ボクのことが嫌いな彼らは、10年後の僕を溺愛する

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現在編4

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こんな時、どうするべきかわかってる。


弟の話を聞いていても意味はない。


僕は玄関と正反対の位置にある窓へ向かった。




僕の部屋はアパートの二階にある。


上手く飛び降りれば怪我をしないレベルの高さだ。


それでもいざ飛び降りるのは結構勇気がいる。


怖くてためらっている間にも聞こえ続ける弟の話の方がずっと怖かったから、覚悟を決めた。



そしてなんとか無傷で着地できた結果、僕はあっさり捕まった。



弟は複数の人間にアパートを見張らせていたのだ。



騒ぎに気づいた弟は直ぐに駆け寄ってきた。



僕の顔を見て、泣きそうになった後、強く抱きしめられた。




その後の記憶は、ない。


 






僕はいつのまにか鎖に繋がれ、知らない部屋の中にいた。




「お兄ちゃん、許さないって言ったのに逃げようとしたよね」
 


目が覚めた時、隣に弟がいたのは恐怖だった。


僕が逃げたことを怒っているはずなのに、ニコニコ笑っているのも怖かった。


「ふふっ。怖がらなくていいよ。今回は、許してあげる。もう二度と逃げられないんだから、一回くらいはね」


続いて出てきた言葉に戦慄した。



「僕を、どうするつもりだよ」


「だから、怖がらなくていいんだよ。何もひどいことはしないってば」


「じゃあ、鎖を外してくれ」


「それは無理。まだお兄ちゃんの心は俺にないから」


「まだもなにも、一生お前なんかに僕の心は向かないから」


「強がりだね。可愛いけど、可愛くない。これから正しい振る舞いを一緒に勉強していこうね」


「……このことを、高宮家の人間はどこまで知ってるの?」


「さぁ。ただ俺がお兄ちゃんを捕まえたことは知ってるだろうね。だってみんな、お兄ちゃんと俺が繋がらないように監視していたんだから」


「こんなことして、怒られると思う」


最近の響や蓮の様子は明らかにおかしかった。


僕の存在に気づいたこいつのせいだったのだろう。


仮に、弟が接触してくるかもしれないと最初から教えられていたのならば、僕は上手く対処できていただろうか。


いや、無理だろう。


僕に逃げ場なんてない。


響や蓮に、僕を逃す力はない。そして霞さんや菫さんには僕を逃す理由がない。むしろ弟に協力をしなければいけないはずだ。


高宮家の跡取りである弟は、彼らよりも強い立場にいた。




「知るかよ。怒ってるのは俺のほうだ。俺からお兄ちゃんを奪って、自分たちはお兄ちゃんと仲良くしていた」



弟は高宮霞のように鋭い目で僕を睨みつける。



「仲良くなんてしていない」


「うん。わかってるよ。お兄ちゃんは嫌だったんだよね。仕方なく、付き合っていたんだよね。お兄ちゃんは悪くない。悪いのは、あいつらのほうなんだ」



かつて高宮菫がしていたように、優しい声で僕の気持ちを決めつける。 



「でも、お兄ちゃんがこうして手に入った今、これまでのことは、許すって決めたんだ。俺たちは、これからだよ。これから、全部取り戻すんだ」



高宮奏の顔をしながら、笑うとママに似て綺麗なのが悔しい。




ママは、こんなぐちゃぐちゃな弟のことを知っているのだろうか。


弟だけじゃない。

高宮奏の異常性に、ほんの少しも気づいていなかったのだろうか。




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