ボクのことが嫌いな彼らは、10年後の僕を溺愛する

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現在編1

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ものすごく嫌だったけど、仕方ないから電話の男、蓮の元へ足を運んだ。


「よく来たね。じゃあ服を脱いで」


蓮は機嫌が良いらしく、にこにこ笑いながら言った。


「いきなりおかしいよ。なんで服を脱ぐ必要があるんだ」



顔を合わせた途端にピンチになるとは。


蓮は我儘で、いつも唐突だ。


蓮は響の弟で、つまり僕の従兄弟となる。やっぱり血の繋がりはない。


髪はカラフルに染めていて、目には赤いカラコンが入っていた。


蓮と比べると、やっぱり響はまともだと思う。



「抱かせろって言ってるわけじゃないからいいじゃん」


「抱かないなら余計脱ぐ意味ないよ」


「抱かれたいなら後で抱いてやるから」


「やだよ。脱ぐのも抱かれるのもやだ」


「我儘言うなよ。上手にできたらアンリのママに貰った手作りクッキーを譲ってあげるから」




・・・ママのクッキーだと?



なんで蓮がそんな貴重なものを持っているんだ。






僕は仕方なく、着ているシャツのボタンに手をかけた。




蓮は単純だなぁと笑うが、単純で何が悪い。


そもそも僕に拒否権なんてないだろ。


今ならご褒美を貰えるけど、これ以上渋るとお仕置きコースになるとわかっている。


それだけ蓮は気分屋だった。





蓮はカメラを手にして、僕が服を脱ぐ様子を撮影しはじめた。


蓮は写真家として活躍していた。


時々呼び出されて撮影されることはこれまでもあったけれど、服を脱がされるのは初めてで緊張した。




「・・・写真、流出させないでよ」


「少なくともアンリのヌードを他人に晒す予定はないよ。もったいないじゃん。俺が楽しむようの写真だから」



キモくて鳥肌が立った。


本格的にヤバイよこの人。


でも流出されないのは良かった。




僕は顔にこそ自信があるけど、身体は汚くてコンプレックスだった。


僕が身体を売らないのは、ある意味汚い身体のせいだ。


一度道端で引っかけた男に押し倒されたことがある。


臨戦体制だった男は僕の身体を見て萎えてしまっていた。



「うん。綺麗だアンリ。そのままベッドにうつ伏せになって」



汚い僕の身体を蓮は綺麗だと言う。

 


抵抗しても無駄なので僕は渋々ベッドにうつ伏せになった。



「やっぱり最高。背中が1番好きだ」



好きと言われても喜べない。

僕は僕の中で背中が1番嫌いだった。






しばらくの間、シャッターの音だけが響いていた。
 



柔らかいベッドが誘うのは眠気じゃない。


ベッドに縛り付けられた身体。そして刃物。


僕は異様な状況で、嫌な過去を思い出してしまった。


途端に、身体が震え出す。


蓮は震える僕に構わず、カメラを片手に僕の背中に触れた。


「ひっ」


「大丈夫だよアンリ。痛いことはしないなら。ああ。アンリはやっぱり、何にも着てないほうがいいよ。生まれたままの姿がいい。赤ん坊みたいに、ママ、ママって震えるアンリが、俺は好きすぎて、どうにかなっちゃいそうだよ。今なら普通に、死んでもいい」


蓮は背中の傷に手を這わせる。


言っている意味がわからない。理解したいとも思わない。


僕はギュッと目を瞑って、蓮が満足するまで大人しく耐えた。


それから抱かれることはなかったけれど、背中に白い液体をかけられたのは、精神的なダメージが大きかった。






「削られた。僕の中の色んなものが、削られた」


「ああそう。じゃあ、これで減った分を補いな」


僕を堪能して満足したらしい蓮は、綺麗にラッピングされたクッキーを僕に投げた。


ママのクッキーを乱暴に扱うなと睨んだところで、蓮は反省なんてしない。


写真をチェックするのに忙しいようで、僕に顔すら向けてくれなかった。



「・・・ママ、元気だった?」


「普通だった。あんま興味がないから覚えてないけど」


「そっか。落ち着いて生活できているならよかった」


「ちなみに坊ちゃんは高校に進学して日々楽しそうにしているらしいよ」


「その情報はいらなかったけどね。それにしてもあの子、もう高校生なのか」


小っちゃい頃のあの子のイメージしかないから、ちょっと驚く。


「全寮制の学校に通っているうちはあまり顔を合わせなくて済むけど、卒業したら頻繁に会わないといけないと思うと今から気が重い。坊ちゃん、ちょっと苦手なんだよね」


「蓮にも苦手な人がいるんだ」


「俺をなんだと思ってるんだ。アンリ以外の人間、全員苦手だからね」


「愛が重い」


「たった一人でも心から愛している人がいるのは幸せなことだよ」



蓮はパソコンの画面から目を逸らさない。


画面に映るのは僕の姿だ。



本物の僕が直ぐ傍にいるのに、どうしてこちらを見てくれない。


大嫌いな相手のはずなのに、こんなのは寂しいと思ってしまう僕は、やっぱりおかしいんだろう。

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