ボクのことが嫌いな彼らは、10年後の僕を溺愛する

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現在編6

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ジェイが泣いたのは一瞬だけだった。

直ぐに恥ずかしそうに涙を拭って、何か飲みましょうと部屋を出て行ってしまった。




1人になって、僕も泣きたくなった。


あの時の子どもたちは、助かっていたのか。


どこまで真実なのかわからない。


ジェイのことは信じたいという気持ちが強かった。




戻ってきたジェイは、何事もなかったかのような顔をしてココアを僕に差し出した。


「正直、解放されてからしばらくの間は自分のことで精一杯でした。アンリは大切に抱えられてあの部屋から連れ出されていたから、きっと大丈夫だと思っていました。しかし数年前、ある男からアンリを救ってほしいと頼まれたのです」


「ある男って、誰?」


「高宮菫です」


「……菫さんが?」


「高宮家のことは以前から知っていました。特に菫は私の国や他のいくつの国でとても興味深い活動をしていたので、何度か間接的に関わることもありました。まさかあの部屋にいた子どもが彼の甥だとは思ってもいませんでしたよ」


「おいじゃない。僕は高宮家のにんげんじゃない」


大事なことなので少し強めに言うとジェイは苦笑した。


「そうでしてね」


ジェイは僕の事情を僕以上にわかっていそうだ。

菫さんが話したのだろうか。

菫さんが高宮家以外の大人と会話する姿を上手く想像できない。

菫さんは僕が初めて高宮家を訪れ、数年前に高宮家を出るまで働いているふうではなかった。

だからこそ、小さかったボクと菫さんが一緒に過ごす時間は他の人より長かった。

そして、甘やかすだけ甘やかしてからボクを冷酷に拒絶した菫さん。

だけどあの人は、傷つけられてあの部屋から戻ってきた僕を、出会った頃よりもずっと丁重に扱うようになった。



「菫さんの、きょうみぶかい活動って、なに?」


「子どもを助けているんです」


「なに、それ。助けているようで、もっと酷いことをしてるかもしれないよ。あの人、へんたいだから」


「彼は私に自身の性癖について打ち明けてくれました。アンリに何をやったのかも話してくれた。今もきっと、衝動的に悪戯をしたくなる時があるんだと思います。でも彼は、実際に悪戯はしない。アンリが壊れてしまって以来、子どもに触れられなくなってしまったそうです」


「信じられない。菫さんは、子どもだけしか愛せないはずだ。だってあの人は、高宮家以外の大人が怖かったから」


「大人よりも、もっと怖い存在を知ったんですよ。子どもを愛しているけれど、逃げ出したくなるくらい怖くなった。アンリはあの日以来狂ってしまった。彼は幼子のようなアンリを放っておけなくて自ら世話役を引き受けた。アンリは起きている時間のほとんど子どもに殺されると叫び、泣いて、怯えていた。その姿をそばで見ていた菫は、アンリの恐怖に引きずられてしまった。自分が子どもたちに恨まれていて、いずれ殺されるのだと錯覚してしまった。それで、罪滅ぼしを始めたんです。彼は現在、人身売買の組織を摘発し、子どもたちを保護する活動をしています」


そういえば、僕がおかしくなってからずっとそばにいてくれた菫さんは、必要最低限にしか僕に触れようとしなかった。

僕が怖がるからだと思っていたけれど、菫さんが僕のことを怖がっていたのか。

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