから、急所を思いっきり蹴ってやった。
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